16話 返事の行方
「はい。」
気が付いたら
私はしっかりと聖也の目を見て返事をしていた。
この人は私のことを70年も待っていてくれたんだ。
その事実を知って断るなんてこと出来るはずもなかった。
けど、
二人で街を歩いているとこの世界でも季節が廻り秋が来ているのか、街路樹が紅葉してきて美しい色でお店のウインドーを覗くと可愛い秋冬物の洋服が飾られていて
何となく楽しい。
こうしてただ二人で歩いている。それだけで気分が高揚し楽しかった。
今日はオフだから一日じゅう一緒にいれるよって、聖也が朝から嬉しそうに言っていて、この前私がこちらに戻ってきたとき
ずっと一緒に居たい、片時も離れたくない、70年も待っていたのだからと、
1週間休みを取ってずっと一緒に居たのに。
だからそんなに私にくっついていなくていいのにと思ってふと笑いたくなってしまう。
そんなのんびりとした二人の時間を満喫しているときに
修二くんとばったりあってしまった。
「ちょっ、おまっ。なんてことを。」
私たちを見ると修二君の顔色が変わって、
血相を変えて聖也の胸倉を掴んだ。
「お前、まさか、まさかな。まさかと思うが。」
え?何事?
聖也は無表情だ。
いつのクールで表情を変えることなどあまりないから驚かないのだけれども
それにしてもいきなりどつかれて無表情って、
何かがおかしい。
そう咄嗟におもったのだけれど。
なんか物凄くなにか違和感があるというか、大事なことを見落としてるような気がする。
実はずっとそう思っていて、でも、何故か考えてはだめだと思っていて
なんか知らなくてはいけない現実がそこにあるのに、そこの箱に入っているのに開けたらだめなパンドラの箱のような気がして、考えるのをやめていたんだけど、なんか胸騒ぎがしていて、
それをいきなり思い出した。
「あ、あの、やめてください。そんな暴力みたいなこと良くないです。」
私は二人の間に割って入って修二君の腕をそっと離そうと、
したんだけど
「あ?」
修二君が私の方に振り向いて
私の顔を見ると、
諦めたように力なく聖也のことを離した。
「お前はそれでいいの?」
それでとは?
何のことを言っているのか分からなかった。
?
?
?
修二君を見て
聖也を見たけど。
聖也は無表情だし。
「あの。それでって。」
修二君の顔が今にも泣きそうになった。
「それでって何のことか分からないのですが。」
「お前たちヤッたんだよな。」
いきなり直球で来た。
ていうかそういう事聞く?
いくらグループのメンバーでも友達でも
そういうプライベートなことこんな街中でいきなり訊く?
私が固まってしまっていると、
さすがに配慮してくれたのか。
「あ、悪りい。」
「こんなとこじゃ話も出来ないよな。場所移そうぜ。」
と言って、ドキLOVE城に移動することになった。
せっかくのデートだったのに。
せっかく二人きりのお外でのデートだったのにな。
今日は秋冬のお洋服を買ってくれるっていうから楽しみにしてたのに。
ついこないだまで90歳のおばあちゃんだったから、若い可愛い服がまた着れるという事が普通にうれしいこともあり、それに聖也が選んでくれるっていうから凄く嬉しくて楽しみにしてたのに。
それに連れていきたいおすすめのお店があるっていうからお食事も楽しみだったのだ。
ドキLOVE城も久しぶりだしみんなにも会いたいけど、でもそれはもうちょっと二人の時間を楽しんでからでもいいかなって思ってたんだけど。
聖也がすぐ行こうとは言わなかったってのもあるけど。
ただそのときは知らなかったんだ。聖也がみんなに私を会わせたくなかった理由。
多分会わせたくなかったんだ
ってことを知ることになる。
何も文句を言わず、ただ黙って修二くんに付いていくことに。
ドキLOVE城に付くとラウンジにみんないた。
「あれ?聖也ん今日オフじゃなかったっけ。」
おっとりとした口調で龍くんが言った。
「あれえ。懐かしい顔がいるねえ。エンジェルちゃん帰ってきたんだ。知らなかった。お帰り。」
にっこり笑って帝様が私の肩を抱いた。
「元気だった?帰ってきたならすぐに会いに行ったのに。」
それと幽霊を見るかのような顔で私のことを見る冷泉様。
小さな声で
「おかえり。」
そして、何か訴えるような目で修二君と聖也を見た。
なんか凄く違和感がある。
それと胸騒ぎ。
何だろう。この感じ。
泣きたいような怖いような。
「みんないるしちょうどいい。」
修二君が口を開く。
「取り合えずそこに座って。」
促されて私たち二人はソファに座った。
「じゃ、改めて訊くけど。」
修二君が
聖也の顔をまっすぐ見て
はっきりと
「みんなの前でこんなこと訊かれて嫌かも知れないけど大事なことだから、だから俺は訊く。」
「ヤッたの?二人は。」
そんなこと、
みんなの前で
恥ずかしすぎる。
そんなこといちいち申告しなくてはならない事なの?
このユニットのメンバーってそういうことははっきりと申告してみんなで周知しておかなくてはアイドル活動できないとかそういう事なのだろうか。
などとその一瞬の私の頭がそんな平和なことを考えていたのだ。
まるで自分とは関係ないことのように。恥ずかしいとかそんな甘いことではないという事を
その一瞬後に知ることになるというのに。




