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15話 70年間の気持ち

「70年間ずっとあなたの事を待っていたんです。」

そう言われて、その眼差しが真剣で、声が懐かしくて、私は震えてしまう。

心が震えるようなその声に、言葉に、もう後戻りなど出来ない。


「70年、待ちました。」


そして息を飲んでしっかりとした口調で言った。


「もう二度と離しません。あなたを。」




「ずっと私と一緒に居てください。」


「はい。」


気が付いたら


私はしっかりと聖也の目を見て返事をしていた。




この人は私のことを70年も待っていてくれたんだ。




その事実を知って断るなんてこと出来るはずもなかった。

「やっと会えました。」そう言って、私を抱きしめた身体を離して、髪をそっと撫でながら、顔を上から覗き込んできて、


そっと見上げると、優しい顔がすぐ近くに。

近づいてきて


私は目を閉じた。


柔らかい唇の感触。

温かい唇が触れて。


またそっと離れた。


目を開けると聖也の顔がすぐ近くにあって、

またついばむような優しい触れるだけのキスが唇に降り注いできて。


思わず目を閉じると、瞼にも優しいキスが。


「ずっとあなたを待っていたんです。」


そういわれると、帰ってしまったことが凄くいけない事だったような気がしてくるけど。

でもやらなくてはならないことがあるから帰りなさいとそういったのはこの聖也本人なのだから。


でも。


「あなたも私に会いたいと思ってくれたことがありましたか?」


「もちろんです。会いたかったです。ずっと。

忘れてなんかいなかった。

会いたいとずっと思っていました。


でも、どんどん年を取っておばあちゃんになってしまって。」

私はなんだかちょっと恥ずかしくなってしまって言った。

「おばあちゃんなのに、孫と一緒に「王子様ドキュン」

をやったりして、ずっと会いたいなあって、こんなおばあちゃんじゃ聖也に会っても、もう好きになってもらえないな。って思いながらプレイしたりしてました。まさか、また会えるなんて思わなかった。」

「しかも、初めて会って、あのとき元の世界に戻されたときの姿に戻れるなんて。

もしかして、こちらの世界では時が経ってないのですか?あの時間に戻ってこられたのでしょうか?」


私が訊くと呆れたように聖也は答えた。

「先程から、私は

70年待っていたと、何回も言っているでしょう。」


「私の話、聞いてなかったのですか?

時間は同じに流れましたよ。」


「ごめんなさい。あまりにも前来たときと同じで、

それに聖也くんが全然変わってなくて、


それに私の身体も変わってないから。


だからなんか凄く不思議な気がして。」


「私は変わりませんよ。変わらずにあなたの事を愛している。ずっと会いたかった。」

「あなたが恋をして。結婚して、子供を産み、育てて、年老いていく様をみていました。

こちらから。ずっと。あなたが私でない男と恋をして、」


言葉に詰まったように黙り込んで

私の身体を自分の胸に抱き寄せた。強く抱きしめられて、息も出来ないくらいに強く聖也の胸に押し付けられて、髪を撫でられて


「辛かった。自分では平気だと思ってあなたを返したのに、分かっていたのに。

身体中が焼けるような嫉妬を感じてしまった。あなたの愛を受けている男性にも、生んだお子さんたちにも。

あなたと共にいられる人たちが羨ましくて、辛かった。

こんな事ならあなたを返さなければ良かったと、思って、見なきゃいいのに気になって見てしまい。あなたの恋人に夫に嫉妬した。馬鹿みたいに自分を傷付けて。

もし、またあなたをこちらに呼び寄せる事が出来たらあなたの事をもう返したくない、絶対に離さないって。思っていて。でももう一度こちらに呼べるか分からない。チャンスがあるかも。毎日馬鹿みたいに考えてばかりで。」


「だけど、こうしてまた、あなたをまた、この手に抱いている。もう離したくないのです。」


そして、私の顔を、顎を持ち上げて、上を向かせた。

目と目が合う。まるで目でキスをするみたいに、見つめ合った。


確かにするべき事があるからと返されて、するべき事は多分、子供を産んで残す子供だったのかなあと思う。それが出来たから、私の元いた世界でのやらねばならない役割は終えたのだろうと思う。聖也が嫉妬で耐えられなかったと言っていたけど。でもやらねばならないこんなだったのだと思う。

そしてもうやるべき事は成したのだから、


許されるのではないだろうか。聖也に身を委ねて、この世界にいる事を。


聖也の顔が近づいてきて、今度は熱い大人のキスをしてきた。


熱い舌が私の唇をこじ開ける。

思わず逃げそうになる私の舌を追い回して、絡みついた。

ねっとりと絡みついてきて、


身体の力が不意に抜けて、立っていられない。腰から砕けてしまいそうに、膝に力が入らなくて、フラフラと倒れてしまいそうな私をしっかりと抱きしめて支えてくれる。


「大丈夫ですか?」


ふわりと抱き上げられて、ソファに降ろされた。


「可愛いですね。やはりあなたは可愛らしい。こんな、キスくらいで、腰が抜けている。」


「だって、こんな激しくキスされたら。」


「すみません。意地悪だったかな。あなたを見ると意地悪したくなってしまう。」


そう言って、ふふふって笑う姿がやっぱり聖也らしくて、なんかもの凄く懐かしい。

大好きな人だ。


「これから、ずっと私がしたいと思っていた事をしてもいいですか?」


真面目な顔になって訊いてきた。


「あなたは私にどうして欲しいですか?

今、腰が抜けてしまうくらい甘い激しいキスをしました。

このあと、私にどうされたいですか?」


「ちなみに私はあなたが欲しいです。」


熱い眼差しで射抜かれそうで、不意に目を逸らしてしまうと、


「ちゃんと私の目をみて、答えて下さい。」

と、頬に手を当てて自分の方を向かせた。


「私も、私も聖也くんが、欲しいです。」


「いいでしょう。ちゃんと話を聞いてからまた、返事をして下さい。

今から私はあなたにキス以上の事をしたい。


でも


それをしたら、もうあなたは元の世界に戻る事が出来なくなってしまうのです。


この世界に来てこの世界の住人と身体の契りを交わしたらもうこの世界から元の世界には戻れないのです。


あなたはこの世界の住人になって私とずっと一緒にいてくれますか?


この世界は不老不死の世界です。

だから死が二人を分かつ事はありません。


この世界には妊娠出産も有りません。

だからあなたと私の子供を生んで育てるというあなたが元の世界でしてきた事もする事は出来ません。

あなたが楽しそうにそれをしていたのを私は自分には出来ない事なのだと分かって、ずっと見ていました。

子供産めないけど大丈夫ですか?」


実際妊娠出産子育ては大変だった。

楽しいより大変な方が多い。

だから来世は男の子に生まれたいとずっと思っていたくらいだから、出産が無い事は、そんなに問題にならないと思った。


「不老不死だから、人を増やす必要が無いのです。むしろ増えたら色々困るでしょう。食料も住居も足らなくれるなってしまう。だからこの世界に置いて生殖活動をしているなは家畜だけです。食料になる家畜は生殖活動をして増やしています。

あなたが生殖活動としてしていた行為は、この世界では、愛を確かめるために行います。


瑠璃、あなたと愛を確かめ合っても


いいですか?」


そう耳元で囁かれて、

耳にかかる吐息に身体がビクンと震えた。


ひゃっ、思わず変な声が出てしまう。


元の世界でも生殖の為だけにしてたわけじゃないけど、今その事をいうと話がややこしくなりそうな気がして

嫉妬してたって言ってたし、

言えないなあと思った。


キス以上の事、それをしたらもう元の世界に戻れないって聞いたけど、元の世界の私は多分老衰で死んでる。今頃荼毘に付されてるはず。万一死んでないにしても、おばあちゃんだし、もうあっちの世界の自分には未練がない。と思った。

それより。また若い姿に戻り、好きな人に愛を語られ。身体を愛撫されている。

ずっと会いたかった人に。


キス以上の事、子供を生んでいる私は当たり前だが、元世界では体験済みだ。

おばあちゃんになってたから、随分長い事してなかったけど。

だけど、そういう事した事ありませんというのとは違う。

若い身体になったけど。中身は大人の女性なのだ。


ただ、人生を長く生きて分かった事は、

人は意外に変わらない。

むしろ、大人になるということもない。

男の人が良く永遠の少年とか言うけど、

女性だって意外に変わらない。

気持ちは永遠の乙女なのだ。


私はあまり成長もしてないし、年老いてもいないような気がした。魂の問題である。



「あの、えっと。」


熱を帯びた眼差しが私に、一瞬、まるで魂を食べてしまう悪魔のように見えて、


「ずっと私と一緒にいてくれますか?」の返事を

「はい。」

と言ったとき、

そう言わずにはいられない圧があったからというのもあるけど、

聖也の瞳の中に一瞬、悪魔のように光る何かが見えたような気がして。ほんの一瞬なんだけどゾクっとなった。


けど。激しくキスされて、

押し倒されたら

身体に伝わる聖也の身体の熱が熱くて忘れてしまった。


異世界転生。

今度は死んだらしいから転生で間違いないと思うんだけど転生したばかりの私には判断能力も思考能力もなく、

多分転生したときって何かの負荷が掛かって疲れてるのではないだろうか。

私は赤子同然な素直さで70年間の思いを身体に受け止めていたのである。


嫌だとか。少し考えさせて欲しいとか言うべきだったのかも知れない。


けど単純に待っていてくれたのだと言われると嬉しくて魂が震えた。

そしてこの世界との魂の契約を聖也と契りを交わすことでしてしまった。

転生してすぐに。

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