表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界殺し  作者: Tetsuさん
電影の光
897/916

895:追憶の先へ

「クソッ!出口はどこだ!!」


白昼の住宅街を、包丁を片手に全力疾走する中年。


どう見ても事案な姿だが、そんな事を気にする余裕は無い。

何せ、後ろからは二足歩行兵器が、そして空からは美少女の姿をしたメカ娘が2体追いかけてきている。

しかも、先ほどの中年おばさんのゾンビがきっかけになったのか、それぞれの家や道路の角から、次々と歩く死体(ゾンビ)が出てきて俺に向かい歩いてくる。


<勢大、視界共有で見る限り、この辺りは過去に通った地域とかなり共通している気がしますが、覚えはありませんか?>


走りながらだが、改めて周囲を見渡す。

言われてみれば、確かにそうだ。

この辺は確か、ランドクルーザーで河川敷を走り回り、ゾンビが斜面に弱いと気付いた辺りじゃなかっただろうか?

と言うことは、このまま走れば大きな橋があり、そこを火炎瓶でゾンビ共を焼き払った記憶がある。


「ただ、あの時は時間をかけて焼き払ったから通れたが、前みたいにゾンビ共が大量にいたらアウトだな。」


-オッサン、変身せんの?-

-変身に意味あるのかよ-

-ってか変身しなくても強いんちゃうん?-

-全裸になるからだろ-

-オッサンの全裸……ゴクリ-


確かに変身できれば、とは思う。

ただ、アレにはほんの一瞬だが変身するための時間が存在していて、それを狙われない保証はどこにもない。

流石に、今追ってきている奴等に“変身中に攻撃するのはマナー違反だっ!”と怒鳴ったところで聞き入れてくれそうにはない。

条件が揃っていれば移動しながらの変身も出来るが、マキーナが安全を確保してくれているのが前提条件だ。

マキーナがほぼポンコツ状態の今、そのリスクは犯せない。


<ポンコツとは悪うございました。

しかし、橋の上にゾンビはまばらにいるだけです。

この状況なら走り抜けられるでしょう。>


心を読まれながらも、訂正する思考の時間すら惜しい。

必死に走りながら、橋に向かい方向を変える。


「これで橋そのものを撃ち落とされたら終わりだ……な……?」


橋に差し掛かり、違和感に気付く。

道にゾンビが大量に落ちている。


が、大半のゾンビは焼けただれ、赤子のような姿勢で固まっているのだ。


(……どういう事だ?まるで俺達が燃やし終えた時のような。)


赤子のような姿勢で固まっているということは、焼かれた死体が固まる時の姿そのものだ。

あの時、前日に火炎瓶や即席の火炎放射器で焼き払った後、ランドクルーザーで通り抜ける時に嫌というほど見た風景だ。

あのありとあらゆる物が焼け焦げた悪臭は、そう簡単には消えなかったのを覚えている。


「何にせよ好都合だ。

このまま走り抜ける!!」


迫りくる銃弾に砲弾、大型兵器の歩行音にジェットの甲高い音、そして地を歩く亡者共の呻き声。


現代的な地獄があるとするのなら、多分ここの事を言うのだろうな、と走りながら思う。


<勢大、猟犬(ハウンド)が脱落しました。>


マキーナに言われ、走りながらも後ろを振り返る。

俺が通り抜けた橋、それを歩兵殺し(マン・ハント)も追いかけてきたのだが、俺を狙ってバカスカ撃ちまくったせいか、だいぶ橋に負担がかかっていたらしい。

焼け焦げた放置車両を飛び越えようと飛び上がり、着地した瞬間に橋が崩落する。

その崩落に巻き込まれ、歩兵殺し(マン・ハント)はあっけなく川へと落ち、激しい水音をさせている。

あれなら落下ダメージも多少は入るし、落ちたその上に崩れた橋の残骸も振り注いでいる以上、無傷ではいられないはずだ。


「よし、一番やべぇ奴はとりあえずいなくなったな!!」


アレの生体ロックは本当に厄介だ。

上を飛ぶ戦闘人形(ドール・ファイター)に、そこまでの索敵能力は無い。

これでチャンスが出てきた。


「確かここを真っすぐ走り抜けると、警察署があったはずだ!!」


崩落する橋から逃げ切り、そのまま大通りを走り抜ける。

その時、大きな交差点を見て何か思い出す事があり、チラと左を見る。


「……やっぱり、あるのか。」


横転したパトカー。

少しだけ苦い思い出のあるソレに、意識が向く。

パトカー周りにはゾンビが大量にいるから、近寄って状況を確認する事は出来ない。

最後まで、あの車に乗っている男性がどんな姿だったのか、俺には確認することは出来ないだろう。


-あの車何?-

-パトカー?っぽいけど?-

-そんなことより前見てオッサン!-

-上もヤバいよ!まだ撃ってきてる!-


コメント欄に気付き、慌てて目の前のゾンビを飛び越える。

ゾンビはのんびりとこちらに向き直そうとして、空からの銃弾を浴びて血煙になっていた。


-アワワワ……-

-マジでミンチどころか消えた-

-あの威力から推測するに、12.7x99mm、いわゆる.50口径のSATO弾クラスを使っている可能性が高いですな、実際にはヨハン・ブリーニングが設計したブリーニングM2重機関銃などの-

-すっごい早口で喋ってそう-


思わず笑いそうになるが、それどころではない。

知識を語りたいのはわかるが、今の俺の状況も理解してほしい、そんな気分だ。


「見えた!」


目の前に、トタン板や金属板でバリケードが張られた壁が見えてくる。

少しだけ、不思議に思う。

あそこはもう1つの警察署がある場所で、中にいた生存者達が資材でバリケードを張っていた。

そこにお邪魔して、中に何故かあった護送車を使ってショッピングモールへと移動したのだ。

その際、あのバリケードの一部は破壊して車が通れるようにした。


それなのに、バリケードに壊れた場所はない。

今もまだ、中に籠城しているという事なのだろうか?


「まぁ、考えるよりかは行ったほうが早いってね!!」


幸い、動いているゾンビも少ない。

今の俺の力なら、普通にあのバリケードは飛び越えられる。

全力疾走のまま、バリケードに向かって飛びつき、そしてそのまま蹴って宙を舞い、バリケードの内側へと転がり込む。


「……誰か!ここにいるのか!!」


転がりながらもすぐに立ち上がり、警察署の入口に走りながら怒鳴る。


<視界に映る情報からでは、動体反応ありません。>


入口のガラス扉をぶち破るように体当たりで飛び込み、中に転がり込む。


少しの間上空からの射撃があったようだが、流石は警察署の建物。

そう簡単には崩せないようで、銃声が止む。


「奴等が中に入ってくる前に、頼むマキーナ。」


<承知しました。

通常モード、起動します。>


へその下に当てた金属板から、光の線が俺の全身を走る。


さて、反撃の時間と行こうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ