表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界殺し  作者: Tetsuさん
電影の光
895/918

893:マン・ハント再び

「こりゃあ……、今度は、俺の記憶でも読み取ろうとしてるのか?」


足元を見ると、いつものリスポーン地点の様な木々に覆われた土と雑草の大地がある。

しかし、数メートル先には先ほどと同じような金属で出来た通路が広がり、更にその先には石畳の地面が続く。

視界を正面に向ければ、先程の木々の先には崩れかけたコンクリートのビルが見え、更にその先には藁葺き屋根の農村が見える。

空も青空や金属のパネル、それに曇天の雲と、見ていて目が痛くなるようなガッチャガチャの世界だ。


-何ここ?-

-オッサンこんな世界にいたの?-

-見ていて何かキモチ悪い……-


コメント欄も、どうやら俺と似たような気分らしい。

何となくだが、いるだけで心を削られるような錯覚さえ感じている。


<恐らくは……。

勢大の感想からの推測になりますが、勢大の世界を再現しようとして、何らかの負荷がかかっているのかと。>


マキーナに言われて、あぁ、と納得する。

膨大過ぎる(・・・・・)のだ。

普通、異世界転生をした転生者なら、持っている世界は転生前に生きていた世界だけだ。

内包する1つの世界を精巧に読み取り、弱点を再現する機構があるとして、そこに数万の世界をぶち込んだら、そりゃこうなる。


「渡ってきた異世界の数が違いすぎて、うまく読み取れずにバグってる、ってところか。」


とはいえ、先に進まねばならない。

背の高い雑草をかき分けて進み、金属の床を越え、廃墟の様な街並みまで進むと、微かに地響きを感じた。


「ん?地震……か?」


微かな振動は、徐々に大きく、ズシン、ズシンと、はっきりと耳でも聞こえるほどに大きくなる。


<振動波、感知しました。

過去に該当データあり。

……ヨツビシ・マテリアル社製10tAHM(武装人型機械)猟犬(ハウンド)の駆動音と一致しました。>


「ヨツビシ……、あー、何だったっけか、それ。

アレだよな、アレ。

えーっと、いや、ここまで出かかってるのに。」


確か、異世界を転移している途中、初めてロボットを扱える世界に行った時に出会った奴だ。

あの時は年甲斐もなくはしゃいだなぁ、と思いながらも、どういう機体だったかを思い出せずにいる。

首のないダチョウみたいな外見で、武器は確か……。


<左右側面に105mm小口径オートカノン二門、胴体下部にガトリング砲を一門装備しており、鳥の足を模した特徴的な脚部は全AHM中最速の機動力を誇ります。

対AHMでは同重量のAHMには劣るものの、歩兵部隊には驚異的な制圧能力を有しております。

そのため、ついた異名は……。>


「バカッ!歩兵殺し(マン・ハント)じゃねぇか!?」


思わずマキーナに怒鳴ってしまうが、マキーナは1ミリも悪くない。

むしろ、つい考え込んでしまった俺の方が圧倒的に悪い。

逃げて隠れようとした俺の視界に、崩れたビルの影からそれが出てきて、胴体上部についているセンサーアイと目が合う。


センサーアイの側面についていた緑の光が、赤へと変わる。


<アラート、ロックオンされました。>


「マジかよぉぉっ!!」


思わず叫びながら、近くの瓦礫に飛び込む。

次の瞬間には先ほどまで俺がいた場所に、徹甲弾の雨が襲いかかり、奥の木々をなぎ倒していく。


-うぉぉぉぉ!-

-ロボットだ!すげぇ!-

-でもなんか格好良くない-

-私は可愛いと思うけど-

-これだから素人は-

-あれオッサンの世界にいたロボット?-


チラと見えてしまったコメント欄が、今度は妙に憎い。

こちらの気も知らないで好き勝手言いやがって、という気持ちが湧き上がるが、八つ当たりしても仕方がない。


「いや、アレは別の異世界で出会ったヤツでね!

歩兵殺し(マン・ハント)ってあだ名の機体で!

今の状況ではかなりヤバい奴なんだわ!!」


走りながら、思わずクセで解説してしまう。

あれはヤバい。

一度人間をロックすると、生体情報を捕捉し壁越しであろうと追跡し続けるという、偏執的なまでのセンサーを搭載してやがる。


-オッサンの必殺技で何とかなるんじゃね?-

-素手でロボを壊せるわけww-

-でもモンスターはモンスターだべ?-


なるほど、と、コメント欄に気付かされる。

あの世界、マキーナを含めて超常的な力が使えなかった。

だが、ここは違う。

なんの制限も受けているわけではない。

そう考えると、あの猟犬(ハウンド)も、“ちょっと強いモンスター”と同義ではないか。


「よしっ!そうと決まれば!!

百歩……あ、無理だこれ。」


遮蔽物として使っていた瓦礫から飛び出し、拳を固める。

拳を打ち出すよりも早く、胴体下から伸びる6本の銃身が、電動モーターの音を響かせながら回転を始める。


必死に横に飛び、瓦礫に隠れる。

次の瞬間には、地面も瓦礫の一部も吹き飛ばす銃弾の嵐が吹き荒れ、ありとあらゆる破片が俺に振り注ぐ。


「無理だこれぇぇ!

仮に一発当てたとしても、その間に数百発返ってきやがる!!」


這い回りながら瓦礫から抜け出し、また廃墟を盾にしつつ逃げ回る。


-草-

-がんばえおじきゅあ!-

-やっぱダメかぁ〜-

-ホナ、どうしますんや?-

-さっき何か入口っぽいのなかった?-

-でも、探索者ならあれくらいはじき返せるんじゃない?-


「無茶言うな!

あんなガトリングガンの弾なんぞ食らった日にゃ、ミンチを超えて血煙になって蒸発するわ!!

って、ん?入口?」


逃げ回りながら、コメント欄を遡る。

そうすると、途中に“アレ何だろ?ゲートかな?”というコメントを見つけた。

そこの時間に俺が見ていた風景をマキーナに調べさせると、確かに視界の片隅に地下への入口らしきモノが見えていた。


「おぉ!でかした視聴者(ウォッチャー)さん!!

頂戴頂戴!そういうのもっと頂戴!!」


入口の位置と、俺が通った時に見た風景をマキーナが照らし合わせ、おおよその位置を特定する。


ちょうどこのまま走れば、入口、俺、ハウンドの位置になって、そのまま飛び込める。

全力で走り続けると、さっき視聴者(ウォッチャー)が言っていた入口が見えてくる。


「よっしゃぁ!脱出完了だぜぇ!!」


最後は機銃掃射を浴びかけていたが、何とかスライディングで滑り込んで地下への入口に飛び込む。

予想通りそれは次の階へと下る階段で、そのまま滑って途中の踊り場まで転がり落ちてしまったが、何とか危機を乗り越えることが出来た。


「……イテテ。

やれやれ、ようやく安全地帯に……。」


ここまでくればもう安心だと思い、ホッとしながら後ろを振り返る。


真っ暗な口を開けている入口が、漏電しているかのような電気と火花を散らしている。


「……?

オイオイ、まさかまさか……。」


入口が赤い光を放ち始め、そして暗闇から銃身が少しずつ生えてきていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ