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異世界殺し  作者: Tetsuさん
電影の光
888/922

886:歓声の怪物

<勢大、あの右手の建物側に痕跡が続いています。>


マキーナに言われ、周囲を見渡す。

かなり大きい交差点、その右手側にある大きなビル。

マキーナが示す矢印は、そこを指していた。


「……あの建物の中に、次への入口がある、って所か?」


<正確には建物に入る手前、という所でしょうか。

ともかく、ルートを示します。>


交差点を渡り、右目に表示される進行方向を見ると、下りのエスカレーターが見える。

当然電源は入っておらず、歩いて降りる。

止まっているエスカレーターを歩いて降りると、何というかこう、気持ちが悪くなる。

動いていないのに、動いているような、動いていない違和感というか、何だかそんな感情が湧いてくる。


「……店の入口が、地下への階段になっているのか。」


降りて少し広い場所に出ると、立ち食いそばや夜はバーになりそうなカフェなど店が数店あるのだが、その内の一店舗の入口が、そのまま石造りの門に地下への階段が融合しているのだ。

あれでは誰も店に入れないだろうな、などと場違いな感想を浮かべながらも、入口にビーコンを貼り付けると地下へと降りていく。


-[このコメントは管理者により削除されました]-

-[このコメントは管理者により削除されました]-

-コイツ何様?-

-[このコメントは管理者により削除されました]-

-オッサンだって探索者(ライバー)じゃねぇか-

-ギフトポイント返せよオッサン-

-キモいキモいキモい-

-[このコメントは管理者により削除されました]-


降りている最中、あぁ、想像以上に荒れてるなとコメント欄を見て思う。

まぁそれもそうだ。

俺がやったことは、言ってみれば全方位に喧嘩を売ったに過ぎない。

一度吐いた言葉は取り消せない。

ましてやこれは配信されている。

ネットワークに残るということは、いくらでも複製・増殖するということだ。

データ的な意味でも、そこに含まれる善意や悪意までも。


「ノリヤスは、“ここは自分の知っている世界”だと言っていたが……。

あれはつまり、ここはノリヤスの心が作った心象風景なのかな。」


別に視聴者(ウォッチャー)を当てにした訳じゃない。

隣に仲間もいない。

ただ単純に、ノリヤスの事を考え、推測した時にポロリと口から漏れ出た言葉だ。


-どうだろう?その可能性はあるかもね-

-[このコメントは管理者により削除されました]-

-タヒね4ねタヒね4ね4ね-

-51階層入った時、何か画面がグニョってしたよな-

-[このコメントは管理者により削除されました]-

-ノリヤス様、最初えっ!?って言ってた-

-荒らしうるせえなぁ-

-やっぱこれ異世界に繋がってるん?-

-反応するヤツも荒らし定期-


コメント欄には変わらず怒りが渦巻いているが、中には冷静に状況を見ている人間もいるようだ。


「さっき、気持ち悪いと言って、見ている人達が気分を害したのなら、そこに関しては謝る。

だが、言葉自体を撤回する気はないよ。

きっとこういう文化は、最初は“やりたいからやる”だったり“楽しいことを共有したい”、はたまた“面白いものを見て楽しみたい”という純粋な感情が、その始まりだったんだろう。

でもそこに“誰かからの見栄え”だったり“名声”だったり“もっと強い刺激を”と様々な感情(余計なモノ)が乗っかった結果、何だか不純な、醜悪なものになっていっているような気がするんだ。

年寄りの愚痴かも知れないけどね。」


或いは金、かも知れないけどな、とは思うが、流石にそこは言わなかった。

それを言わなくても伝わるだろうし、伝わらないならそれでもいい。


コメント欄には、また嵐が吹き荒れている。

言葉の意味を受け取れずまた怒り出す者、同じく“謝る”の部分だけを切り取り勝利宣言をしだす者、無条件に同意する者。

本当に理解している者ほど、今ここでコメントを打たないのだろうな、と少し思う。

その存在を感じ取ることは、経験を積んでいないと難しいだろうな、とは思うが。


<勢大、周辺探知が効きません。

ここからは肉眼での警戒を。>


54階層にたどり着いた瞬間、マキーナが最大限の警報を鳴らす。

風景は先ほどの53階層と同じだ。

出現場所も橋のたもと。


ただ、空が異常だ。

空が一面の赤?いや、どす黒いピンクなのだ。

空を見続けていると目がチカチカする。

その上で地面や建物は自然な色合いをしているから、一見コンピューターグラッフィックの中にでもいるような気分になる。


「キャー!ノリヤスさまー!」

「素敵ー!抱いてー!」

「アタシのノリヤス様よー!!」


声のする方を見れば、女性?の集団が奇声を上げながら俺に向かって、両手を突き出して走ってくる。


「何だ!?何だ!?何だ!?」


刀を構えるが、斬っていいものか判断に迷う。


「止まれ!探索者(ライバー)なら探索者証を出すかドローンで表示させろ!!」


反応変わらず。

奇声を上げて走り寄るのみ。


「シッ!」


短く息を吐くと、刀を振るう。

一撃で、手前の2人の少女の首をはね、返す刀で後続の女性達を次々に斬り捨てる。


-あーぁ-

-何してんのオッサン!?-

-これサツ人じゃね?-

-迷宮法通りの対応だろ-


コメントに返事をする余裕などない。

最初の奇声を聞きつけてか、次々と建物の中や通りの向こうから女性が……女性ばかりなのが気になるが、狂ったように叫びながら俺に走り寄ってくる。


(マキーナ!こいつらは何だ!?)


<解析不能、全ての探知が反応しません。>


人間か、モンスターか。

それすらもわからないが、ただ、こうして襲ってきた者は全て敵だ。

こういう時、ソロで動いていると判断が早くて済む。

敵味方の判断をしなくて済むからな。


「……数が!多すぎる!!」


もう100人以上は斬り捨てている。

それでも、まだまだ勢いは衰えることを知らずに増え続けている。


「マキーナ!1番人数が多い方向を教えろ!!」


<探知不能。

ですが、勢大の視覚情報を観測した限りではあちらの方向です。>


先ほどの交差点、だが今回はさっきの右手の建物ではなく、まっすぐ正面から大量に来ているようだ。


「ならそこだ!ぶっ貫く!!」


一瞬の空白を利用し、刀を左手に。

右拳を握り込み、零歩神拳を目の前で炸裂させる。


強烈な爆風と熱、その後の吸引と冷却が一気に起き、女性の群れが引き寄せられる。


「飛び越える!!」


全力で跳躍し、交差点を一気に飛び越える。

その向こうに橋らしきモノがまた見えたので、そちらへ走り出す。

クソ、ノリヤスの奴め、後で文句を言ってやる。

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