第23話
このゲームのすごい所は。
「何と言ってもこの草原。すごいよくできてるよな! ははは。よし、いっちょやるかあ!」
と不知火(魔道剣士)は一人、手に持っている盾、片手剣を交互に振り回しながら草原を走り回っている。
「そういえば、このゲームはRPGですよね」
宇都が隣にいた五月雨に話しかけると、彼は少し飛び上ってたじろぎながら口を開く。
「う、うん。いたってシンプルなんだってさ。モンスターを倒し、経験値を稼ぎ、レベル上げをする。そしてレベルがたまったら、ダンジョンとか洞窟とかでボスを倒して......攻略、するんだよね? そしてフィールドのエリアを全制覇した後に、最終ボスを倒すとゲームクリアなんだって」
このゲーム、シンプルなようで実は奥が深い。
クリアのルートが何通りも存在するとのことである。
広大なフィールド、膨大な数の装備、魔法。さらには多種多様なモンスター、そしてボスの数。
イベントだって他のゲームにも負けていない。
目もくらむようなデータの量ではあるが、それだけ攻略のルートや方法が沢山存在するという事を示している。
「......知ってる? このゲーム、レベルが999まで行くらしいの」
「なにい! そおなのか! 開発者の教授、すげえなあ!」
黒が小さくつぶやいたが、地獄耳なのか少し距離があるのにも関わらず不知火が即答して驚嘆の声をあげた。
「僕たちのレベルはまだ1で。まだまだ先は長いですよね」
「ははは! 二週間もぶっ続けでやりゃ、余裕だぜ!」
ゲームを二週間ぶっ続けでやるってどうなんだろうか。
変な考えが頭によぎりそうになった宇都であったが、単位奪還の為と思うと仕方がないのかもしれない。
彼は、ため息をついた。
「さて、とりあえず俺たちのスキルとか武器とか確認しないとなあ!」
そういうと不知火は元気な声でメニューを開き、初期装備を三人に見せてきた。
黒は黙って近づいてきたと同時に、五月雨がこけそうになりながらも近寄って行った。
「ん? 初期装備って、不知火教授からもらったんじゃないですか?」
「それは一部だけだな! さすがにフル装備はもらえないだろう。プレゼントとか言ってたが」
不知火の装備を表示している画面には、【絶対防御マント】と書いてある。レア度という欄には、☆が九個キラキラ輝いて羅列され、☆が9個つくほどのレア度であることを示していた。
ちなみに、この世界では最も手に入りやすいアイテムや武器、防具、敵の遭遇頻度をレア度☆1と表現し、難しくなるにつれ☆の数が増えていく表現をしている。最大では☆10だそうだ。
さらに付け足しておくと、レア度が高ければ高いものほどショップでは高く売れる。
しかし、そのようなメリットもあるがモンスターや他のプレイヤーから盗まれることもあるから要注意とのことである。
「え、えと絶対防御システムって何でしょうかね?」
五月雨が説明枠外にあるスキル表示に注目している。
「知らん! ははは」
一蹴されてしまった。
「で、そういうお前はどうなんだ、五月雨。見せてくれ」
「あ、う、うん」
「どれどれ......名前が魔法回避マント。レア度が9。スキルが絶対魔法防御。なんだこりゃ」
不知火がまたも意味不明なスキルに頭を抱えて唸っている。
五月雨も黒も訳が分からないという顔をして、退屈なのか草原で戦っているプレイヤーを観察し始めた。
みんな必死で戦っている。
「......私は虹色の水晶。レア度は9。半径三キロ以内のプレイヤー、モンスター、アイテムをすべて感知できるみたい」
黒が小さくつぶやくと、おおと三人は驚きの声をあげる。
「なかなか使えるじゃねえか! ははは!」
「す、すごいです。黒さん!」
軽くチートじゃないか。と宇都は思ったが発言しなかった。
宇都は導かれるように、装備の画面を出して目を向けてみる。
「名前がウェポンブレイカー? レア度が10?」
「なんだって?」
三人の視線が宇都へと集中する。
いつも冷静な黒でさえ、興味を示しているのだろうか。
彼女は先ほどより目を大きく見開いて宇都の画面へ食い入るように覗いてきた。
「おお、レア度マックスだってよ。すごいな、ウトよ!」
「え、ええ......。ですが、ステータスがしっかり書いていなくて」
「な、なんか武器・装備破壊というスキルみたいですね。あ、あと攻撃力が+9999って書いてありますね」
このゲームに挑戦させた不知火教授は、宇都に何がさせたいんだろうか。
このVRMMOで俺TUEEE的な展開がお望みなのか、それとも本当に厚意からのプレゼントなのか、単位認定の評価に関するものなのだろうか、宇都には見当もつかない。
「これは、俺最強説を唱えても大丈夫なのでしょうか?」
「そもそも......これ、本当に使えるの? 攻撃力だけは凄そうだけど」
「さあな。ウト次第だろ! さあ、レベル上げに勤しもうぜ!」
勝手に一人言い放ち、不知火は草原を走り回っている。
それに続く五月雨。
まるで鬼ごっこの逃げる役を追いかけるかのように素早く追いかけていく。
このゲームでのステータスは、現実世界の体調や、体格、腕力、知能が大きく関係しているという。
例えば、腕力に自信がある人は腕力の強さがゲームで反映されている。
だから、レベル1で腕力が2とか3の人もいれば、400とか意味不明な力の持ち主もいるそうだ。
ただ、レベルが上がるにつれそれは関係なくなるとのことである。
レベル999に到達したときのステータスは皆同じになるように設定されているため、そのステータスにMAX値に向かって調節できるよう、成長具合が自動的に個人に振り分けられるらしい。
だから、この世界では結局のところ現実世界でいくら最強であろうが、このゲームではレベルが物をいう世界となっているのだ。
このVRの中で草原の草が、右へ、左へとリズムよく揺れている。
ダンスを踊っているかのようであるが、この動きもプログラミングで動いているのだろう。
なかなか作りには凝っているようだ。
宇都が周りを見渡しながらパーティで草原をうろついていると、何か青いものを見つけた。
「あ、あれはスライムかな。物語の始まりに出てくる定番のやつだね」
五月雨が呟くと、不知火が全速力で駆け抜けて、
「よおし、テストといくかあ!」
とスライムに突撃していった。
ちなみに、このパーティ。
全員レベルが1である。装備もほぼ初期装備。
魔法などのスキルは、全員何も解放されていない。
不知火は、勇敢かは分かりかねるがそんな状態で一人突っ込んでいく。
「あ、パーティで行かなくていいんですか!」
「大丈夫だ、ははは! 行くぞお!」
不知火は持っていた片手剣でスライムに攻撃した。
すると。
ピシっという何とも攻撃が通ったことを示している音を立てて、ダメージの量が画面に表示された。
不知火が与えたダメージは、25。
白い文字で、小さくそのように表示されていたのを宇都は見た。
「ちっ、ダメージ25か。ゴミめ......」
「不知火さん、それ誰の真似ですか」
不知火はゆっくりエフェクトがかかって消滅するスライムを見ながら何かつぶやいていたようだ。
宇都がツッコミを入れるが不知火にスルーされた。
軽快な音楽が流れ、不知火の画面にLEVEL UP! という文字が現れる。
「あ、あれ、僕たちパーティ組んでいるのに、経験値は不知火さんしか入らないのかな?」
「いや......。恐らく、パーティには入るけれども、倒した本人に一番経験値が入る仕組みなんじゃないの?」
宇都は何となく理解した。
この手のゲームに関しては、パーティ全員に同じ経験値を与えてしまうと、レベルがすぐに上がってしまうほか、とりあえずメンバーにいるだけで楽にレベルが上がるという問題が起きてしまうことを理解しているからだ。
それでは、このゲームのテスターになった意味もさほどないであろう。
「よし、俺もやってみます」
宇都はウェポンブレイカーを背中の鞘からゆっくりと取り出し、構えてみた。
その剣は、一目でわかるほど究極に美しい。
漆黒に染まり、薔薇のような細かいとげとげしい装飾。
ラストダンジョンで手に入りそうな代物だ。
「うおおお!」
宇都はとりあえず近くにいるスライムに、全力で剣を振りかざす。
すると。
ポヨン、という何とも情けない音と共に、ダメージ量が画面に表示される。
「......」
一同は、それを見て唖然とする。
1。
「......」
宇都もしばらく考え込む。
スライムも何が起きたのか気が付いていない様子であった。
もう一度叩いてみる。
ポヨン。
ダメージ量は。1。
「はあああ!? 何だこれ、使えねえ!!」
草原の中、どこまでにも響き渡るような声で宇都は叫んだ。
宇都が仮想現実へダイブして、最初に与えたダメージ量は1なのであった。
VR編、まだまだ長く続きます。
おつきあい頂ければと思います。
ちなみに作者は、今年は単位をすべて取ることができました! 今年はね。 2015/02/21




