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セイギノチカラ  作者: 混沌
第三章 単位奪還作戦-VRで頂点を目指せ-
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第21話

 不知火とVRに挑戦する約束の日が来た。

 年明けとなり、ハッピーニューイヤー! と皆で叫びまくる時期も過ぎようとしていた頃。

 落単の危機に陥っている学生が、単位をかけてVRのゲームに挑戦しようとしていた。

 名は宇都忠。超能力者ではあるが、VRではゲーム攻略に何の役もたたないであろう。


 VR。いわゆる仮想現実。

 人の手により意図的に作られたその世界の中で、宇都は戦わなければならない。

 落第を回避するために。


 ちなみに。

 宇都が不知火とワンチャンの約束をしたその日、大学を出た宇都はまっすぐと自宅へと帰宅した。

 が、その中で秋芽は部屋を散らかしまくっていたのを目撃する。

 うわ、汚い! 女子力無いと宇都が叫んだら、黙りなさいという表情で、無言で且つ真顔で秋芽に殴られた。


 秋芽には、当日にそのことを話したら、一人で大笑いしていた。

 忠君面白いなとつぶやき、留守番は任せろと笑顔でガッツポーズをしてきたが、宇都は丁重にお断りした。

 また汚されたら掃除がかなわない。

 学校のアイドルって、掃除したことないのか? と宇都は一人考えている。


 さて、宇都はまたもや大学の研究棟にいた。

 眼鏡型端末をかけていないと、ただの寂れたビルにしか見えないのだが、眼鏡型端末がARの役割を成し、ビルの装飾を拡張する。

 学内でのニュースがそこには流れたり、何もない壁がカラフルな色で彩られたりしている。

 壁にペンキをわざわざ塗ったりする必要が無く、端末によって壁が彩られているのは、経費削減の為だろうか。不思議なものだ。


 宇都は長い廊下をすたすたと早足で歩く。

 正月を過ぎたが、学内はまだ休業日だ。

 このような日に出勤する人など、警備の人と不知火ぐらいであろう。


 不知火の研究所へと来た。

 不知火は、またもや白衣を着て一人パソコンの前に座っていた。

 相変わらずがさつな性格は変わっていないようで、机には大量の資料が積み重ねられていた。

 少し触れただけで一斉に落ちてきそうな雰囲気を出して、それらは塔として立っている。


「おお、宇都君! 早速だが、覚悟はできているかね?」

「はい。ゲームクリア目指して頑張ります」

「よし、いい心がけだ。期間は二週間をめどにしておこう」


 二週間? と宇都は疑問を持つ。

 それを見透かしたかのように、不知火は早口で話し出す。


「ああ、二週間というのはゲームクリアまでの制限時間だと考えてもらっていいぞ。勿論、ゲームをクリアできなくても、君の働きぶりしだいで単位はそれ相応につけさせてもらおう。ただ、二週間ぶっ続けで動いてもらわないと、補習の分を取り戻すことができないのでね。頼むよ」

「え、二週間ですか? もしかして研究所の中にあるカプセルの中に、二週間籠るってわけはないですよね」

「何を言っているんだ! 宇都君! まさか、体がもたないとかいう疑問じゃなかろうな? 私の技術力をなめてもらっちゃ困るぞ」


 いや、二週間もぶっ続けでプレイできるはずがないだろうと宇都は一人ツッコミを入れる。

 そもそも、VRでは食事はできるが、リアルにおいて排泄や栄養補給、運動は欠かせない。

 故に、二週間ずっとカプセルの中で健康状態を維持する事などできないのだ。

 下手をすれば餓死してしまうし、その他諸々大変なことになる。


「あ、今学んだことを活かし、リアルでの影響を考えただろう。いいことだ。がはは! しかし、このカプセルはそんな問題を全部一度に解決してしまうのだ」


 不知火の話によると、このカプセルは現代においても最新型らしい。

 運動、排泄、食事の問題点を一気に解消してしまう優れものだという。

 カプセルが人間に栄養を投入したり、トイレの代わりになったり、睡眠ベッドの代わりになったり、運動のためのマシンになったりするという。


 それ故、ゲームをぶっ続けで二週間やっても、体には何の異常も見られないという。

 つまり、ゲームをする前とした後。体に何ら問題は生じないのだ。

 恐ろしい技術力である。


「さあ、さっそくやるかあ! カプセルに入りたまえ! がははは!!」

「うわ、押さないでください、不知火教授!」


 宇都は導かれるようにカプセルの中へ入り込んだ。

 カプセルの中は、非常に居心地が良い。

 まるでベットの上に寝っ転がっている感覚だ。

 入るとともに、良く分からないヘッドギアを装着させられる。


 これが食事などの人間生活の代替品となることを考えると、何とも奇妙な感覚がする宇都。

 すると、ういーんと音を立てて窓が右から、左から同時に閉まっていった。


「さて、宇都君。これから単位をかけてアナザーワールドに挑戦してもらうわけだが」

「はい」

「一人では攻略が難しい上、初心者はもしかしたら他のプレイヤーに狙われるかもしれない。経験値稼ぎのためにな。先に言っておくが、プレイヤーの持つ経験値は大きいのだ。まだまだこのゲームはテスト段階だが、選抜で先に三千人ほどがもう、ログインしている」

「三千人もですか!」


「まあな! だが、気にすることは無いぞ。この三千人は、つい五分前にログインしたばかりだから、全員初心者も同然だ。本来ならばテスターは全員五分前にログインすることになっているのだが、君とある人物たちを除いて特別にログイン時間を遅くしてもらった」

「とある人物?」

「ああ。私のゼミ生だ。君の攻略の手助けをお願いしている。きっと力になってくれるだろう! 私は意外といいやつだろう? がはは。彼らにも宇都を助けた分報酬を与えることになっているから、とても張り切っているようだ」

「結局金ですか!」


「金は使わなければ、その辺の石ころと同じなのだぞ、宇都君!」

 不知火はがははと言いながらカプセルの中を覗いた。

 宇都はため息をついてから、


「では、なぜログイン時間を遅れさせているのですか?」

 と単調な口調で質問した。

 間髪入れずに不知火が大きな口を開ける。


「それは、君とゼミ生を合流しやすくするという配慮だ! 三千人が一度にログインしてしまったら、始まりの場所で人がごった返すからな。見つけにくくなるんだな。ログインしたら始まりの場所で合流し、そのまま攻略を始めてくれ。目印は、赤いマントと青いマント、虹色の水晶を持ったプレイヤーだ」

「分かりました」

「そしてもう一点。君に警告だ」

「なんでしょうか」


 不知火の顔が陽気な表情から、真面目な表情へと変わった。

 それは、本当にテスターだけでなく宇都に対しての忠告であるようだった。


「一つ。くれぐれもチートや、いかさま、プレイヤーキル行為はしない事。他人を殺すのは、御法度である。破った瞬間、強制ログアウトさせて単位を剥奪するから、気をつけてくれ」

「分かっております。そのようなことはしませんから」

「よし。二つ目は、君が私の推薦したテスター、またはゼミ生の存在を周りに知らせてはならない」

「なぜですか?」


 宇都はカプセルの中から会話をしているので、声が中で共鳴している。

 不知火は一呼吸おいてから、

「それは、周りのテスターたちに君たちの存在が知られると、そこから私に関しての情報が漏えいする可能性があるというわけだ。簡単に言ってしまえば、君たちは私の研究棟からアクセスしているわけなんだが、逆アクセス......つまりハッキングされてしまうと、このアナザーワールドのデータが漏えいしたり破壊されたりする可能性があるのだ。君たちの回線を通じて、いくらでも私のパソコンに侵入することはできるからな。ゲームの管理者権限は私にあるが、それを突破されてしまったら終わりだと思ってくれ」


 と困ったような顔をして宇都に話しかけた。

 宇都が分かりました、くれぐれも気を付けますと呟くと、不知火は満足そうに頼むぞと言った。

 不知火はがさつな人間だが、その表情は見ているとなぜか安心感が湧いてくる。


「ああ、アクセスする最後に」

「はい?」

「君は私の大切な学生だ。だから、初期装備に私からのプレゼントを入れておいた」

「はあ」

「まあ、何かの役に立ててみてくれ! 他のプレイヤー、羨ましがることだろうな! まあそのせいで少々難易度が上がるかもしれないが。がはは!!」


 言っていることが宇都には分かりかねないが、とりあえずありがとうございますとだけ言っておいた。

 不知火は、うむと感心したように言ってから、パソコンの方へと足を急がせた。


「よし。三人の私のゼミ生も準備が完了したらしい。それでは、君も含め、四人全員をアナザーワールドへ招待しよう!!」


 不知火が、二人しかいない部屋なのに大学内にいる学生全員に聞こえるよう叫ぶ。

 両手を広げ、我が世界に没頭しろ、と宣言しているようにも捉えられた。


 宇都は一人決意する。

 このゲームを完全にクリアし、評価をSにしてもらう。

 何が何でも、クリアしてみせると。


「では、いくぞ! アナザーワールドへアクセス!! 検討を祈る、がははは!!!」


 不知火のけたたましい声を聞くと同時に、意識がVRへと流れていく。

 視野が目まぐるしく変化していく。

 体が軽い。

 まるで四賀との対戦の時経験した、無重力状態になったのを宇都は感じていた。


 そしてついに、単位奪還作戦が始動する。

 VRでの二週間の生活が、ここから始まった。

雪やばいです。

体調には気を付けたいですね。 2015/02/05

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