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幾千の夜と暁を越えて  作者: 白明


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第八章 破軍星 参 真なるを通すのが誠

 白の指摘により英の横領が明るみになった。


 すぐに英の担当している事業を閉鎖。

 一部を残して売却を行った。


 英のこれまでに着服してきた金額は10年間で約5億円。

 その方法に関しても白は全てを明らかにした。


 英はゼネコンが本業である。

 サイドワークとして私の事業のひとつを任せていたのだが、仕事内容はほぼ無いに等しい。

 しかし、事業利益の一部がペーパー会社を通じて、自動的に英の口座に流れていくように設定されていた。


 実は、英の動きにも気付いていたが、ワザと放置しているところがあった。

 幼い頃あまり構ってやれなかった負い目もあり、少しでもそれを埋め合わせたかった。

 甘い親だといってしまえば、それまでだ。

 だが、例え親子であったとしても「間違ったこと」を「正しい」と言い続けることはならない。

 それは今回、白に伝えたかったことでもある。

 だからこそ、今回のことは私の背中と、キツイ判断で、示したかった。


***


 収入の一部を急に失った英は、当然怒るわけで。

 訴訟を起こしたのだ。


 相手方は、あろうことか私、雄、白、そして虎。

 親である私を含め、嫡男すべてを訴えるという暴挙に出た。


 ここまでくると、なんとも品がないとしかいいようがない。

 そんな風に育てた覚えはなかったのだが……。

 いや。きちんと育ててこなかったからこそ、今のこの仕打ちを受けているのかもしれない。

 因果応報とはこのことだと自嘲する。



 民事裁判が正式に開始される前には、事前調停というものが行われる。

 裁判での審議をスムーズに行う目的で設置されたものらしい。

 この事前調停で両者の折り合いがつけば、提訴が取り下げられることもある。

 調停には、裁判官、そして二名の調停員が同席する。

 これらの前で申立人、相手側の双方から意見等を聴取し、一定の方向性を示すものだ。



 当然のことながら、この訴訟自体は相手側(つまり私)が訴えるのであればその正当性があると判断できるのだが、申立人(英)が訴えるのはナンセンスとのことで終結する。

 当たり前といえば、当たり前なのだが、この訴訟自体が無効であるとの判断となった。



 それから英との連絡がパタリと止まった。

 調停前には、私を誹る電子メールが毎日のように送られてきていただのだが、凪のように静かになった。


 白は調停後「俺が見つけなければ、英叔父さんとこんなことにならなかった……」と落ち込んでいたが、これはこれでいい。

 例え、親子であっても間違ったことは、間違っていると示さなければならない。

 それが大切な息子であっても。


***


「ひいじいじ~。次の曲がり角を曲がったところが、事務所だって~。早く終わりにして、おいしいものを食べに行こうよ~」

 虎が足早に駆けていく。

 まだ小学二年生であるにも関わらず、私を先導してくれるとは。

 まさに「『星』の子」である。


 私を、雄を、そして家族を、白と一緒に引っ張って行ってくれる。


 二人に任せておけば、この家族はもう大丈夫だ……。


 私の役目は、そろそろ終わりなのかもしれない……。


 そんなことをボウッと考えていると目的に到着した。


 公正証書役場。


 今日は、私の遺言書を保管しに来た。


 これを収めてしまえば、私の役割の大部分が終わる。


 そう。



 終わってしまう……。



 私の役割が……。


(つづき)

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