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幾千の夜と暁を越えて  作者: 白明


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第四章 文曲星 伍 主義主張、思想とは移ろうモノ

「雄、少しはしゃんとしなさい!」

 まったく嫡男なのだから、それなりにしゃんとしてもらわなければ、私が困ります。

 照との間に生まれた長男であり嫡男「(ゆう)」は、私に似て面長で、切れ長の眼、照に似た団子鼻で、なんとも不思議な顔をしておりました。


 しかし、誰に似たのか、やんちゃ坊主。

 私の大切にしている算盤を足に括り、縁側を滑って遊ぶ姿には、いい加減、堪忍の緒が切れました。

 まったく照はどのような教育を行っているのでありましょうか?


「まあまあ、清さん。雄はとっても子どもらしくていいじゃあ、ありませんか」

 というばかりで、なんとも埒があきません。

 雄と六つ違いで生まれた「(えい)」も、最近では物事を少しずつわかってきたようですが、二人で悪ふざけをいつまでも続けます。


 この海野家を今後継承していく嫡男であるためには、もう少し「しゃんと」してもらわなければ困る。

 私が海野家に養子にきた当時、正から受けたような教育をして欲しいと照には伝えたのですが、


「まあ、清さんったら、考え方が古いのね。今では民主主義、自由主義という考えが出てきて、子どもにも自由にする権利があってよ。新聞社にお勤めのお偉いさんだったら、当然知っていてよいことですわよ」

 まったく。

 昔からではあるが、照はこちらがいい返し難い返事をするりと返します。

 これでは、どちらが主人であるかもわからないと感じておりました。


 確かに時代は大きく変革いたしました。

 戦争後、今までの天皇至上主義は、戦勝国である米国の指示を受け、解体。

 変わって国民や市民が最も尊重されるべきという民主主義を定着させられました。

 この考えは、国民、市民だけではなく、女性も男性と同じ権利を有し、発言、主張をすることも認めるモノでした。

 さらに最近では、子どもにも権利を認めるという風潮まで起きつつあるようです。

 私が生きてきた時代を否定されるようで歯がゆく感じているものの、これを率先して普及させているのが、新聞社であることも私の混乱を大きくさせます。


 新しい時代を開き、そして世界を変えていく。

 それが新聞社であり、これからの人々の考え方ではあるのはわかります。

 しかし、それはアイデンティティを失い、付和雷同で確固たる意志を持たない国民を作り出していくものではないかとの危うさも感じます。

 最近では、露西亜国からの思想である社会主義というものも、多くのところで声高に叫ばれております。


 戦後に生まれてしまった資本家、労働者という階層主義に疑問を持ち「すべての人は、労働も、資産も平等であるべき」というものがその中核を担う思想であります。

 まさに時代の変革期であるからこそ、これからの社会に不安を抱き、暗中模索、付和雷同に思想を渡り歩く思想難民に成り下がってしまっている日本人はどこへ行くのでしょうか?

 そして、これらの情報を発信していく新聞事業は一体、なにを目指して行くのでしょうか。

 いささか、難解であります。


 時代や家庭のそんな流れに翻弄されるが、食い扶持はしっかりと稼がなければなりません。

 十分なお金はあるのですが、また戦争などが起こってしまえば、今の仕事だってあるかはわかりません。


 できる時にしっかりとやるべきことをする。

 そういった考えを持っていなければ、これからの親無き社会に立ち向かってはいけませんから。

 私が働き、そしてその後ろ姿を見せていくことが、夫として、父としての役割なのでございましょう。


 そんな折、取締役からある一言を受けました。


「関連会社に役員として出向してくれないか?」


(つづく)

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