37
満月祭りが終わるや否や、まっさきに旅支度を始めたのはフィオーリだった。
「え?フィオーリ?
まさか、君も、一緒に来るつもりなの?」
びっくりしてそう言ったら、フィオーリは目を真ん丸にしてこっちを見た。
「はあ?
何言ってんっすか?
行くに決まってるでしょう?」
フィオーリは当然というように言い切った。
「・・・だって、君の目的は、家族を探すことだったんじゃ?」
その目的はもうかなったわけで、だからもう、フィオーリには旅をする理由なんか、ないんじゃ・・・
「はい。おかげさまであっさり見つかってよかったっす。
これで、心置きなく、聖女様の旅について行けます。」
そう言ってフィオーリは清々しく笑った。
「ここに残って、家族と暮らすんじゃないの?」
「は?なんで?
おいらはもう、このパーティの一員なのに?
ああ、もしかして、みなさん、まだここにいたい、っすか?
そんなら、いたいだけいてもらってもいいっすけど。
あんまり長くいると、みんなから放してもらえなくなるっすよ?」
いや、ここに残りたいのは僕らじゃなくて君だろう?
「フィオーリは、家族といたい、って思わないの?」
「家族は大好きっす。
けど、おいらはもう、おいらの仲間を決めましたから。
家族は離れてても家族だし。
どこにいても、空はひとつ。繋がってますから。
同じ空の下で元気に暮らしているなら、それでいいっす。」
あっさりとそう言って笑う。
その首にマリエがいきなり抱きついた。
「わ!
え?
聖女様?
って、いったい、どうしたんっすか?」
バカだね。
いったいどんだけ君は、彼女を心配させたと思ってるんだよ。
焦りまくるフィオーリに、マリエは何も言わない。
けど、その腕に、ぎゅっと力を込めた。
ここまでしてもらって分からないなんて、そんな間抜けなこと言うなら、今度こそ許さないよ?
僕は言いたいこと百個飲み込んで、一個だけにしておいた。
「この先、マリエを悲しませたらただじゃおかない。
ついてくるんなら、それだけは覚えておいて。
もしも約束破ったら、そのときはこの僕が、問答無用で成敗する。」
「は?
え?
なんでおいらが聖女様を悲しませるんです?
てか、聖女様?
なんか言ってください。
へ?
泣いて、るん、っすか?
ひぃぇぇぇ~・・・
なんでまた、泣いてるんっす?
あの、聖女様?
このままだとおいら、ミールムに成敗されるっすよ?
聖女様ぁ~」
ふん。
今日のところは成敗はしないよ。
だって、今のマリエの涙は、嬉し涙だからね。
マリエが幸せなら、僕は、それでいい。
それだけは、今もこれからも、変わることはない。




