表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四つ葉の郷の物語  作者: 村野夜市


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/40

28

昼間は眠って、夜は畑仕事を手伝う。

そんな平和な日々はしばらく続いた。

フィオーリはどうするつもりなのか、分からないままだったけど。

思い切って聞き出す勇気は、誰にもなかった。


ああは言ったけど、みんな、フィオーリとこのままお別れってのは、やっぱり淋しかったんだ。


シルワもグランも、旅の目的はそれぞれあるみたいだったけど。

なんとはなしに、ずるずると、四つ葉の郷にお世話になっていた。


賑やかなホビット式の食事にも慣れたころ、ある日唐突にばあちゃんが言った。


「明日から満月休みだからね。

 明日は、フィオーリと仲間たちの歓迎会を、もう一回しよう!」


うん?

満月休み?

それにしても、フィオーリと仲間たちって、そのネーミングはなに?

それに、歓迎会なんて、そう何回もするものなの?


・・・だめだ。

ツッコミどころが多すぎて、口が追いつかない。


仲間たちもみんな同じ気持ちだったのか、きょとんとしている。

その周りで、ホビットたちは、みんな、きゃあ、とか、わーい、とか歓声をあげていた。


「楽しみだねえ、満月休み。」

「今回は、お客さんもいるし、いつもより、もーっと楽しみ。」

「兄ちゃんもいるし。みんなでゲーム大会とかしよう!」

「いいね、ゲーム大会!」

「ねえねえ、ゲーム、一等になったら、なにかもらえるようにしようよ!」

「なにがいい?」

「なににしよう?」

「兄ちゃんと一日一緒にいられる券!」

「ああ、それいいね。」

「それにしょう!!」


・・・って、おいおい。

フィオーリ、いつの間にか君、勝手に景品にされてるよ?


「すいません。

 みんな、何か言い訳があれば、とりあえず、騒ぎたいだけなんっす。

 まあ、大目に見てやってください。」


フィオーリはわざわざそう言って仲間たちに頭を下げた。

いや、謝るほどのことじゃないけどさ。


それにしても、ホビットのお祭り好きは折り紙つきだね。

毎日の日常のご飯からして、わいわい大騒ぎなんだけど。

この上、理由をつけてまだ騒ぎたいなんて。

いやまあ、嫌いじゃないけどね。


「満月休みとは、いったい、なんなのですか?」


基本的なことをシルワが尋ねた。

そう、それだ。

それ、僕も聞きたかった。


「ああ。

 満月を挟んで七日間は、月が明るすぎるんで、オクサンを外に出さないんっす。

 だから、みんなも一緒に仕事を休むんっすよ。」


フィオーリはそう説明した。


「最低限の水やりやら家畜の世話なんかは、当番でやるんっすけど。

 それ以外は、みんな休みっす。」


へえ。

それはまた、面白い習慣だねえ。

オクサンのいるこの郷ならではなんだろうけど。


しかし、フィオーリ、君もいつの間にかすっかりそちら側の人っぽくなってしまったね。

まあ、生まれ故郷なんだし、当たり前と言えば、当たり前なんだけどさ。


「郷の習慣に無理やり合わさせてしまって、みなさんにはご迷惑でしょうけど。

 せっかくですから、楽しんでください。」


フィオーリの母さんはそう言ってほほ笑んだ。


「いえいえ、そんな。

 わたしたちこと、長逗留して、ご迷惑をおかけしてしまって・・・」


シルワは恐縮したように身を小さくする。

それに母さんは鷹揚に首を振った。


「そんなこと。

 迷惑だなんて、誰も思ってやしませんよ?

 みなさんさえよければ、このまま、ずっとこの郷にいてくださればいいのにと思ってます。」


「そんときはねえ、ちゃんとみんなにも、お家、作ってあげるよ?」


ドメニカがそう言って話に割り込んできた。


「オクサンのお家の隣でいい?

 って、オクサン、お家に帰ってきたこと、一度もないけどさ。」

「みんな一緒に住むの?

 それとも、別々?」

「別々じゃ淋しいよね?」


弟妹たちも次々に入ってくる。


「でも、シンコンサン、だけは、別にしないと、なんだよ?」


誰かが訳知り気にそう言ったら、みんな、きゃあ、とか、ひゅ~、とか奇声を上げた。


「そうそう!

 兄ちゃん、シンコンサンだもんね?」

「え?なに?シンコンサンって?」

「シンコンサンは、あれだよ、お嫁さん。」

「ええっ、兄ちゃん、お嫁さんくるの?」

「やったあ、兄ちゃんのお嫁さんだあ!!!」


えっ?とマリエが目を丸くする。

そら、急にそういう話になったら、困惑するよね。


ところが、弟妹たちがいっせいに見たのは、なんと僕だった。


「妖精さん!いつ、お嫁にくる?」

「ドレス、どんなのにする?」

「妖精さん可愛いから、きっとドレス、似合うよ!」

「やっぱ、マメスカだよね?」

「なに?マメスカって?」

「マメスカはもっとすらっと背の高い人がいいんだよ。」

「妖精さんはフリルだよねえ!」

「だから、マメスカって、なによ?」

「お豆みたいなスカート、じゃない?」

「お豆みたいなスカート?それって、なに?」

「だからさ、マメスカじゃなくて、フリル!」

「妖精に人魚着せてどうすんだよ!」

「羽生えた人魚になっちゃうだろ!」

「いやだから!」


わいわいわいわい。

がやがやがやがや。


いや、君たち、ちゃんとした会話になってないよ。


いや、それ以前に前提が大幅に間違ってるけど。


「なんで、僕がフィオーリのお嫁さんなの?」


呆れたついでに、思わず真面目に聞き返しちゃったけど。

そしたら、弟妹たちはいっせいに黙って、ひゅ~ひゅ~、と奇妙な声を上げた。


「だってさ、兄ちゃん、妖精さんにアイスあげてたでしょう?」

「兄ちゃんが誰かにアイスあげるなんて、見たことないよ!」

「アイスだけは、どんなにちょうだいって頼んでも、ぜーーーーーーったいにくれなかったのに!」


「そんなことで?!」


「そんなことじゃないよ!大事なことだよ!」

「あの兄ちゃんなんだよ?」

「アイスクリームなんだよ?」


「・・・フィオーリ、君の食い意地のせいで、僕が大迷惑だよ。」


ちらっと文句を言ったら、フィオーリは、へへっ、と笑った。


「だいたいさあ、なんで僕がお嫁さんなんだよ?

 僕、僕って言ってるでしょ?」


「知ってるよ!僕っ子、ってやつなんでしょ?」

「ボクッコってなに?」

「自分のこと、僕っていう子のことだよ!」


なんでそんな奇妙な知識だけあるんだよ?


「違う!

 だいたい、僕がなるなら、お嫁さんじゃなくて、お婿さん!

 ドレスじゃなくて、タキシードだよ!」


思わずつられて、!、つけてしゃべっちゃったよ。


そしたら、弟妹たちは、びっくりしたようにいっせいに押し黙った。

あ、子どもを驚かせちゃったかな?

ちょっと後悔しかけたけど、弟妹たちは神妙な顔をして頷いた。


「そっか。タキシードがいいんだ。」

「それもありだよね。」

「妖精さんなら、きっと似合うよ。」

「けど、兄ちゃんにドレスはきっと似合わないだろうなあ。」

「ドレスも見たかったんだけどねえ。」


・・・いや、そうじゃなくてね?


「フィオーリの好きな人は僕じゃないよ。

 君たち、まずそこからおかしいんだって。」


「「「「「「「ええっ?」」」」」」」


見事に全員、揃ってたよ。


「「「「「「「アイス、あげたのに?」」」」」」」


いや、それは関係ないよ。


「はいはい、みんなみんな、妖精さんが困ってるから、そのくらいにしようね?」


フィオーリは弟妹たちをまとめてどこかへ連れて行く。

思いっきりにらんだら、てへっ、と笑った。


ちょっと、なんだよ、その、てへ、は?

ちゃんとみんなには説明しておいてよね?


ちらっとマリエを見ると、マリエも一緒に笑ってた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ