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四つ葉の郷の物語  作者: 村野夜市


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だめじゃんだめじゃんやっぱだめじゃんっっっ!!!

だけど光を打とうとした手はびくとも動かない。

見ると、フィオーリにがっちりとつかまれていた。


シルワとグランは油断なく構えている。

とりあえず、このふたりがいれば大丈夫か?

とにかく、子どもたちを守らないと。

子どもたちだけでも、守らないと!


あたふたする僕の目の前で。

かあああっ、と奇声をあげたオクサンは、そのまま出口目指して一目散に走って行った。


え?あれ?


・・・とりあえず、子どもたちに危険はない、か?


と、次の瞬間、弟妹たちも、奇声をあげた。


「「「「「「「かあああああああ!!!!!」」」」」」」


いや、ちょっと待ってよ。

なんで君たちまで、かあ、なのよ?


それから、どっと笑い出す。


「だから言ったでしょ?大丈夫だ、って。」


ものすごーく、得意げ顔をして、ドメニカが胸を張った。

ちょ、なにそれ?

僕に喧嘩売ってんの?

ドメニカなんて、もう、守ってやんない。

困ってても、助けてやんない。

トイレにだって、ついて行ってやらないんだからね?


・・・ぜいぜい・・・。


ちょっとだけ、ルネの気持ちが分かった気がした。


オクサンをあっさり見送った子どもたちは、そのままその辺りにあった包みを取り始めた。


「え?オクサン、あのまま、ほっといていいの?」


「ダイジョーブ、ダイジョーブ。」


なんか、答え方がいい加減になってないか?


弟妹たちは、布に包まれた抱えるほどに大きな包みを、ひとりひとつずつ、運んでいく。


「それ、何にするの?

 僕も運ぶよ?」


「ああ、いいっすよ、お客さんは。

 まあ、黙って見ててくださいっす。」


すっかり、お客さんじゃない側、に回ったフィオーリが言った。


洞窟から出ると、そこにオクサンがへたりこんでいた。


「ああ、はいはい。

 お腹すいたんっすよね?」


フィオーリがそう言って持ってきた包みをオクサンに渡す。

オクサンは、布をほどくのももどかしそうに、がふがふと包みにかぶりついた。


「あれって、なに?」


「あ。チーズっす。」


って、みんな、あの辺から、それ、持ってきたよね?

ってことは、かなり、昔の、なんじゃないの?


「ざっと、三百年前の、っすね。」


「っさ、さんびゃくねんっ?」


漢字に変換できないよ?


「そんなもん、食べられるの?」


「・・・まあ、オークさんなら?」


てへっ、と肩をすくめて笑う。

てへっ、じゃないよ?てへっ、じゃ!

てか、あんたもオークにさん付けかいっ!


「あのオーク、あれしか食べないんだそうです。

 最初倒れてたのを見つけたのも、あそこだったそうで。」


「偏食オークとは、また珍しいね?」


「っすよね?

 オークってのはなんでも食べるもんかと思ってたんっすけど。」


ちょっと柔らかい木の枝でも、土でさえも、オークは食べるよね?

・・・って、あれって一応、チーズなんだし、食べ物ではある、のか?

なら、木の枝や土よりは、マシ?なのか?


「三百年前のチーズなんて、さぞかし固いだろうって思うんっすけど。」


固いとか、そういう問題?


「まあ、あれなら、食べてもらってもいっこうに問題ない、ってか?

 いや、いっそ、食べてくれると助かる、ってか?」


なんか、オークのこと、いいように使ってない?

断捨離、いや、いっそ、廃棄物処・・・あ、いやいやいや・・・


チーズの大きな塊をひとつ平らげたオクサンは、また、かあああっ、と奇声をあげると走り出した。


「えっ?走ったよ?」


「ああ、はいはい。」


子どもたちも、かあああっ、と叫んで走り出す。

みんな背中にチーズの包みをひとつずつ持って。


「さてと。畑にむかいますか?」


さっさと自分の荷物を使ってしまったフィオーリは、手ぶらになってにこにこと言った。





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