22
だめじゃんだめじゃんやっぱだめじゃんっっっ!!!
だけど光を打とうとした手はびくとも動かない。
見ると、フィオーリにがっちりとつかまれていた。
シルワとグランは油断なく構えている。
とりあえず、このふたりがいれば大丈夫か?
とにかく、子どもたちを守らないと。
子どもたちだけでも、守らないと!
あたふたする僕の目の前で。
かあああっ、と奇声をあげたオクサンは、そのまま出口目指して一目散に走って行った。
え?あれ?
・・・とりあえず、子どもたちに危険はない、か?
と、次の瞬間、弟妹たちも、奇声をあげた。
「「「「「「「かあああああああ!!!!!」」」」」」」
いや、ちょっと待ってよ。
なんで君たちまで、かあ、なのよ?
それから、どっと笑い出す。
「だから言ったでしょ?大丈夫だ、って。」
ものすごーく、得意げ顔をして、ドメニカが胸を張った。
ちょ、なにそれ?
僕に喧嘩売ってんの?
ドメニカなんて、もう、守ってやんない。
困ってても、助けてやんない。
トイレにだって、ついて行ってやらないんだからね?
・・・ぜいぜい・・・。
ちょっとだけ、ルネの気持ちが分かった気がした。
オクサンをあっさり見送った子どもたちは、そのままその辺りにあった包みを取り始めた。
「え?オクサン、あのまま、ほっといていいの?」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ。」
なんか、答え方がいい加減になってないか?
弟妹たちは、布に包まれた抱えるほどに大きな包みを、ひとりひとつずつ、運んでいく。
「それ、何にするの?
僕も運ぶよ?」
「ああ、いいっすよ、お客さんは。
まあ、黙って見ててくださいっす。」
すっかり、お客さんじゃない側、に回ったフィオーリが言った。
洞窟から出ると、そこにオクサンがへたりこんでいた。
「ああ、はいはい。
お腹すいたんっすよね?」
フィオーリがそう言って持ってきた包みをオクサンに渡す。
オクサンは、布をほどくのももどかしそうに、がふがふと包みにかぶりついた。
「あれって、なに?」
「あ。チーズっす。」
って、みんな、あの辺から、それ、持ってきたよね?
ってことは、かなり、昔の、なんじゃないの?
「ざっと、三百年前の、っすね。」
「っさ、さんびゃくねんっ?」
漢字に変換できないよ?
「そんなもん、食べられるの?」
「・・・まあ、オークさんなら?」
てへっ、と肩をすくめて笑う。
てへっ、じゃないよ?てへっ、じゃ!
てか、あんたもオークにさん付けかいっ!
「あのオーク、あれしか食べないんだそうです。
最初倒れてたのを見つけたのも、あそこだったそうで。」
「偏食オークとは、また珍しいね?」
「っすよね?
オークってのはなんでも食べるもんかと思ってたんっすけど。」
ちょっと柔らかい木の枝でも、土でさえも、オークは食べるよね?
・・・って、あれって一応、チーズなんだし、食べ物ではある、のか?
なら、木の枝や土よりは、マシ?なのか?
「三百年前のチーズなんて、さぞかし固いだろうって思うんっすけど。」
固いとか、そういう問題?
「まあ、あれなら、食べてもらってもいっこうに問題ない、ってか?
いや、いっそ、食べてくれると助かる、ってか?」
なんか、オークのこと、いいように使ってない?
断捨離、いや、いっそ、廃棄物処・・・あ、いやいやいや・・・
チーズの大きな塊をひとつ平らげたオクサンは、また、かあああっ、と奇声をあげると走り出した。
「えっ?走ったよ?」
「ああ、はいはい。」
子どもたちも、かあああっ、と叫んで走り出す。
みんな背中にチーズの包みをひとつずつ持って。
「さてと。畑にむかいますか?」
さっさと自分の荷物を使ってしまったフィオーリは、手ぶらになってにこにこと言った。




