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僕らはフィオーリの弟妹たちと奥さんを迎えに行くことになった。
てか、なんでその奥さんって人は、わざわざ迎えに行かないとだめなのかな。
今日もぐるぐると地下の通路を歩いて行く。
今日はホビットのきょうだいたちも一緒だから道には迷わないはずなんだけど。
なんだか遠回りしているように感じるのは、気のせいだろうか。
この地下通路は、ぐるぐるしていて、方向感覚を狂わせられる。
薄暗くて外の景色も見えないから、なおさらだ。
「ワタシらも、山んなか穴掘って仕事してることが多いからね。
トンネルとか坑道とか、馴染みはあるんやけども。
それにしても、ホビットさんの地下迷宮は、すごいもんやね。」
歩きながらグランが言った。
なるほど。地下迷宮ね。
「迷宮っすか?
そんな迷いますかね?」
フィオーリはケロッとそんなことを言う。
そらあんたは小さいころから慣れてるんだろうけど。
「迷いますとも!」
マリエの即答にフィオーリは苦笑いした。
「聖女様は、道に迷うのが特技っすから・・・」
そんな特技あるのか?
「いえ、聖女様でなくても、ここの迷宮はなかなかに手強いかと。」
「へえ~、シルワさんでも迷います?」
「わたしたちは、森のなかでは、魔法でもない限り、そう迷いませんけれど。
ここでは、魔法などなくとも、迷ってしまいそうです。」
「なんだってこんな、地下迷宮を作ったんやろな。
これ設計した人ってすごいと思うけど。
なんのためにこんなややこしくしたんか、是非とも聞いてみたいな。」
小さな道具から迷宮に至るまで、もの作りのこととなると、グランはなんにでも興味を持つ。
「いや、別に設計とか、してないと思いますよ。
三百年くらい前に最初のご先祖様がここに郷を作ったって聞いてますけど。
新しい仲間が増えたり、子孫が分家していったりするたんびに、家を増やしていって。
それ、適当に繋いでいったら、こうなったそうです。」
「適当に?繋いだ?」
なんとまあ。ホビットらしいと言えばらしいけどさ。
「これって、計画とかなしに、行き当たりばったりで作った見本、みたいなものってこと?
流石、呑気なホビット族だね。」
「呑気って・・・
そういうふうに言われると、なんか・・・」
「ホビット族は呑気ではないと思いますわ。
この道を迷わずにいられるんですもの。
呑気なはずはありませんわ。」
マリエは力説する。
なるほどね。まあ、そういう見方もあるか。
ぐるぐる。ぐるぐる。
延々回って、ようやく地下通路の突き当りから地上に出た。
そこにあったのは、大きな大きな岩の扉。
見上げるほど大きな洞窟の入口をぴったりと塞いでいる大きな岩だった。
「うわ。
開けっ放しじゃない戸、初めて見た!」
「って、なんっすか?その感想は?」
別に?
思わず正直な感想がそのまま口から出ただけだよ。
フィオーリは気を取り直すように咳払いをすると、えっへん、と胸を張った。
「流石に、ここは開けっ放しにはしませんよ。
なんせ、郷の大事な宝っすからね。」
「へえ~、宝?ここって、宝物の蔵かなんか?」
「宝物の蔵?
ほう。ホビットさんにもそういうもんがあるんや。」
宝物、という言葉にグランは敏感に反応する。
ドワーフ族の宝石好きは有名な話だ。
「そうっすよ?
だからね、ここの戸は魔法の呪文でしっかり閉じてあるんっす。」
フィオーリはますます得意げになる。
「まあ、魔法の呪文ですか?」
シルワは魔法の呪文で閉じられた扉ってとこに反応する。
それぞれ興味のあるところって違ってて面白いよね。
得意満面のフィオーリは、もったいぶるように間をとってから言った。
「そうなんっす。
じゃあ、いきますよお。
ひらけ~、ゴマ!」
「ええっ?
よもやまさか、それが魔法の呪文なんですか?」
シルワは目をむいた。
「それじゃあ、鍵なんて、ないのと同じじゃないですか。」
まったく、どこまでも期待を裏切らない人たちだよ。
ホビット族は、郷の宝の蔵まで、開けっ放しだった。




