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四つ葉の郷の物語  作者: 村野夜市


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食堂に行くと、テーブルにはもう食事の支度ができていた。

フィオーリはずっと離れた席にとっくの前についている。

僕らを見ると手を振ってくれたけど、こっちに来るのは無理みたいだ。

なにせ、もう既に、ぎゅうぎゅうに人が詰まっていたからね。


歓迎会のときほどじゃないけど、あきらかに昨日よりは人が多い。

親戚一同、近所の人まで、ってのは、誇張じゃなかったらしい。


僕らが並んで座ると、すぐさま朝食?夕食?が始まった。


「さあさあ、遠慮しないで、たんと食べてくださいね。」


ホビットって、ほんと、よく食べるよね。

遠慮してるわけじゃないんだけど、彼らと同じペースで食べるのはなかなかに大変だ。

すると、左右から次々に手が伸びてきて、僕らのお皿に食べ物を積み上げていく。

あっという間にお皿は山盛りになる。


「妖精さん、たくさん食べないと、大きくなれないんだよ。」


たくさん食べたって、僕はもうこれ以上、大きくはならないんだけど。


次々に積み上げられる食べ物は、とてもじゃないけど食べるのが追いつかない。

いや、本気出したら追いつくんだけどさ。

あんまり妖精さんが本気出して食べるところは見せたくないかな。


「妖精さん、ドメニカが手伝ってあげるよ。」


そう言う声がして、隣のグランとの間に、無理やりドメニカが割り込んできた。

隙間なんかないところに無理無理割り込むから、ただでさえぎゅうぎゅうなのが、もっと窮屈になる。

おまけに、この山盛りの食べ物を食べるのを手伝ってくれるのかと思ったら、そうじゃなかった。


「エンリョしないで、いーーーっぱい食べてね、妖精さん。」


そう言ってにかっと笑うと、僕の皿にさらに食べ物を積み上げ始めた。


「妖精さん、そーんなに細っこいんだから、もっともーっと食べないとね。」


それって、誰か大人の真似?


しっかし、僕はまた、なんでこんなに気に入られちゃったのかな。

もしかして、あのアイスか?

なんだか、獣の子どもを餌付けかなんかしてしまった気分だ。

あ。いや。獣の子ども扱いは失礼か。


そのうちに、ドメニカは僕に食べさせることより、積み上げることに夢中になってきた。

積み木遊びのように、崩れないように食べ物を積み上げていく。

いい加減困ってしまって、とりあえずへらへら笑っていたら、ルネが助けにきてくれた。


「こらっ!ドメニカっ!」


なんだろうね、小さい子どもって、みんな名前にコラがついてるみたいだよね。


ルネは器用にドメニカを吊り下げて連れて行く。

ドメニカももうぶら下げられるのに慣れたのか、僕ににこにこと手を振ったりしている。

はあ。やれやれ。

とりあえず、せっかくだから、積み上げてくれたのは全部食べようかな。


そんなこんなで賑やかな食事の後は、みんな潮が引くように一斉に仕事に出かけていった。

ホビットって、ほんと、面白い種族だよね。


ようやく傍に来ることのできたフィオーリは、ちょっと興奮気味なのかほっぺたが赤かった。


「みなさん、昨日は休めました?」


「まあ、なんとか。」


あんまり休んだ気はしなかったけど。

そう言うとまた心配するから、適当ににごしておいた。


「今日はみなさんのお手伝いをさせていただこうかと。」


にこにことシルワが言うと、フィオーリはあわてたように手を振った。


「手伝いなんて、そんな気を遣わなくていいっすよ。

 みなさんは、お客さんなんっすから。」


「じぃっとしてるほうが、気遣うてしんどいわ。

 一宿一飯の恩て、言うやんか。

 いや、一飯どころやないくらい、ご馳走になってるしね。」


グランにも言われて、フィオーリは、そんならまあ、とうなずいた。


「手伝いとか、そんなお気遣いはいらないっすけどね。

 腹ごなしがてら、畑、見にいらっしゃいますか?

 なんかね、すごいことになってるみたいなんで。」


すごいこと?

なんかそう言われると、気になってしまうよね。


「わーい。今日はお客さんも畑、行くの?」


フィオーリについてきた弟妹たちは嬉しそうに手をたたいた。

ドメニカは僕の背中に飛び乗ってきた。


「妖精さんも?

 妖精さんも、行く?」


「あ、ああ、行くけど・・・

 ごめん、羽、抑えたら、痛い・・・」


「あ。ごめん。」


すぐに退いてくれてよかった。

ドメニカって、やんちゃだけど、素直ないい子だとは、思う。


「僕ら、これから、オクサンを迎えに行くんですけど。

 みなさんも一緒に来られますか?」


ルネがドメニカの首根っこを捕まえながらそう言った。

なんだか、すっかりこのふたりはいつもセットだ。


そういうわけで、僕らは、フィオーリの弟妹たちについて行くことになった。

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