18
食堂に行くと、テーブルにはもう食事の支度ができていた。
フィオーリはずっと離れた席にとっくの前についている。
僕らを見ると手を振ってくれたけど、こっちに来るのは無理みたいだ。
なにせ、もう既に、ぎゅうぎゅうに人が詰まっていたからね。
歓迎会のときほどじゃないけど、あきらかに昨日よりは人が多い。
親戚一同、近所の人まで、ってのは、誇張じゃなかったらしい。
僕らが並んで座ると、すぐさま朝食?夕食?が始まった。
「さあさあ、遠慮しないで、たんと食べてくださいね。」
ホビットって、ほんと、よく食べるよね。
遠慮してるわけじゃないんだけど、彼らと同じペースで食べるのはなかなかに大変だ。
すると、左右から次々に手が伸びてきて、僕らのお皿に食べ物を積み上げていく。
あっという間にお皿は山盛りになる。
「妖精さん、たくさん食べないと、大きくなれないんだよ。」
たくさん食べたって、僕はもうこれ以上、大きくはならないんだけど。
次々に積み上げられる食べ物は、とてもじゃないけど食べるのが追いつかない。
いや、本気出したら追いつくんだけどさ。
あんまり妖精さんが本気出して食べるところは見せたくないかな。
「妖精さん、ドメニカが手伝ってあげるよ。」
そう言う声がして、隣のグランとの間に、無理やりドメニカが割り込んできた。
隙間なんかないところに無理無理割り込むから、ただでさえぎゅうぎゅうなのが、もっと窮屈になる。
おまけに、この山盛りの食べ物を食べるのを手伝ってくれるのかと思ったら、そうじゃなかった。
「エンリョしないで、いーーーっぱい食べてね、妖精さん。」
そう言ってにかっと笑うと、僕の皿にさらに食べ物を積み上げ始めた。
「妖精さん、そーんなに細っこいんだから、もっともーっと食べないとね。」
それって、誰か大人の真似?
しっかし、僕はまた、なんでこんなに気に入られちゃったのかな。
もしかして、あのアイスか?
なんだか、獣の子どもを餌付けかなんかしてしまった気分だ。
あ。いや。獣の子ども扱いは失礼か。
そのうちに、ドメニカは僕に食べさせることより、積み上げることに夢中になってきた。
積み木遊びのように、崩れないように食べ物を積み上げていく。
いい加減困ってしまって、とりあえずへらへら笑っていたら、ルネが助けにきてくれた。
「こらっ!ドメニカっ!」
なんだろうね、小さい子どもって、みんな名前にコラがついてるみたいだよね。
ルネは器用にドメニカを吊り下げて連れて行く。
ドメニカももうぶら下げられるのに慣れたのか、僕ににこにこと手を振ったりしている。
はあ。やれやれ。
とりあえず、せっかくだから、積み上げてくれたのは全部食べようかな。
そんなこんなで賑やかな食事の後は、みんな潮が引くように一斉に仕事に出かけていった。
ホビットって、ほんと、面白い種族だよね。
ようやく傍に来ることのできたフィオーリは、ちょっと興奮気味なのかほっぺたが赤かった。
「みなさん、昨日は休めました?」
「まあ、なんとか。」
あんまり休んだ気はしなかったけど。
そう言うとまた心配するから、適当ににごしておいた。
「今日はみなさんのお手伝いをさせていただこうかと。」
にこにことシルワが言うと、フィオーリはあわてたように手を振った。
「手伝いなんて、そんな気を遣わなくていいっすよ。
みなさんは、お客さんなんっすから。」
「じぃっとしてるほうが、気遣うてしんどいわ。
一宿一飯の恩て、言うやんか。
いや、一飯どころやないくらい、ご馳走になってるしね。」
グランにも言われて、フィオーリは、そんならまあ、とうなずいた。
「手伝いとか、そんなお気遣いはいらないっすけどね。
腹ごなしがてら、畑、見にいらっしゃいますか?
なんかね、すごいことになってるみたいなんで。」
すごいこと?
なんかそう言われると、気になってしまうよね。
「わーい。今日はお客さんも畑、行くの?」
フィオーリについてきた弟妹たちは嬉しそうに手をたたいた。
ドメニカは僕の背中に飛び乗ってきた。
「妖精さんも?
妖精さんも、行く?」
「あ、ああ、行くけど・・・
ごめん、羽、抑えたら、痛い・・・」
「あ。ごめん。」
すぐに退いてくれてよかった。
ドメニカって、やんちゃだけど、素直ないい子だとは、思う。
「僕ら、これから、オクサンを迎えに行くんですけど。
みなさんも一緒に来られますか?」
ルネがドメニカの首根っこを捕まえながらそう言った。
なんだか、すっかりこのふたりはいつもセットだ。
そういうわけで、僕らは、フィオーリの弟妹たちについて行くことになった。




