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完全に夜が明けるころ、ホビットたちはみんなそれぞれの家に帰っていった。
これって、ちょうど夕暮れに家に帰るみたいなもんなんだよね。
みんなこれから昼間は眠って、夜、また働くんだから。
フィオーリの家族たちも、手際よく片付けを済ませて、それぞれの部屋へと帰っていく。
「兄ちゃん、今日は僕らと一緒に寝ようよ。」
「兄ちゃんのベット、ちゃんといつでも寝られるようにしてあるんだよ?」
「いやおいら、まだあんまり眠くないんっすけど・・・」
「そんなこと言って朝更かししたら、また夜、辛いよ?」
・・・なんとも慣れないなあ、ここのホビットたちの言い方。
「大丈夫だよ。
ベットに入って目つぶって、三つ数えたら、夢のなかだ、って。」
弟妹にそんなことを言われて、フィオーリは苦笑している。
「・・・おいら、今日は、こっち行ってもいいっすかね?」
とうとう根負けしたのか、僕らにむかってそう尋ねてきた。
「もちろんですとも。
何の遠慮をしていらっしゃるのですか?」
シルワがにこにこと返す。
「久しぶりに会えた家族やんか。
今日は家族水入らずでゆっくりしておいで。」
グランもそう言った。
「わたくしたちも、今日は、夜、みなさんと一緒に起きるようにしませんか?」
シルワの意見には誰も反対しなかった。
「そうやね。ワタシもそのほうがええと思うてた。」
「じゃあ、今から少し眠っておくか。」
そんなに眠くはないんだけど。
ベットでゆっくり眠れるっていうこの状況はなかなか有難いものもある。
みんななんやかやで疲れもたまってるし。
これからお昼寝というのも、なかなかに魅力的だった。
「あ、じゃあ、今日はマリエ、こっち来る?」
昨日マリエが淋しそうだったのを思い出して、そう言ってみた。
せっかく部屋でゆっくりできるんだから、ひとりのほうが楽かと思ったんだけど。
そうでもなかったみたいだし。
フィオーリがいないなら、ベットひとつ、あくしね。
「よろしいのですか?」
マリエはぱっと嬉しそうな顔になってそう聞き返した。
グランとシルワは、ちょっと戸惑うように顔を見合わせたけど、すぐに頷いた。
「え?ええ・・・
聖女様さえよろしければ、わたくしたちは構わないのですが・・・」
「嬢ちゃんこそ、ええんかいな?
また旅の間は、嫌でも雑魚寝やのに。」
「わたくしは、みなさんとご一緒のほうがいいです!」
きらきらきら。
こんなきらきらな目をして言われたら、誰も断れないよね。
まあ、シルワもグランも根は善人だし、気遣いもそこそこはする人たちだから、構わないよね。
弟妹たちにフィオーリは手を引っ張られて行ってしまう。
みんな嬉しくて嬉しくてたまらないみたいだ。
そら、そうだよね。
オークに無理やり引き裂かれた家族が久しぶりに会えたんだから。
そんなフィオーリを見ていると、本当、よかったねって、言ってあげたくなるよ。
・・・・・・
だけど、なんだろう・・・
胸のなかで、ほんのちょっぴり、ひんやりとした風が吹くような、この感じ。
大事な仲間の幸せは嬉しいことなのに。
弟妹たちとはしゃぐフィオーリを、ほんの少しだけ遠く感じてしまう。
あのなかに自分は入って行けないんだと思ってしまう。
ふと、焚火の傍で夜明けにフィオーリが入れてくれたお茶の味を思い出した。




