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歓迎会はそれはそれは賑やかだった。
夕食?いや、彼らにとっては朝食か?のとき以上のホビットたちが集まっている。
部屋どころか、家のなかにも入りきれないくらいだ。
郷中からホビットが集まってきたんじゃないかと思うくらいの盛況だった。
僕らはフィオーリの家のなかで一番広い居間にしつらえられたテーブルに座らされた。
席に着いた途端、周囲をずらっとホビットたちに囲まれる。
フィオーリも今日は主賓ということで、僕らと一緒に座っていた。
飲み物が行き渡ったところで、郷の長老らしきお年寄りが立ち上がった。
わいわいがやがやしていたホビットたちが、一斉に、しん、と静かになる。
「郷の宝の帰還に乾杯!」
挨拶は短かった。
号令に合わせて、皆、一斉にカップを差し上げる。
かんぱーい、という唱和の声で、一瞬、家が揺れたかと思った。
フィオーリの弟妹たちは、にこにこしながら次々に料理を運んできてくれた。
しかしあれから一日でこれだけの料理を全部作ったんだろうか。
フィオーリのばあちゃんってすごいなって思う。
「兄ちゃん、はい。」
「おおっ、これこそばあちゃんの味!」
「兄ちゃん、こっちも。」
「いやあ、これ、ずっと食べたかったなあ。」
いちいちリアクションをしながら、フィオーリは一口ずつ食べていく。
僕らもご相伴に預かったけど、どれもなかなかな美味だ。
味にうるさいグランですらいちいち唸り声をあげるくらいだった。
「兄ちゃん、もっと食べて。」
「こっちは母ちゃんの料理だよ?」
弟妹たちは次々と料理を勧めてくる。
フィオーリはそれを一口ずつ食べていく。
こんなにおいしいのに、どうしてもっと食べないのかなって、最初は思ったけど。
その理由はすぐに分かった。
これだけのご馳走、一口ずつにしないと、とてもじゃないけど、全種類食べられないんだ。
お客にやってきたホビットたちも、みんな何やら一品ずつ持ち寄っているようだった。
「うちの自慢のパンなんだ。これ、一口食べておくれよ。」
「いやいや、うちのスープが先だよ。」
「果物の甘煮ならうちのが最高だ!」
左右から次々とお勧めの料理が差し出される。
それぞれの家の得意料理らしく、どれも絶品のおいしさだ。
「さすがっす、オネットさん。いやあ、おいしいっす。」
「スープはやっぱ、これでないとね。」
「これがずっと食べたかったんっすよ。」
なんとなく、フィオーリが気配り男なわけが分かった気がした。
お相伴に預かる僕らも、ご馳走の洪水に溺れそうだった。
普段からあまり食べないシルワは、早々にギブアップした。
マリエもにこにこしているけど、ちょっと苦しそうだ。
フィオーリは相変わらず義理堅く、どれも一口ずつ手をつけている。
しかし、グランは見事だった。
あのからだは全部みっしり食べ物が詰まるようにできているに違いない。
勧められるものをかたっぱしから、それも、じっくりと味わって食べている。
それから、これには何が入っているのか、とか、どういう調理法なのかとか、尋ねたりする。
みんなそれぞれ自慢の料理を尋ねられて嬉しいもんだから、懇切丁寧に説明する。
職人気質で不愛想、というのがドワーフの一般的な印象だけど。
グランの職人気質は、ここでは逆に大人気だった。
僕?
妖精族は、あまりたくさんの食べ物を必要としない。
実体を保つためには、少しは食べないといけないんだけど。
そうしないと、少しずつ、からだがすり減るからね。
ただ、食べられないのかと言うと、そんなことはない。
むしろ、際限なく、食べることだってできる。
でも、妖精ってのは、そんなに大食いの印象じゃないでしょ?
だからね、マリエに合わせるくらいで、ほどほどのところで笑っていた。




