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目が覚めたのは日暮れ前だった。
ざわざわという人の話し声がする。
地下にある家のなかは、そんなに音は響かないみたいだけど。
なにせ、人数が多いからね。
仲間たちはまだぐっすりと眠っていた。
お腹を出して寝ているフィオーリに、そっと上掛けをかけてから、部屋を出た。
廊下伝いに歩いて行くと、居間のような部屋があった。
にぎやかな声はここから聞こえていて、なかで何やらわいわいやっている。
開けっ放しの扉から、そっと中を覗いた。
色とりどりの帽子をかぶったホビットたちが、せっせせっせと部屋を飾り付けている。
きらきらした紙や木の実や野の草花なんかで、そこいらじゅうがにぎやかになっていた。
「あ!おはよう!」
一番幼く見えるホビットが、僕に気づいて声をかけた。
「おはよう!」
「おはよう!」
「おはようございます!」
次々にホビットたちが言う。
「眠れましたか?」
少しばかり年かさのホビットが近づいてきて、にこにこと尋ねた。
「うるさくしてすみません。
みんな、兄ちゃんが帰ってきたのが嬉しくて。」
もうひとり近づいてきて、そう言った。
すると、むこうにいたホビットたちも口々に言い出した。
「だって、嬉しいんだもん!」
「そうだよ。だって、兄ちゃんが帰ってきたんだ!」
「そこまで喜ぶことじゃないよ!」
「おいら、兄ちゃんは、絶対に帰ってくるって信じてた!」
「あたしも信じてた!」
「でもさ、やっぱり帰ってきたら嬉しいんだもん!」
「そうだよ、ずっと心配してたんだから!」
「なんてったって、あのオークに連れて行かれたんだよ!」
「どうなっちゃっうんだろうって、みんな言ってた!」
「母ちゃんは大丈夫だって言ってたよ!」
「そうだよ、兄ちゃんみたいないい子に、ひどいことなんて、たとえオークにだってできないって!」
「そんなこと、分かんないよ!」
「なんてったって、相手は、あの、オークなんだぞ!」
「だって、母ちゃんはそう言ったんだってば!」
みんな語尾に、!、がついている。
いつの間にやら喧嘩が始まったみたいで、一番幼いホビットが泣き始めた。
ああ、はいはい、とさっき最初に話しかけてきたホビットが割って入った。
「こら、サバト、妹に意地悪言うんじゃない。
ドメニカも、そのくらいで泣くな。」
うん?と僕は思い当たった。
ルネマルテメルコジョヴェヴェネルサバトドメニカ
ああ、あれって、この子どもたちの名前か。
「君は、ルネ・・・マ・・・」
しまった。
どこで切るのか分からない。
けど、さっきのホビットは、にこっと笑ってうなずいた。
「すみません。自己紹介もしてなくて。
僕は、ルネ。
あれがマルテで、そこにいるのがメルコ。
ジョヴェにヴェネルに・・・。
さっき喧嘩してたのが、サバトとドメニカです。」
なるほど。そう切るのね?
「うん。どうも有難う。
僕はミールム。」
とりあえず、笑って返したら、わらわらわらと部屋中からホビットたちが寄ってきた。
叔父さん叔母さん、いとこに、近所のホビットたち。
それが、一斉に自己紹介を始めたもんだから、とてもじゃないけど、覚えきれない。
まあ・・・、いっか。




