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ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第二章 ジャルジュ解放戦線
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第五項 化物

オユノクに着いた私達を出迎えたのは剣先と槍の穂だった。

彼等は私達が着陸するとすぐに武器を持って周りをズラッと囲んで此方をひたすら睨み続けている。


「ねぇリアン。私達何したっけ?」


「いや、何もしてない。強いて言うならルージャのお腹がなっただけ」


「全く関係ないよね?」


どうしようも無いのでその場で欠伸をして翼を引っ込める。

周りからはどよめきが上がり、更に武器の数が増えた。


「書簡があれば言い訳に使えたんだけど」


「無いものはしょうがないじゃん!」


「原因は黙って」


「はい……」


ルージャが退屈に耐えかねて欠伸をすると槍が1本此方に飛んできた。

私は軽々とそれをキャッチして2つにへし折り、テナに手渡す。

テナは2つに分かれた棒を叩きながらやーやー、と声を上げた。


「「ギャァァァァア!!」」


途端に私達を囲んでいた人達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

辺りは閑散としてしまい、家の中からは子供の泣く声が聞こえてくる。

感謝の意を込めて唖然としているテナの頭を撫でるとテナは涙目で此方を見た。


「何か嬉しくないんだけど……」


「泣く子も黙る威嚇だね」


「泣いていい?」


「さっき気が済むまで泣いてたからダメ」


そうこうしている内に杖をついた老人が此方に歩いてきた。

老人は此方を見ると膝をついて深々と礼をする。


「よくぞ来られた、ウォーリンデのお方。私はこの村の村長、ムジュンですじゃ。して、此度はオユノクに如何なる御用件ですかな?」


「人狩りを探してるから情報が欲しい」


人狩りという言葉にピクリと反応を示し、村長は顔を上げた。


「ウォーリンデの村で何かありましたな?」


「話すと少し長くなる」


「お話しくだされ」


それから10分程かけて村であったことを話した。

村が燃えていた事。

沢山の死体が転がっていた事。

お父さんが最期に話してくれた事。


ちなみにルージャは話し始めると同時に寝ていた。

後で叱っておかないと。


話し終わり、最後にお父さんから貰ったコインを見せると村長は目を丸くして驚いた。


「これは……パルバールの証」


「パルバール?」


「大陸最大の裏組織ですじゃ。代替わりした後も革命軍と繋がりがあったとは……」


ふーむと考え込む村長。

対する私は呆れ顔だ。

お父さん、革命軍で何をやってたんだろ?


考え事が終わったのか村長は厳しい表情の顔を上げた。


「人狩りを探すのなら此処から南にあるマゴヨントルに行けば手掛かりがありましょう」


「ありがと。それなら早速向かう」


「お待ちなさい。ジャルジュのお嬢さん貴女は此処に残りなさい」


「えっ!?」


「フードを被っていても尻尾でモゾモゾ動けば誰でも気付きますじゃ」


見ればテナのローブは背中の部分がウネウネと動き回り何とも奇妙な事になっていた。

テナは慌てて尻尾を押さえると村長を睨む。


「で、でも何でよ!私だって父さんと母さんを探さなきゃいけないの!」


テナが噛みつくように言い返すと村長は溜め息を吐いてテナを見た。


「その様子ですとあなた方はマタロフの鐘を知りませんな?」


「マタロフの鐘?」


村長は忌々しいというように眉間に皺を寄せて話し始めた。


「対ジャルジュの切り札として作られた物ですじゃ。ジャルジュは聞いただけでその場に倒れ、動けなくなるおぞましい代物。かく言う私も昔使われましてな」


そう言うと村長は服の中に隠していた尻尾を取り出して揺らして見せる。

ギョッとした私達を見ると村長はホッホッホッと楽しげに笑った。


「隠すならばもっと上手く隠しなされ。それができるまではこの村で修行なされよ」


「うぅ……」


テナは納得してしまったのか俯いている。

村長は哀れむような目でテナを見ていたが、やがて私と向き合った。


「貴女はどうなされますかな?見たところ武器はそのナイフだけでしょう?」


「ハズレ」


笑いながら背中から翼を、腕には鱗と鋭い鉤爪を出すと、村長は口をパクパクさせて此方を見ている。


「私、ハーフドラゴンになったみたいだから」


ニコッと笑いかけると村長はそのまま気絶した。

悪気は無かったんだけどね。


「ねぇ、テナ」


「何よ?」


「これからどうしようか?」


「うーん」


顎に手を当ててテナは思案している。

テナも決めかねてるんだろうね。

私としては着いてきてくれると楽しいんだけど……。


「私は着いてきて欲―――」


「村長っ!!」


私の声を遮るように野太い声が響いた途端、武装した男達が村長を後方に運び、私達を取り囲んだ。


「あの子を助けろ!」


私が声に気を取られた瞬間、テナは別の男によってルージャから下ろされて後方へと連れ去られた。


「私の連れを返して」


「連れだと?どうせ喰うつもりだったんだろ?化物め!」


「化物ねえ……」


人を見た目で判断するなって言われなかったのかな?

呆れて欠伸をすると後方からテナの叫び声が響いてくる。


「リアンは化物じゃない!やめてよ!」


「嬢ちゃんもう大丈夫だ。喰われなくて済むぞ」


テナを助け出した(つもりの)男は必死にテナを落ち着かせとしている。

……どうやら私が悪役らしい。

ならやることは一つだね。


「分かった、その子は諦める」


「り、リアン?何言って―――」


テナの声を遮るように男は再び剣を構え、目を剥いた。


「本性を現しやがったな!!出ていけ!化物!」


「はいはい。ほら起きて、ルージャ」


ルージャを叩き起こすと彼は目をパチパチさせてからクワーッと大きな欠伸をした。

それだけで彼等は数歩後ろに後退する。


クスクス笑いながら私とルージャは一気に空に舞い上がって、テナに別れを告げた。


けど、やっぱり名残惜しいので空で旋回していると地上でテナが泣いているのが目に映った。

ゴメンね、テナ。

でもこれでテナは村に受け入れてもらえるよ?


「リアン!」


テナは泣きながら私の名前を叫ぶと持っていた荷物を此方に投げてくれた。

急降下してそれをキャッチすると私はルージャと一緒に南へと飛び去る。

またね、テナ。

いつか迎えに来るよ。


ルージャに追い付くと何があったの?と聞かれたけど、私は何も言わずに飛び続ける。


別れる時、私は泣けなかった。

テナはあれだけ泣いてたのに。

そんな自分が嫌になった。

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