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ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第一章 種間戦争
36/52

第三十四項 アルロート攻防戦 3節

どうも。新参猫です。

週末には第一章が完結すると思います。

長くならないと良いな……。

少し考えると思い当たる節があった。

不思議な力なら此方も使える。


「ルナ!呪詛でなんとかできないか?」


「私が知ってる呪詛はこの間使ったものだけよ」


「なら、あの爺さんに聞くしかないか……」


そう言って遠くで光の壁を張り続けているバエラを指差す。

皆一様に頷いて賛同した。


「よし、ならルナは一端戦場から離脱してからバエラと合流してくれ」


「分かったわ」


ルナは戦場を離れ、広場の方に向かって走っていく。

これでルナはマークされずにすむ筈だ。

残る俺達のやる事と言えば……。


「 俺達3人は時間稼ぎだ。リューク、魔術を防げるか? 」


怪人《リューク》はコクリと頷いて肯定する。

ありがたい。

正直な話、俺とアジャスは魔術に対して丸腰同然だからな。


「なら、俺ら二人のフォローを頼む。

ほら構えろ!奴等も殺る気だ!」


見れば敵兵が巨大な盾を構え隊列を組んで此方に迫ってきている。

隊列の規模から考えて半数を俺らのの対応に割いたみたいだな。


突如、隊列の後方から岩や矢の代わりに氷柱や火の塊など、大量の魔術が放たれた。

リュークは翼を展開して俺達二人を覆い、魔術を防ぐ。

全ての魔術を防ぎきると翼をバッと開き、彼は敵の背後へと飛んでいった。

どうやら敵を挟撃にするつもりらしい。

当初と予定が違うが、悪くない作戦だ。


「アジャス!行くぞ!」


「おう!分かったぜ大将!」


通常、隊列を崩すのは容易ではない。

だが、リュークが飛んだことによって意識が逸れている兵士が数人いる。

そいつらが狙い目だ!


僅かに上を向いている兵士に大剣を投げると、

身軽な状態で剣を構える。

そして、敢えてゆっくりと隊列に向かって歩みを進めた。

対してアジャスは大剣の後を追うようにして兵士に向かってすさまじい勢いで走っていく。


そして大剣を投げ付けられた兵士は轟音を立てて飛んで来たそれを受けきれず、勢いに負けて後ろに倒れた。


「アジャス、今だっ!」


「おうよ!」


その隙を逃さずアジャスは隊列の背後に入り込み、後ろから順々に兵士の首を落としていく。

慌ててアジャスに対応しようと後ろを向いた兵士は俺の剣の餌食になり、赤い水を噴き出す噴水に成り果てた。


隊列はグチャグチャになり、敵兵はパニックに陥っている。

こうなれば俺達の独壇場だ。

アジャスと顔を見合せニヤリと笑う。


大剣を拾い上げて鞘に納め、右手に持った剣を握り直すと、アジャスと二人で次々と敵を切り裂いていった。

戦場にはアジャスの高笑いと敵兵の悲鳴が木霊し続ける。

敵兵の人数が9人になったところでアジャスを下がらせ、剣の切っ先を敵兵に向けた。


「まだやるか?」


薄ら笑いを浮かべて聞くと、敵将はギリギリと歯軋りをして悔しがった。


「後方の支援部隊に合流するぞ!」


敵将が言い終わらない内に兵士達は我先にと逃げて行く。

だが、逃げた先で彼等は絶望することになる。


彼等が合流する筈だった部隊は怪人によって壊滅し、無惨にもその屍を晒していた。

兵士が逃げてきたのに気が付くと怪人は行く手を阻むように異様に長い両手を広げ、不気味な笑みを浮かべる。

幼子だけでなく大人でもトラウマになりかねない光景だ。

実際、何人かの兵士は恐怖のあまりその場に座り込んでしまっている。


「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


怯える兵士を見て怪人は高笑いを上げ、更に兵士達を驚かせる。

ひとしきり笑った後、彼は口から黒い煙を吐き出して兵士に吹き掛けた。

必死に振り払おうと手を振り回すが、煙は彼等を覆い離れようとしない。

不思議なことに俺とアジャスには煙はくっついてこなかった。


兵士達は暫くの間もがいていたが、やがて動かなくなると煙は段々と小さくなっていく。

そして煙が消えた後には兵士の痕跡は何も残っていない。

恐ろしい魔術だな。

思わずアジャスの方を向くと彼は詰まらなそうに

首を取り損ねた、と拗ねていた。

相変わらず趣味が悪い。


他に敵がいないか辺りを見回した後、安心したのか怪人は息を吐いて此方を向く。

だが、力が抜けたのか膝をつき、その場に倒れ伏した。

「リューク!?」

急いで駆け寄ると怪人は黒い煙となって霧散し、後にはジャルジュの姿をしたリュークが残される。

抱き起こして肩を叩くと疲れただけだ、と彼は弱々しい声で言った。


「良くやってくれた、ノーグに見張り番をさせるから安心して休め」


リュークは済まない、と言って目を閉じる。

そしてすぐにスースー寝息を立て始めた。

角笛を吹いてノーグを呼び寄せ、見張り番を頼む。

すると、ノーグはグルルルと唸ってリュークの隣に伏せた。

どうやら引き受けてくれたらしい。

ホッと息をつき、アジャスを見る。

彼は新しい獲物を狩りたいのか、バエラ達が戦っている様子を飽きることなく眺めていた。

よくもまあ、そんなに戦えるな。


「さて、残りも始末するぞ。行けるか?アジャス」


「当たり前だぜ!大将!」


待ってましたと言わんばかりに目を輝かせ、アジャスは走り出した。

しかし、5m程走った所でうなだれて此方に引き返してくる。


「どうした?」


「ルナさんが危ないからあっち行けって言ってきたんだよ」


肩を落とし、アジャスはその場に体育座りをして溜め息を吐いた。

ピクニックの日に雨が降った時のガキとかなり似ている。

絶対本人には言えないが。


しかし、アジャスを追い払うということは、呪詛の準備が整ったらしい。

それなら高みの見物とさせてもらうか。


ルナを見ると丁度此方を見ていたのか、目が合った。

彼女はウインクをすると、片手を挙げて呪詛の詠唱を始める。


「星よ願わくば聞きたまえ

自惚れし英雄の顛末を

怒れし愚者の鉄槌を

我が身を通じて伝えたまえ」


詠唱を終えると同時にルナは手を振り下ろした。

するとドーンッという轟音と共に見えない何かが敵に振り下ろされる。

衝撃で土埃が舞い、周りの物が何も見えなくなった。


やがて、土煙が晴れるとペチャンコになった敵兵が辺り一面に広がっているのが視界に飛び込んでくる。

さながら赤い絨毯と言った所だ。

ここまで行くと壮観だな。


バエラはユルナスの目を両手で覆い、此方を向いて場所を変えよう、と目で訴えてきた。

アジャスは相変わらず首が取れなかったと喚いている。

軽く頭を叩いてアジャスを落ち着かせた後、ルナとバエラに広場に向かうことを身ぶり手振りで伝える。

二人とも頷いて此方にゆっくりと進み始めた。

寝ているリュークを肩に担ぎ、ノーグに向き合う。


「好きなだけ喰って来ていいぞ。ただし、綺麗に喰えよ?」


ノーグは嬉しそうにグゥと鳴いて、赤い絨毯へと走っていった。

ルナは顔をしかめてノーグを見送っている。

仕方ないだろ?

ユルナスにトラウマを植え付けるよりはましだ。



ЖЖЖ



広場に着くとバエラはユルナスに目隠しするのを止めた。

ユルナスはサプライズでもあると思っていたのか周りをキョロキョロと見回し、やがて肩を落とす。

知らぬが仏とはこの事だ。

あの光景はトラウマ物だからな?

バエラに感謝してやってくれ。


全員が落ち着くと、バエラは穏やかな目付きで全員を見回しながらゆっくりと話し始めた。


「救援感謝するよ。お陰でマイソーカを守れた」


「当然の事をしただけだ。それより死人は出てないだろうな?」


「ああ、襲撃直後にユルナス嬢と町長殿が第一部隊の兵舎に避難させたからね。死人はおろか怪我人すら居ないのだよ」


「それならいい。良くやってくれたな、

ユルナス、町長」


ユルナスと町長に頭を下げると、二人は慌てて頭を持ち上げてそれを阻止してきた。

腰と首が90゜に曲がり、変な生き物のような体勢になる。

地味に辛い姿勢だし、妙にコミカルなのは気のせいか?

案の定バエラは思わず吹き出し、アジャスはゲラゲラ腹を抱えて笑っている。

直ぐに姿勢を元に戻して二人を殴るとユルナスが肩を叩いてきた。

話を進めようと言うことらしい。


済まない、と言ってユルナスに向き合うと彼女はニッコリと笑って話し始めた。


「別に大したことはしてないよ」


「そうですぞ。久々の戦いで体が思うように動きませんでしたからな」


「いや、二人ともいい動きだった。特にユルナス、お前あんなに強かったのか?」


ユルナスは満更でもないようで、はにかんで俯いた。


「私が使える魔術は身体能力の強化だけだからね。これくらい出来ないと」


バエラが目を細めて彼女の頭を撫でると、

ユルナスはえへへ、と嬉しそうに頬を緩ませた。

天使降臨。

その場にいた男は全員ユルナスの笑顔を見てにやけた。

その様子を見てルナは不機嫌そうに咳払いを一つすると話を切り出した。


「それで?これからどうするのかしら?」


「すぐにアルロートに戻る。ただ、ルナとリュークはマイソーカに残ってくれ」


そう言って眠ったままのリュークをルナに渡すと、

彼女は魔腕を使って軽々とリュークを受け取った。


「分かったわ」


彼女は頷くと目を伏せてリュークの髪を優しく撫でる。

それを見てユルナスはキランッと目を妖しく光らせていた。

何を企んでるんだ?

まあ、特に問題はないだろ。


「バエラはノーグが食べ残すと思われるアレの処理を頼む」


「ふむ、確かに承った」


素直な返事からは予想が出来ないような、とても嫌そうな顔をしてバエラは頷いた。

頷くあたり本当に人がいいよな。

何かこの師弟には後始末でお世話になる気がする。

今度、お礼しないとな……。


「さて、出発の準備だ!アジャス、ルージャを呼んどけ」


「分かったぜ大将!」


アジャスはピューイと指笛を鳴らし、ルージャを呼び寄せると直ぐにその背に乗った。

昔から家族であったかのような姿に若干の妬みを抱きつつ俺は角笛を鳴らす。

まあ、ノーグは格好良く登場してくれるからな。

別に羨ましくはない。

だが、期待を見事に裏切って、ノーグはノソノソと不機嫌そうに歩いて来た。

御馳走をお預けにされたのが不服らしい。

気持ちは分かるが、そんなに人間って旨いのか?

首の横を撫でながら悪かった、と謝る。

ノーグはグゥと小さく返事をして体を屈めた。


ノーグに飛び乗ると、いつものを頼むと言いたげにノーグはグルルルと鳴く。


「行くぞ!ノーグ!」


「グラァァァァア!!」


大地を力強く蹴ると、ノーグは空に飛び上がった。

今度こそアルロートに殴り込めるな。

自然と口元に笑みが浮かび、気分が高揚した。

こんな戦争、早々に終わらせてやる。

アンセル「ノムル?しくじったんだって?」


ノムル「は、はい。シュドム殿に助けて頂きました!」


アンセル「まったく、お説教は戦いのあとにするから、一つ頼まれてくれない?」


ノムル「は!何なりと」


アンセル「フォルスの軍に潜り込んで情報を抜き取ってきて。成果によってはお説教は無し」


ノムル「分かりました!」


アンセル「お願いしたよ」

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