第三十三項 アルロート攻防戦 2節
どうも。新参猫です。
新しく黒いパーカーを買いました。
フードを被っていたら、アサシンか!
とつっこまれました。
マイソーカに着くとあちこちから火の手が上がっていた。
幸い石造りの建物が多く、焼け落ちているものは数えるほどしかない。
門は閉められており、民が逃げられた様子はない。
だが、上空から確認した限り何処にも彼らの姿は見受けられないな。
既に皆殺しになったか、何処かに隠れているか、
二つに一つだろ。
出来れば後者であって欲しい。
急いでノーグを広場に降りさせ、武器を構える。
するといつもの黒猫が走り寄ってきた。
「ルナ!どうなってる!民はどうした?敵は何処だ?」
思わず黒猫を抱き上げて前後にガクガクと揺さぶる。
すると黒猫は何も言わずに顔を引っ掻いてきた。
驚いて手を離すと黒猫は華麗に着地してその場に座り、こちらを見上げる。
『落ち着いて頂戴。住人は第一部隊の兵舎に避難させてあるわ。入口は町長とユルナス、あとバエラの3人が守ってくれているの、私達がやるべきことは一刻も早く全ての襲撃者を倒すことよ』
「済まない、それで敵は何処にいるか分かるか?」
『ええ、全員揃いも揃って第一部隊の兵舎入口に詰めかけているわ』
折角、複数人いるのに1ヶ所に集まってるのか?
余程戦い慣れしていないと見た。
だがバエラに手練れと言わせるのなら、そこそこ実力は結構あるのだろう。
「間抜けもいいとこだ。すぐにでも始末するぞ!」
少し遅れてルージャが広場に着陸した。
アジャスはルージャから降りると武器を鞘から引き抜いて辺りを見回す。
「敵は第一部隊の兵舎にいるらしい。今すぐ向かうぞ!」
「おう!分かったぜ大将!」
威勢の良いアジャスを先頭に広場から走り出す。
3人共、もう少し耐えてくれ。
ЖЖЖ
兵舎前では町長とユルナス、そしてバエラが敵を食い止めていた。
バエラは飛んで来る魔術を青い光の壁で防ぐことに専念しており、他の二人が反撃をしている。
町長は元傭兵なだけあってその膨れ上がった体からは想像ができないほど華麗なナイフ捌きで敵を圧倒している。
相手が盗賊なら瞬く間に屍を山を築いただろう。
しかし相手は重装備の兵士だ、残念ながら斬撃は鎧に弾かれてしまっている。
ユルナスは拳を構えて敵を待ち、近付いてきた敵を張り手で吹っ飛ばしていた。
だが、所詮打撃でしかない。
鈍器を使ったなら別だが鎧は打撃に強い、吹っ飛ばされた敵はすぐに起き上がり、再び突撃するか魔術を放つかして攻撃を再開してしまう。
今はどうにかなっているが、このまま戦い続ければ確実に押し切られる。
何とかして助けてやらないと……。
「ルナ!お前の魔腕で魔法は防げるか?」
武器を構えながら黒猫に聞くと、彼女は人に姿を変えて頷いた。
「ええ、可能よ。でも何故かしら?」
「俺達は魔法に対して非力だ。たが、そこさえ補えれば勝つ見込みが上がる!」
「分かったわ、主役は譲ってあげる」
クスクス笑いながらルナは背中から4本の魔腕を出した。
相変わらず手の甲についた目がギョロギョロと動き、辺りを見回している。
不気味なことこの上ないな。
おい、そこの腕!こっち見んな!
ルナは魔腕の手のひらを握ったり開いたりきて一本ずつ丁寧に調子を確かめ、それが終わるとヘニャッと笑って此方を見た。
「いつでもどうぞ?」
「アジャス、準備はいいか?」
「待ちくたびれたぜ、大将!」
アジャスは獲物を前に目をギラギラ光らせ、
どいつを狩るか品定めをしている。
完全に人斬りモードだ。
「さてと、行くぞ!」
合図と同時にアジャスは駆け出し、俺は大剣を投げた。
大剣は魔術を放とうとしていた敵を薪割りのように縦に切り裂くと地面に刺さる。
隣で戦っていた敵は驚いて此方を見て、何かを言おうと口を開けた。
だが時既に遅く、彼の目の前にはアジャスが近付いて剣を構えている。
「一個目!」
刹那、アジャスの剣が振り抜かれ敵は何も言えないまま下顎から上を切り取られ絶命した。
「しくじったぁぁぁぁあ!!」
上手く首を落とせず、アジャスは叫び声を上げた。
意味を理解できず、敵兵はお互いに顔を見合せ、戸惑っている。
「散開っ!」
敵の隊長らしき人物が鋭く命令を下すと
アジャスを囲むように散開し、敵兵は彼の様子を見るのに専念した。
アジャスはすぐさま敵に飛び掛かりその首を落としていく。
だが、4人目に仕掛けた攻撃が盾によって弾かれた。
敵は一瞬できた隙につけこみ、突進してアジャスを地面に叩きつける。
「仕掛けて早々ピンチかよ!」
アジャスを助けようと遅れて駆け出す。
だが敵の魔術によって目の前の地面が隆起し、壁を造り上げて道を塞いだ。
しかし所詮は土壁、簡単に剣で切り裂いて道を作り、再びアジャスのもとに駆け出す。
しかし敵はそれを狙っていたらしく魔術によって作られた火の塊が此方に向かって飛んで来た。
不味い、完全に読まれてた……。
「伏せなさい!」
ルナの声を聞いて反射的に伏せると、頭上を2本の魔腕が通過した。
ルナは2本の魔腕で火を受け止めそのまま力を込め、それを押し潰す。
何とか起き上がるとルナが隣に走り寄って俺の背中を叩いてきた。
「まったく、簡単な策に引っ掛からないで頂戴」
「悪い、でも助かった。ってアジャスは!?」
慌ててアジャスの方を見ると、いつの間にか現れた怪人が敵の囲いを崩してアジャスを助けていた。
安心して溜め息をつくと今度は氷柱が俺の頭を狙って放たれる。
ルナは蝿を払うように魔腕で氷柱を横に弾き飛ばし、不服そうに此方をジト目で見上げた。
「油断しないでくれるかしら?此処は戦場よ?」
「済まない……」
これで貸し2ね、とルナは呟きクスクスと楽しげに笑う。
何故か凄く嫌な予感がする。
後で何を要求されるか分かったもんじゃないぞ?
己の身を案じて考え事をしているとアジャスとリュークが駆け寄ってきた。
ありがたいことにアジャスは俺の大剣を持って走っている。
大剣を俺に手渡すと彼は苦虫を噛み潰したような顔をしてフォルスの兵士達をを指差した。
「大将どうする?あいつら中々手練れだぞ」
「みたいだな。戦ってみて何か気がついたか?」
アジャスは顎に手を当てて考え、やがて顔を上げて話し始めた。
「……訓練は散々してきたみたいだが精々その程度だ。実践は殆ど積んでねえ。それでもあの部隊は俺といい勝負だと思うぜ?」
勿体無いと言わんばかりにアジャスは首を横に振る。
「お前にそこまで言わせるんだとすると、中々面倒な奴等だな」
アジャスと実力が同じくらいの部隊か。
確かに中々できるみたいだな。
さて、どうしたものか。
力技は通用しない、つまり正面突撃は無謀だ。
だとすると搦め手か……。
ザック「レティアさん!敵が進軍してきたぞ!」
レティア「即刻応戦してください!」
ザック「よしきた!お前ら覚悟はできたか!?」
一同「おぉぉぉぉお!!」
ザック「行くぞっ!大将への餞にしてやれ!」
レティア「……まだ死んでませんよ?」




