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ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第一章 種間戦争
34/52

第三十二項 アルロート攻防戦 1節

どうも。新参猫です。

一気に寒くなりました。

1ダース買ったコーラの処理に困ってます。

翌朝、まだ日が昇り始めた頃。

鳥すら起きていない為、森は静けさに包まれている。

空気は冷たく澄んでいて、睡魔と戦っている兵士達の身を引き締めさせた。


一行は音を立てないように静かに進む。

これだけ静かな行軍は始めてだ。

やがて待機場所に着くと、手を挙げて停止の合図を出す。

皆ピクリと歩みを止め、武器を構えた。

ザックに角笛を吹くように指示を出すと、

彼は頷いて角笛を鳴らす。


俺が指揮するのは獣の旅団全てとガナンだ。

皆息を潜めて合図を待っている。

いつもは笑って馬鹿話をしながら待機しているが、

今日ばかりは皆真剣な顔で神妙にしていた。


ザックに角笛を鳴らさせてから5分程経った頃、

ブオーッと低い音が辺りに鳴り響いた。

この音はワガリスの隊の音だ。

それを起点に他の隊の角笛が立て続けに鳴り響く。

最後の角笛が鳴り終えると、隣にいるレティアが此方を見て頷いた。

今ので全部らしい。


ガナンに合図を出すために剣と剣をぶつけて金属音を出す。

辺りにはカーンカーンとけたたましい音が響き渡った。

彼は頷くと、結界に向かってゆっくりと歩き出した。


結界の前に辿り着くと、彼はおもむろに柏手を一つ打つ。

パンッと乾いた音が盛りに消えた直後。

バキンッと鎖が引き千切れたような音が聞こえてきた。

改めて結界の位置を手で確かめ、それを見つけると満足気にガナンはニヤリと笑う。

やがて、ゆっくりと拳を振り上げ力を込めた。

すると拳は青い光を帯び、やがて星のように輝いて辺りを照らし上げる。

ガナンは振り返って今か今かと合図を心待ちにしていようだ。


「壊せっ!」


コクリと頷く彼の目は幼子の様に輝いて見えた。

結界の方に向き直り、満面の笑みを浮かべる。


「ごめんくださいっ!!」


ふざけた掛け声と共に拳を結界に叩きつけるとピシッと何かがひび割れた音が僅かに聞こえた。

次の瞬間、耳をつんざくような破砕音が辺りに響き渡る。

バリーンッというその音はまるで鏑矢の様に戦場に鳴り響き、兵士達はそれに呼応するように雄叫びをあげた。



ЖЖЖ



5分経たない内にアルロートの城門が開け放たれる。

読み通りならここで防衛軍が迎撃に来る筈だ。


「総員っ、構えろ!」


腹の底から声を張り上げ、戦場に己の声を響かせる。

兵士達は返事の代わりに武器を構えるガチャンという音で答えた。


やがてアルロートからフォルスが走り出てきた。

読み通りだ、と呟いて俺はニヤリと笑う。

しかし、どうも変だ。

出てきたフォルスは誰一人として鎧を着けていない。

それどころか手を挙げて何かを叫んでいる。

それは彼等が近付くにつれてはっきりと聞こえるようになった。


「助けてくれ!投降する!」


唖然としてレティアを見ると、彼女もまた困った顔をして此方を見ていた。

仕方ないので兵士を掻き分け、前線に出る。


そして最初にたどり着いた男の肩をつかんで落ち着かせた。


「お前の回答に逃げてきたフォルスの命運が掛かってるからな?それを肝に命じて質問に答えろ。いいな?」


「は、はい!もちろんです!」


「何故、投降してきた?」


「アルロートにいたら殺されるんです!毎日毎日一人づつ生け贄にされるんです!」


「生け贄だと?何のだ?」


「分かりません。エッカは戦争を終わらせる者だと言っていますが1度も見たことはないです」


「そうか。何で今になって投降してきたんだ?」


「結界があったんですよ!?出られるわけが無いでしょう!」


「なら、今まで侵攻してきたフォルスはどうやってアルロートを出たんだ?」


「エッカの魔術です!彼は人や者を転移させることができますから」


嘘をついている様子はない。

だが、信用するには値しない。

さて、どうしたものか……。

次の瞬間、会話していたフォルスに緑色に輝く蔦が絡み付いた。


「ひぃ!助けてください!」


それが彼の遺言だった。

蔦は彼の肌に棘を突き刺すと何かを吸い取って消えていく。

他の場所でも悲鳴が上がり、次々と民が狩られていった。

どうやら裏切り者として追われてるみたいだな。

仕方ない助ける。


「フォルスの民を守れ!後方に匿ってやれ!」


フォルスの民は礼を言って兵士達の間を抜けて戦場を離れた。

それと入れ替わるようにしてフォルスの軍勢が前線に現れる。


さらに将達が一歩前に出て、手を振り上げた。

どうやらいつでも魔術を使える状態になったらしい。

その内、リーダーらしき男が一歩前に進み出て此方を睨み付けた。

いかにも傲慢そうな面構えをしてるな。

見ているだけで腹が立つ。


「民を返せ、卑しきサピエ!」


「は、生け贄にするためにだろ?お断りだ!」


「生け贄とは人聞きの悪い。

次世代への礎となるのだよ」


「結局殺すんだろ?なら同じことだ」


ならば仕方ない、と呟いて将は周りに合図を出そうと息を吸った。

その瞬間。


「今だ!やって!」


アンセルの声がすると樹上から降りてきた第三部隊の兵士達が次々とフォルスの将に襲いかかった。

あちこちで悲鳴が上がり、将が討ち取られていく。


一つ予想外だったのは自分の目の前で兵士が将の始末に失敗した事だ。

傲慢そうな奴は樹上からの攻撃を軽々と避け、魔術を使って兵士を捕らえた。


「伏せろっ!」


咄嗟に叫びながら大剣を投げつける。

兵士はその場にベターッと伏せて難を逃れたが、将は兵士に集中しすぎたのか腹から上が斜めに切断されて吹き飛んだ。

そのままの勢いで飛んだ大剣は4本の樹を斬り倒した後に地面に突き刺さり、フォルスの軍を威嚇する。


大剣を拾いに行きがてら第三部隊の兵士を立たせると彼は申し訳ない、と深く頭を下げた。


「気にするな、とは言わねえよ。ま、生きててよかったな。次はもっと上手くやれよ?」


大剣を引き抜き、ニヤッと笑う。

彼は再三頭を下げてから後方に走り去った。

さて、問題はフォルスの雑兵諸君だ。

ビビってはいるが、いまいちインパクトに欠けたみたいだな。

何かいいものはないか……。

うーむ。あ!あれがあったな。

丁度いい、あいつらも静かにするのに疲れただろ。

くるりと第一部隊に向き直り、息を思いっきり吸い込む。

そして、腹の底から力の限り叫んだ。


「お前らよく聞け!この中にまともな経歴を持ってるやつはいないな?」


最初の獣の旅団にいた連中はニヤリと笑い、息を吸い込んで叫ぶ準備をする。

そして体を剃らせて力の限り叫び返した。


「「そうさ!大将!俺達は人間の屑さ」」


相変わらず言っていることは自虐的だが兵士は皆晴れ晴れとした表情をしている。

新しく入ってきた奴等もつられて声を張り上げていた。


「そうだその通りだ!だが屑にしか出来ないことがあるよな!」


「「もちろんだ大将!」」


「普通の奴には出来ない、お前らが出来ること。それはなんだ!」


一瞬沈黙が辺りを包む。

だが、その直後各々が右手に持った武器を空に掲げて叫んだ。


「「人殺しだぁぁぁあ!!」」


大地を震わす叫び声に俺は満足して笑うと、フォルスの軍と向き合う。

さあどうする?と首を傾げ、肩をすくめると、

フォルスの軍はガチャガチャ音を立てて後退した。

上手くいったな。

これで後は俺達が殴り込めば勝てる!

角笛を鳴らしてノーグを呼び寄せると、

一緒にルージャも飛んで来た。

更なる脅威にフォルスからは悲鳴が上がる。


と、その時煙と共にバエラが現れた。

何のようだ、と聞く間もなく切迫した顔で肩を掴んでくる。


「よく聞きなさい。マイソーカに奇襲をかけられた。数はおよそ100、全員手練れだ。

すぐにこの場をレティアに任せてアジャスを連れてマイソーカに戻りなさい。

ルナとリュークには既に戻るよう伝えてある」


「分かった」


「ならばいい。マイソーカで会おう」


そう言ってバエラは指をパチンッと鳴らして消えてしまった。

状況から判断すると、恐らくフォルスの近衛兵士団がエッカの力を使って奇襲をかけたんだろう。

一刻の猶予もない。


「レティア!この場の指揮をお前に託す!」


「何か考えあっての事ですね?」


「勿論だ!」


「了解です。確かに引き受けました」


御武運を、と言ってレティアは剣を高らかに掲げる。

心の中で感謝しつつノーグに飛び乗った。


「アジャス、早くしてくれ!」


「済まねえ大将」


隣でルージャに乗ろうとしているアジャスに状況を小声で説明してすぐに空へ舞い上がった。

後から着いてくるのを確認してノーグにしっかりと掴まる。

「ノーグ!マイソーカに行ってくれ!俺が耐えられる最高速度で頼む!」


「グラァァァァア!!」


雄叫びを一つ上げるとノーグはグンッと加速した。

頼む、間に合ってくれ。

ザック「やるじゃねえか!アンセル」


アンセル「これくらい、当たり前だよ」


ザック「ガハハハ、言うじゃねえか」


アンセル「3ヶ月間みっちり訓練したからね」


ザック「訓練って、どんなのだ?」


アンセル「木に登って隠れんぼ。見つかったらご飯抜き」


ザック「……鬼は誰だ?」


アンセル「僕だけど?」


ザック「……ひもじい思いをしてんだろうな」

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