第三十一項 作戦前夜
どうも。新参猫です。
長い一章もようやく終わりが見えてきました。
あれ?何かデジャブ……。
召集に応じ、大陸中の兵士がマイソーカに集結した。
ソルネアス防衛部隊長、ワガリス。
連合国軍大将、ゴンド。
元アルロート防衛軍ジャルジュ部隊長、リューク。
王国近衛兵団マイソーカ駐在部隊―――通称獣の旅団、団長シュドム。
彼らによって数百年に渡って行われてきた戦争が幕を閉じようとしている。
これが吉と出るか凶と出るか、それは私には分からない。
だが、後の人々は彼等をこう呼ぶだろう。
種間戦争を終わらせた英雄、と。
―――十二代目オグマの手記
3ヶ月後―――。
季節は移ろい、マイソーカ付近の森は赤く色付いていた。
少し前までは暑かったにも関わらず、今は肌寒くなっている。
森では冬に備えて蓄えをしようと動物たちが世話しなく食べ物を食べ続けていた。
昨日から会議室に各隊の隊長が集まり、作戦会議を夜通し続けている。
最初こそ和やかに行われた議論だが、段々白熱して怒鳴り合いにもなった。
今は議論された作戦がようやく出来上がり、それの最終確認をしている最中だ。
辺りはすっかり暗くなり、綺麗な満月が南の空に出ている。
会議室からも見える筈だが生憎誰も月を見ている余裕はなかった。
「最後に確認として説明し直すぞ。明日の早朝には出発、アルロートを覆っている結界付近で各隊臨戦態勢で待機してくれ。待機できたら角笛を鳴らすように。
全部隊の準備が確認出来次第、結界を破壊する」
「一ついいか、兄弟」
何か引っ掛かるというようにワガリスが手を挙げた。
「構わない。言ってくれ」
「結界を破壊するって言ってもよ、壊す奴はいつ来るんだ?」
「今日中に到着するって聞いてる。まあ、バエラが言っていたしな確実だろ」
それならいい、と言ってワガリスは頷く。
他の二人に質問はあるかどうか目で確認すると二人とも首を振って否定した。
「よし、なら続けるぞ。結界を破壊した後、恐らくだが防衛軍が迎撃に出る筈だ。それを森の中で迎え撃ってほしい。
理由は前線が硬直した所で第三部隊の兵士に奇襲をかけさせて敵将を真っ先に始末するためだ」
今度はリュークが手を挙げた。
「何だ?リューク」
「仮に始末に失敗したらどうする?」
「考えたくはないが、もしそうなった時は出来るだけそちらでフォローしてくれ。
将がいなくなれば敵軍は弱体化できる、そうなれば此方の勝ちだ」
静かに頷いてリュークはフードを被り直した。
他の二人も苦笑いを浮かべて頷く。
「続けるぞ。敵軍が混乱したところで俺とレティア、アジャスとアンセルの四人がドラゴンでアルロートに直接殴り込む。
人数設定は以前説明した通り、ドラゴンが自由に飛び回るには二人が限度だからだ」
ワガリスが手を挙げずに口を挟んだ。
手を挙げてからにしろ、と注意をしてから話すように手で促す。
彼は済まない、と頭を下げてから話し始めた。
「待てよ兄弟。ソルネアスに来たときはかなりの数いただろ?」
「俺とアジャス以外の奴等はドラゴンとの契約が切れたらしい。今使えるのはノーグとルージャの2頭だけだ」
「便利なのか不便なのかよく分からねえな」
「違いない。で、四人で殴り込んだ後エッカ・ボッカの首を取る。その後は宴会だ」
なにか質問はあるか?と聞くとゴンドが手を挙げた。
「どうした?」
「前夜祭はあんのか?」
「残念ながら無い。代わりに祝勝会は盛大にやるぞ」
「盛大って、どんくらいだ?」
「国を上げてやらせるからな、好きなだけ飲み食いできる」
そんならいい、と言ってゴンドは手を下ろした。
「他にはあるか?」
全員が首を横に振って質問は無いと伝える。
「よし。それなら今すぐ就寝だ。
明日の早朝には出発だぞ」
手を叩いて急かすと3人ともふらつきながら自分の部屋に戻っていった。
どっと疲れがこみ上げ、思わずその場に座り込む。
非常に疲れた。
昨日の朝から今日の夜まで会議を続けることになるとは予想外にも程がある。
何とか立ち上がり椅子に座り直し、
ふと窓の外を見る。
すると黒猫が尻尾をユラリと揺らして此方を見ているのに気がついた。
ゆっくり窓に近付いて、窓を開けてやると猫の姿のまま頭に直接語りかけてきた。
『バエラから伝言よ。
結界を破壊する担当者が到着したから今すぐ私の部屋に来てくれ、だそうよ?』
「了解、すぐに向かうと伝えてくれ」
ニャアと一鳴きすると黒猫は窓の外に走り出した。
仕方ない疲れているが行くしかないな。
ЖЖЖ
バエラの部屋に這うようにして辿り着き、
ゴンッと扉を殴るようにノックした。
「入ってくれ」
ドアを開けて中に入るとバエラの横に見たことの無い青年が立っていた。
「彼が結界を壊せる唯一の人間だ」
そう言ってバエラはにこやかに笑う。
彼の体はとても大きく天井に頭が着きかけている。
見た目といえば、白髪に褐色の肌、何より異質なのは白目の部分が真っ黒で瞳が赤く光っていることだ。
恐らく人ではない、魔族の血が流れているのだろう。
まじまじと見ていると彼は笑って頭を掻いた。
「あんまり見られると照れるな」
「済まない。まず、名前を聞いていいか?」
「俺はガナン、ガナン・アングリフだ」
「ガナンか、よろしく頼む。俺はシュドム・アクリエス。シュドムと呼んでくれ」
「おう!よろしく頼むぜ!シュドム」
ガナンは見た目にそぐわない無邪気な笑顔を見せた。
しかし、随分と背が高いな。
軽く2mは越えてるぞ?
「ガナンは魔族末裔か?」
「やっぱり目で分かるか?」
「あぁ、何となくな」
「そうか……。ま、嘘を言ってもしょうがないしな。俺は純血の魔族だ、この間までオールドナで寝てたんだ。けどよ、2年くらい前に急にダチが起こしに来たんで、1年前くらいに仕方ないから起きたんだよ」
オールドナで寝てた?
で、最近になって起きた?
何か聞いたことあるんだが……。
「……お前、まさかオールドナの巨人か?」
「そうだけど、何か問題あるか?」
疲れているせいかその一言で頭に血が上った。
「てめぇ一発殴らせろ!」
「ええ!?何でだよ?」
「俺がドラゴンに乗って山越えしたときに殺そうとしただろ!」
「え、あ!お前あの時の!なら俺にも殴らせろよ!あの後ルドラがマジギレして魔槍撃ち込んできたんだぞ!死にかけたんだからな!?」
お互い睨みあい、バチバチと火花を散らす。
見かねたバエラが愉快そうに笑いながら仲裁にはいった。
「ならば、お互い様ではないのかね?」
「グッ……」
「確かにな……」
二人揃ってバエラの方を向いて沈静化した。
このまま黙っていてもしょうがないのでガナンに向き直る。
それに合わせるように彼もまた此方を向いた。
「ガナン、お前肉と酒どっちが好きだ?」
「酒だ」
「なら祝勝会で俺に肉を寄越せ、代わりに俺はお前に酒を渡す。それでどうだ?」
「……分かったぜ。それで水に流すか」
やはり食物は世界を平和にする。
場が落ち着いたことを確認してバエラが声をあげる。
「さて、顔合わせが済んだところで今日はお開きにしようじゃないか。シュドム、明日は早いのだろう?」
「ああ、早朝には出発だ。ガナンも用意しておいてくれ」
「はいよ、そんじゃ寝るか」
手を頭の後ろで組んでガナンは部屋の外に出ていった。
話しは終わってない、と俺は小声で言ってバエラに向き直る。
彼は椅子に座って此方を見上げた。
「まだなにか用があるのかね?」
「デュレーンってのは一体何者だ?何故13人しかいない?何故オールドナの巨人がデュレーンなんだ?」
質問に対して彼は俯いていた首を横に振った。
「……その質問には答えられないのだよ。一つ言えるのは我々はある方に力を託されて此処にいる、ということだけだ」
「ある方って誰だ?」
「済まないが教えられない。君が1度死んで生き返ったら教えてあげよう」
「教えるつもりは無いって言ったらどうだ?」
「なら、そういうことにしよう」
しばらくバエラと睨み合う。
だが、これ以上聞いてもバエラは答えないだろう。
ふー、と息を吐いて下を向く。
そして顔を上げてバエラと改めて向き合った。
「なら、これ以上聞くつもりは無い。
あんたには世話になってるしな」
「そうしてくれると助かるよ」
安心したようにフッと笑い、バエラは手を組んだ。
「それじゃ、俺はもう寝る。またな」
適当に挨拶をして自分の部屋に向かった。
明日は決戦だ。
余計なことは考えないようにしないと。
その後部屋に戻ると夜這いを仕掛けに来たレティアがベッドに待機していたので必死に追い返した。
時と場所をわきまえてくれ……。
レイ「今夜は満月ね」
ルカト「本当だ!」
ルカナ「綺麗!」
レイ「折角だからお外で夕飯を食べましょうか」
ルカト「本当!?」
ルカナ「嬉しい!」
レイ「さて、料理を外に持ってこないとね」
ルカト「僕達」
ルカナ「手伝う!」
レイ「ありがとう、二人はいい子ね」




