↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第一章 種間戦争
32/52

第三十項 魔族の血

どうも。新参猫です。

次回は一気に3ヶ月後まで時間が飛びます。

ようやく終わる……。


ノーグが町の広場に着地すると俺は一目散に厨房へ駆け出した。

一刻も早く何か喰いたい。

厨房の扉をバンッと開けると料理をしていたユルナスが驚いて手に持っていた何かの肉を此方に投げつけてきた。

咄嗟にそれを口で受けとめ、そのまま食べる。


「あわわわ。それデノデトの肉だから生で食べられるけど他の肉は生で食べちゃダメだよ?」


デノデトとは大陸中部から南部にかけて良く見かける動物だ。

前足が極度に大きく、また後ろ足が極度に小さいのでよく二本足に間違えられる。

その肉は生で食べられる事で有名で、旅人の間では命の肉と呼ばれるほど重宝されている。


この間まで大袈裟な名前だと思っていたが、今納得した。

命の肉様々だ。


「はぁぁぁ、生き返った。今戻ったぜ」


「お帰り、もう少しで夕飯出来るからお部屋で

待っててね」


「あぁ、そうする。……アジャスは戻ってきたか?」


「まだ帰ってきてないよ?」


「そうか、ならいい」


流石に2日で往復は出来なかったか。

ま、ワガリスの所なら問題なく過ごせるだろ。

それより早く夕飯が食べたい。



ЖЖЖ



夕飯の献立はデノデトのステーキとトトルのスープ、それと普通のパンだ。

デノデトのステーキは生で食べた時とは違って噛んだ瞬間、肉汁が口の中に溢れる。

なんとも言えない幸福感に胸が満たされた。

生も旨いが焼いても旨い。

さすが命の肉だ。


トトルのスープを見て、レティアはうまく食べられているか気になった。

変に抜けてるところがあるからな、レティアは。


パンは特に何も無し。

普通に美味しいパンだ。


食事を終え、紅茶を飲んでまったりしているとドアがノックされた。


「入ってくれ」


「失礼する」


珍しくリュークが入ってきた。

手にはノルト酒のボトルを持っており、それを顔の前で振ってニヤリと笑う。

どうやら一緒に呑もうということらしい。

グラスを2つ用意するとリュークはグラスの半分くらいまで酒を注いだ。


「説得できたか?」


「あぁ、二つ返事で協力を申し出てくれた。そっちはどうなってる?」


「結界に手を出す度に兵士が出てくる」


「なら、まだ続けないとだ。あとは第三部隊の出来次第だな」


「前から気になっていたんだが。お前らの部隊分けはどうなっている」


グラスの中を眺めながらリュークは言った。


「第一部隊が初期メンバーで、第二部隊が元公国軍の兵士、第三部隊が身体能力の高い奴等に隠密訓練を施した小数精鋭ってとこだな」


そう言って俺はグラスを取り、一口飲む。

リュークは何か考えているのかグラスを持ったまま固まっている。

やがて顔を上げると、彼は真剣な目で此方を見た。


「今回の戦い、勝率はどれくらいだ?」


「多く見積もって60%ってとこだな」


「随分高いな」


「南でフォルスと剣を交えてきたが将の魔法頼りの拙い軍勢だった。あれなら俺達だけでも何とかなる。問題は近衛兵士団だ、どれくらい強いのか予想が出来ないんだよ、何か知らないか?」


そう聞くとリュークはグラスを回しながらふっと窓の外を見た。


「近衛兵士団には毎年100人選抜されている。

だが表に出てきた試しがない」


「毎年100人だと?それならもっといる筈だ」


「毎年訃報が届く。それも100人全員のな」


そう言ってリュークは酒を飲み干した。

何かあるのか?

だが、俺には分からない。


その時、再び部屋にノックの音が鳴り響いた。


「何の用だ?」


「南の戦況を報告しに来ただけよ」


どうやらルナが来たらしい。

リュークに目配せすると別に構わない、と呟いた。


「入ってくれ」


「失礼するわね」


ガチャとドアを開けてルナが部屋に入ってくる。

リュークはグラスを上げて軽く挨拶をする。


「あら?リュークもいたのね。私にも一杯頂けるかしら?」


俺がグラスを棚から取り出し、リュークによって酒が注がれる。

ルナは嬉しそうにそれを受け取ると一口飲んだ。


「で?どうなったんだ?」


「拮抗していた戦場にドラゴンに乗った英雄が現れて颯爽と敵将を討ち取った後、恐れをなして逃げ出した敵兵をドラゴンに食べさせて完全勝利したらしいわよ?」


ルナはイタズラっぽく笑い、此方を小突いてくる。

リュークは苦笑いを浮かべて酒を注ぎ足した。


「……南で暴れてきたのか」


「まぁな。しかし本当に全員食ったのか……」


ルナは泡を食ったような顔をして此方を覗きこんだ。


「え?本当に食べさせたの!?」


「ああ、って。え?」


今度はゾッとしたのか彼女の顔は青ざめている。

リュークもグラスを持ったまま固まって此方を見ていた。

何かマズいこと言ったか?


リュークはグラスを机において真面目な顔を此方に向けた。


「気を付けろ。思考が魔族と似通ってきてる」


「マジか……」


「自覚無しって言うのが尚更怖いのよね」


ルナは溜め息をついて酒を飲み干し、猫に姿を変える。

リュークも同じようにして酒を飲みきると立ち上がった。


「かつて力に溺れた魔族は誰一人として長生きしなかった。気を付けろよ」


「……分かった」


それならいい、と言うとリュークはルナを連れて部屋を出ていった。


一気に酔いが醒めた。

魔族の血が濃いのは知っていたが……。

確かに戦場だと咄嗟に判断を下しているから、ある意味それが本性なのかもしれない。

何にせよ、早急に対策をしないとだ。



ЖЖЖ



「ふむ、それで私のところに相談に来たというわけか」


「ああ、何か良い魔術はないか?」


あの後色々考えてみたが、何も対策が思い付かなかった。

仕方ないのでバエラに相談しようと彼の部屋を尋ね、理由を説明して今に至る。


「申し訳ないが、無い」


済まなそうに目を伏せて彼は答えた。


「嘘だろ……」


「言うなれば君の心次第だ。だから魔術に頼ってもしょうがないのだよ」


「そこを何とか」


深々と頭を下げるとバエラは顎に手を当てて考え込んだ。

魔術ではないが、と前置きをして話し始めた。


「それなら誰かに注意して貰うのはどうだ?自分で制御できないのなら他人に協力を求めるしかないと思うんだがね」


「随分と古典的な……。

てか、そもそも誰に頼むんだ?」


「レティア嬢に頼んでみたらどうかね?彼女なら君を止められそうだし、何より喜んで引き受けてくれる筈だ」


「レティアか……。分かったそうしてみよう」


「ふむ、幸運を祈るよ」


バエラに見送られ部屋を出る。

次に向かう先はレティアの部屋だ。



ЖЖЖ



「別に構いませんよ?」


事情を説明するとレティアは快く引き受けてくれた。

持つべきは頼れる友人だな。

違う、今は恋人だった。


「済まないな」


「いえいえ、恋人として当然です。

それに、やるからには徹底しますよ?」


「おう!」


満足そうに頷き、レティアは俺の手を取った。

この間まであれだけ恥ずかしがってたのに一体何があったんだ?

嬉しくない訳ではないが不安になる。

そんなことはお構い無くレティアは話を続ける。


「良い返事です。まず同じ部屋に住みましょう」


「お……え?今なんて言った?」


危うく返事をするところだった。

いきなり何を言い出してんだ?


「ですから、同じ部屋に住みましょう」


「……理由を聞こうか」


「シュドムが私に頼んでいるのは暴走したときに止めることですよね?」


「そうだな」


「シュドムはいつ暴走するか分かりませんよね?」


「確かにな」


「なら、常に一緒にいないと止められませんよね?」


「グッ!……そう、かもな」


ピカピカの笑顔でレティアは此方を見た。

対する俺は冷や汗をダラダラ流している有り様だ。

不味い、論破された。

しかも自分じゃ打開できそうもないぞ。

どうする……。

と、その時。

存在を主張するように天井裏で僅かにカタンと音がした。

いいところに居るな!


「おい!アンセル!ゆっくり話したいからお茶を頼む!」


「了解!貸しにしとくよ」


天井に向かって叫ぶと機嫌の良い声が返ってくる。

恐らく貸しはお茶に対してではなく話を中断したことに対してだろう。

今回ばかりは素直に感謝しよう。

改めてレティアと向き合うと彼女は顔を真っ赤にして俯いていた。


「どうした?」


「―――すか?」


「え?」


レティアは顔をバッと上げると此方に身を乗り出した。


「何故、彼はいつも盗み聞きをしているのですかっ!?」


レティアは涙目で叫んだ。

そんなの俺が聞きてえよ!


「趣味か性分だろ」


「どちらにせよ、成敗してきますっ!」


レティアは勢いよく立ち上がり部屋を出ていった。

後に残された俺は天井を見上げて

降りてこい、と一言呟く。

すると天井の一部がずれてアンセルが降りてきた。


「助かったぞ」


「礼には及ぶよ、今度手合わせしてね」


しれっと要求を押し付けてきた。

まあそれくらいなら安いもんだ。


「一つ聞いていいか?」


「なんだい?」


「最近、レティアが積極的なんだが……」


言い終わらない内にアンセルはケラケラ笑って此方を向いた。


「それはね、ユルナスが色々吹き込んでるからだよ」


「あいつのせいかよ……」


「女馴れしてそうで実は初心な男の落とし方講座だってさ」


「それ、俺の事か?」


「他に誰がいるのさ?それじゃ、またね」


楽しげに笑って彼は部屋を出ていった。

まったく楽しくない。

どんな評価だよ……。



後日、手合わせをしたときに聞いた話だが。

あの後アンセルは鬼のような形相をしたレティアに捕まり散々話し合いに付き合わさたらしい。

今後レティアの部屋には近付かない事で話がついたよ、と乾いた笑みを浮かべてアンセルは話していた。

流石に可哀想だったのでその日の肉料理を譲ってやると少し機嫌がよくなった。

肉は世界を平和にするな。

―――連絡魔石のログ


???[爺さん少しいいか?]


バエラ[なんだね?]


???[3ヶ月後に何処に行けばいいんだっけ?]


バエラ[マイソーカだ]


???[そうだった。封印解いて来て良いのか]


バエラ[夜間の移動限定でだぞ?]


???[了解!それじゃ、またな!]


バエラ[あぁ、楽しみに待っているよ]

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。