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ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第一章 種間戦争
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第二十九項 飲み込んでから話せ

どうも。新参猫です。

今日はどうも調子が悪いです。

想像力が働かない……。

夜になると巨大な焚き火がおこされ、それを囲むように全員で何重もの輪を作って座った。

全員に酒とパンが手渡されると隣にいるゴンドが手を高らかに上げて叫んだ。


「青髪の救世主に乾杯っ!」


「「乾杯っ!」」


乾杯を済ませると、皆手渡された酒を一気飲みした。

唖然としてゴンドを見るとそう言うものだというように彼もまた酒を飲み干す。

いつも飲んでるノルト酒なら俺も躊躇せずに飲み干すだろう。

だが、ワルカム酒は無理だ。


ワルカム酒は主に大陸南部で飲まれているもので、大陸中部で飲まれているノルト酒よりも数十倍強い事で有名だ。

25倍に薄めて飲むのが一般的だが、今俺の手元にあるのは10倍程度にしか薄められていない。

しかし、歓迎を無下にするわけにもいかない。


思いきって全て飲み干すと、拍手が起きた。

乾杯が無事に終わると、数十人の兵士達が焚き火の前に並んで躍りを披露し始める。

それに合わせるように他の兵士達は手拍子をしたり、空いた酒樽を引っくり返して太鼓のように叩いたりしてリズムを刻んだ。

手拍子をしながらゴンドを見ると、彼は楽しそうに笑っている。


「あれは砂漠の民を代表して来た戦士達だ。あいつらは宴会の度にああして踊って盛り上げてくれんだ」


自慢気に話すゴンドはふと手拍子を止めて此方に向き合った。


「どうした?ゴンド」


「いや、噂で聞いてたほど恐ろしい面はしてねえなと思ってよ」


「噂?どんな噂だ」


面白そうだと笑って聞くとゴンドは気まずそうに目をそらし、あくまで噂だからな?と前置きをしてから話し始めた。


「目は常に獲物を探してギラギラ光り、口には不気味な笑みを浮かべ、牙は確実に獲物を殺すために鋭く長く研がれている、ってのが俺が聞いた噂だ」


牙以外全て思い当たる節がある分たちが悪いな。

そんな考えはおくびにも出さずにアハハハと笑う。

否定しないことにゴンドは気まずさを覚えたのか、一緒になって笑った。

二人の空気がギクシャクしてきたところで、

タイミング良くバンが酒を注ぎに飛んできた。


「ま、噂なんて当てにならねえもんだ。

ほれ、アンちゃん酒のお代わりだぜ?」


酒を注いで貰いながら辺りを見渡すと、バンの隊の羽が生えたジャルジュ達は忙しそうに酒を注いで回っている。


「悪いな。お前らは呑まないのか?」


「俺等が呑んだら誰が片付けをするってんだ?親爺さん達は1度寝たら敵襲でもない限り起きやしねえんだよ」


そう言うとバンは溜め息をついて乾いた笑みを浮かべる。

何か嫌な思い出でもあるのか?

聞いても楽しくなさそうなので何か別の話題を振らないとだ。


「そういえば、獣の旅団ってどんな噂が流れてるんだ?」


「牢獄から解き放たれたクレイジーな連中が所構わず、なりふり構わず大暴れ。奴等のお陰でフォルスは怯えて夜も眠れねえ、ってのがトンデナルで言われてることだ」


ゴンドは意気揚々とその良く分からない謡い文句を語り、拳を振り上げた。

何だその名誉か不名誉か分からない言い草は。

まあ、歓声が上がるってことは名誉なんだろうな。

そう思うことにしよう。


「アルロートでは何て言われてたんだ?」


「あの国は戦争の詳しい状況を民に知らせやしねえからな。それでも北を取り返された時には少し噂が流れたぜ?獰猛なサピエがドラゴンを味方につけてソルネアスを一晩で制圧したってな」


ゴンドに酒を注ぎながらバンは答える。


「何だかなぁ……」


「何にせよ、南の戦士達の間じゃ英雄なのさ。だからこうやって誰も文句を言わずに宴会に参加させてくれんだ。シュドムじゃなかったらこうはいかねぇぜ?」


ダハハハとゴンドは笑い、酒を飲み干す。


と、その時。

突風が吹き荒れ、焚き火の火が大きく揺れた。


「グラァァァァア!!」


耳を塞ぎたくなるような大声でノーグが鳴いて、上空を旋回しはじめる。

やがてゆっくりと降下して俺の隣に着地した。


「お疲れ、ノーグ。戦果はどうだ?」


ノーグは口を開けて中を見せた。

見れば口の中には血がベッタリと付着しており、歯の間には誰かの腕が挟まっている。

喉の奥には頭だった何かがいるような気がするが……。

気のせいだな、きっと。

恐ろしい光景を前にバンは顔をしかめて飛び去り、ゴンドは何も見なかったことにして、部下の所に呑み直しに行った。


「ノーグ、口の中の物を飲み込んでくれ」


何とか平然を装い、苦笑いで済ませた。

本当なら悲鳴の一つ上げたいところだ。

ノーグは渋々といった様子で咀嚼して中身をゆっくりと飲み込む。

そして欠伸を一つして丸くなって寝てしまった。

自由な奴だな。

近くに誰もいなくなり暇になった。

相変わらず兵士達は踊っているし、手拍子も止む気配がない。

だが、俺はやる事もない。

仕方ないのでノーグにもたれ掛かる。

疲れていたのか何故か凄まじい眠気に襲われた。

仕方ない寝るか……。



ЖЖЖ



凄まじい地鳴りのような音が響き、驚いて飛び起きた。

周りを見回しても特に異常なことはなく、ノーグが欠伸をしただけだと考えが至るまで5分程時間を要した。

耳元で欠伸をされるとあんな風に聞こえるんだな。

今度、アンセルに聞かせてやるか。


伸びをして辺りを確認するとバンの隊の兵士達がようやく眠りにつくところだった。

時間を確かめるために空を見上げると日の出からさほど時間はたっていない事が一目瞭然だ。

手近にいたジャルジュの兵士を手招きして此方に呼ぶ。

彼女は眠そうに目を擦りながら此方にフラフラと飛んできた。


「もう、出発する。ゴンドとバンに手厚い歓迎感謝する、また会おうと伝えてくれ」


コクリと頷くと彼女はその場で眠ってしまった。

寝ぼけて半目で辺りをキョロキョロ見回しているノーグに渇を入れ、叩き起こすとその背に乗る。


「さて、帰るぞ!」


「グリャ……グラァァァァア!!」


噛んだなこいつ。

ノーグは気にしているのかいつもより速く飛び上がり誤魔化そうと躍起になっている。

そのせいで俺は必死になってノーグに掴まる羽目になった。

恥ずかしいのは分かったから乗り手の事を考えてくれ。

変にパニックになるところは誰かさんに似てるな。



ЖЖЖ



マイソーカが遠くに見える頃には空に綺麗な夕陽が見えていた。

海に沈む太陽は以前から定評があったが、空から見るのは格別だ。

だが、今の俺には景色を楽しむ余裕は無い。

以前もそうだったが日を跨がないなら基本的に食事を取らずに飛ぶためドラゴン側は余裕でも人間側はかなり消耗する。

まあ、何が言いたいかというと。


「腹へったぁぁぁぁあ!!」


そう、とてつもない空腹感に苛まされているのだ。

行きは心配事のせいで胃が痛くなっており食事どころの騒ぎではなかったが、帰りは余裕があるのでこの様だ。

ノーグは何も言わずに加速してくれた。

本当に気が利くドラゴンだな。

アジャス「やっと着いたぞ!」


ワガリス「お、この間の奴か。どうした?」


アジャス「これを届けに来たんだよ」


ワガリス「書簡?」


アジャス「あぁ、レティアさんからあんた宛だ」


ワガリス「そうか、わざわざ済まねえな」


アジャス「構わねえよ。って何て顔してんだよ」


ワガリス「お前ら!今すぐ旅の支度しろ!3ヶ月以内にオールドナ越えだ!」


アジャス「大将もえげつない命令するな……」

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