第二十七項 戦いの気配
どうも。新参猫です。
第一章の終わりがようやく見えてきました。
あれ?これ以前も言っていたような……。
3日後―――。
昼食を食べ終え、いつも以上にフレンドリーなレティアと談笑を楽しんだ。
この後、模擬戦でもするか?と聞いたが
第二部隊の訓練があります、と残念そうな顔で断られてしまった。
残念だ。
仕方無いので部屋に戻り、武具の手入れをすることにする。
手入れといっても刀身に手をつけられるほど
詳しくは無いのでどこか違和感がないか確認するだけだ。
防具の傷の度合いを調べ、大剣を軽く振ってガタつかないかどうか確認する。
最後に剣を振って確認作業に入る。
最近、酷使したせいか若干柄が握り辛い。
まあ、大して気にならない程度の違和感だ。
無視して平気だろ。
「よし!これなら鍛冶屋に相談しなくても大丈夫だろ」
部屋で武具の手入れを終えて外を見ると、見慣れた黒猫が窓の外から此方を覗いている。
また来たのか、と窓を開けてやるとヒラリと部屋に降りて人の姿に変わった。
「どうした?ルナ」
「南の戦況を報告しにきたのよ」
「そりゃ、どうも。で?陥落したか?」
溜め息混じりに聞くと、ルナは嬉しそうにコロコロ笑う。
「ハズレよ。ジャルジュが味方について
フォルスの軍勢は敗走したわ。一気にアルロート包囲陣まで押し返すつもりみたいよ?」
予想外の答えに思わず飛び上がった。
友軍の活躍は聞いてて心が踊るな。
「マジかっ!向こうの隊長もやるな」
「本当にね。それで?この後の予定を聞きたいのだけれど」
「この後?暇だぞ」
「今日の予定じゃないわ。私が聞きたいのはこれから先の作戦の予定よ」
「……どうも決められないんだよな」
本来なら北を奪還した勢いに乗ってアルロートを攻め落とす積もりだった。
しかし、結果として出来なかった。
伝令兵に調査させたところアルロートを覆うようにして結界が張られている事が判明しからだ。
ちょっとやそっとの事ではビクともしないだろう、という見解をユルナスとバエラは示している。
あれをどうにかしない限りアルロート攻略は絵に描いた餅でしかない。
「あら?貴方にしては随分迷ってるみたいね?」
「結界の処理さえ出来ればどうとでもなるんだがな……」
「そういうのはバエラに相談してみたらどうなのかしら?」
「あいつにか……。何か頼りっぱなしで悪い気がするんだよな」
「気にしなくてもいいんじゃないかしら?お互い気兼ねなく助け合う。仲間というのはそういうものでしょう?」
貴方が教えてくれたことよ?と言い、ルナは尻尾をユラリと揺らして笑った。
こいつに仲間について説かれるとは思わなかったな。
「それもそうか」
「そうよ。それにね、最近頼られなくて落ち込み気味なのよ。あの御老体」
何だそりゃ。
でも、まあ頼られなくて落ち込むってことは何か策はあるんだろ。
無かったら殴る。
「仕方ない。バエラの所に行ってくる」
立ち上がり部屋のドアを開けると、
嬉しそうな顔をしたバエラが立っていた。
「……。」
バタンッ。
一度ドアを閉め、目を見開いてルナを指差す。
ルナは首を横にブンッブンッと勢いよく振って関与を否定した。
開けなきゃダメか?と目で訴えるとルナは苦笑いを浮かべて頷く。
嫌々ドアを開けると相変わらず嬉しそうな顔をしたバエラが立っていた。
「……何で此処にいるんだ?」
「私の名前が呼ばれたと思ったのでね。すぐに駆けつけたのだよ」
「そうかい。で?何か策はあるのか?」
「よくぞ聞いてくれた!私の知り合いにあの結界を壊せる者がいるのだよ」
「例によってデュレーンか?」
「あぁ、何か問題でも?」
「いや、特に無い。けどよデュレーンって何人いるんだ?」
バエラは指を折って一人一人数え上げる。
やがて数え終わり此方を向いた。
「13人だ。以前会ったレイやルカナとルカトもデュレーンだよ」
「ルカト?ルカナ?」
「白い双子が居ただろう?兄がルカト、妹がルカナだ」
「あぁ、あの二人か」
確かにいた。
レイの家で暮らしてる不思議な双子だ。
そういえばバエラを見て直ぐに逃げ出してたな。
「それはいいとして。結界を壊せるやつはいつ頃来れる?」
「彼の足なら1週間で済むだろうね。直ぐに呼ぶかい?」
「いや、3ヶ月後にしてくれ」
3ヶ月か、と呟くとバエラは首を傾げた。
「ほぉ、何か作戦ができたのかい?」
「元から構想はできてたんだよ。問題は結界だったんだが、解決したなら今すぐ行動に移す。
ルナ!アジャスとレティアとリュークを会議室に呼んでくれ」
「分かったわ」
ルナは楽しそうに頷くと猫に姿を変えてドアから走り去っていった。
「バエラは連絡を頼む」
「承った」
さて、これから忙しくなるぞ。
ЖЖЖ
会議室に着くとリュークが先に来て座っていた。
彼は此方に気が付くと片手を挙げて挨拶する。
こちらも同じ様にして挨拶を返した。
「で、何の用だ?」
「聞きたいことが有るから呼んだんだよ。
アルロートに敵兵は何人いる?」
リュークは思案するように目を閉じる。
やがて目を開けると苦々しい顔をして言った。
「防衛軍だけで5000人、近衛兵士団に100人だな」
「よし!それなら行ける」
何の事か分からずリュークは首を傾げる。
その時、会議室の扉がノックされた。
「入ってくれ!」
入ってきたのは呼んでおいた他の2人だ。
2人とも適当な席に座ると此方を見た。
「急に呼び出すなんて何があったんですか?」
「アルロートを攻略するぞ。その準備を手伝ってくれ。レティアは北のジャルジュに対して
マイソーカに来るよう協力要請の書状を
書いてくれ」
「分かりました。今すぐ書いてきますね」
レティアはスタスタと速歩きで会議室を出ていった。
対するアジャスは首を傾げて此方を向く。
「俺は何すりゃいいんだ?」
「お前はレティアが書いた書状を持って
ソルネアスに行ってこい」
「はぁ!?マジかよ!」
信じられないと言うようにアジャスは勢いよく椅子にもたれ掛かった。
「どうせルージャがいるだろ?明日には出発だ」
「そうだけどよ……」
納得がいかないのかアジャスはブツブツと文句を言い続ける。
甘いな、こちらには奥の手があるんだよ。
「ちゃんと届けてきたら、お前ら夫婦に部屋を
用意してやる。角部屋で両隣空き部屋の隣人無しのやつ」
ピタッとアジャスの文句が止まり、彼の目が此方を食い入るように見つめた。
効果抜群だな。
「……言ったな?」
「あぁ、確かに約束した」
途端にアジャスは目を輝かせて立ち上がった。
本当に現金な奴だ。
ま、扱いやすくていいが。
「ま、大将の頼みだしな。やる気も出たし行ってくるぜ」
「ありがとよ。俺は南の連中を説得してくる」
「俺は何をすればいい?」
「リュークは明日からルナとバエラを連れて
アルロートの結界にちょっかいを出しておいてくれ」
「ほぉ、何か考え有っての事だな?」
「当たり前だ、頼んだぞ?」
「任せろ」
アジャス、リュークの二人が出ていくと会議室は静かになった。
その分異質な気配も分かりやすくなるわけだが。
「アンセル!お前は第三部隊の隠密訓練を
3ヶ月間徹底しろ!お前らが今回の戦いの鍵になる」
「分かったよ!あと何でバレてるのさ?」
「勘だ!」
床下から何かが動く音を確認してから
自分も準備をするために部屋に向かった。
明日には出発して南に行かないと。
アジャス「ノルノ!朗報だ!」
ノルノ「なぁに?」
アジャス「今度の任務を達成したら、一部屋貰えることになった!」
ノルノ「え!?本当に?」
アジャス「これで夜も声を気n―――。グボッ!」
ノルノ「恥ずかしいから言わないで!」




