第二十六項 宴会と会談
どうも。新参猫です。
投稿していませんが、新しい小説を書いてます。
その内投稿するかもしれないです。
夜になると辺りはにわかに騒がしくなった。
当然と言えば当然だろう。
これから宴会だと言うのにしんみりする馬鹿はいない。
広場の時計に隣接している急拵えの櫓にザックが現れると辺りはシンッと静まり返った。
「大将の生還と北の奪還に乾杯っ!」
「「乾杯っ!」」
最早名物となったザックの音頭が響き渡ると、
いつも以上の歓声が上がった。
皆、競うように肉を食べ、酒を呑んでいる。
誰もが気兼ね無く笑い、野次を飛ばして肩を叩き合った。
歌を高らかに歌い、歓声を浴びる奴もいる。
呑気なもんだな。
普段は上品に呑む公国の兵士も今日ばかりは羽目を外して騒いでいた。
鍛冶屋の前に設置された特別テーブルには大量の肉が盛られていた。
そこから3枚掠め取って1枚をリュークに投げてやる。
彼が上手くキャッチしたのを確認して人に揉まれながらその場を後にした。
肉を頬張りながら歩いていると兵舎前に人だかりが出来ている。
いったい何があったんだ?
人だかりの中心にいる人物を見て納得した。
アジャスとノルノの二人が冷やかされたり質問攻めにされたいるだけだ。
それなら特に問題は無い。
その場を離れ、レティアの部屋に向かった。
あのまま放っておくのは不本意なんでな。
男としてケリをつけてくる。
ЖЖЖ
ドアは相変わらず外れたままになっており、
外を見つめるレティアを隠せてはいなかった。
月明かりは誰でも平等に照らす。
勿論、彼女の寂しそうな横顔もまた例外ではないようだ。
レティアは此方に気付くと口をパクパクさせながらビシッと此方を指差す。
「落ち着け、少し話したいだけだから」
「はははは、はい」
まったく落ち着いていない。
仕方ないので頭を撫でて落ち着かせようと試みる。
頭に触れられるとニャッ!と可愛らしい声を上げた。
そのままゆっくりと撫で続けながら話を切り出す。
「結婚についてだがな。まだ早いってのが俺の答えだ」
「……そうですか」
顔を手で覆い、レティアは今にも嗚咽を漏らしそうな雰囲気を醸し出す。
「そう、しょげてくれるな。まだ早いって言っただけだ」
レティアは指の間から目だけで此方を見る。
「つまり、どういうことですか?」
「察しの悪い奴だな。いきなり結婚するのはどうかと思うから、まずは恋人からにしないか?って事だ」
「っ!」
レティアは顔を赤く染めて枕に顔を赤く埋め、
手を振り払おうと手をバシバシ叩いてくる。
構わず撫でてやると腕を取られベッドに引き倒された。
「何するつもりだ?レティア」
何も答えずにレティアは抱きついて今度は胸に顔を埋める。
可愛い奴だな。
だが頼むからもっと警戒してほしい。
これでも男だ、一時の気の迷いでどうなるか分かったもんじゃない。
鋼の理性で本能を捩じ伏せ、心を落ち着ける。
背中に手を回して抱き寄せるとレティアは安心したのか10分経たない内に寝息を立て始めた。
20分程そのまま一緒に寝転んでいるとレティアが寝返りをうった。
それと同時に彼女の手が体から離れたのでベッドから起き上がりレティアの頬にキスをして部屋を出る。
どうか、いい夢を。
ЖЖЖ
兵舎から出ると丁度良いタイミングでバエラが視界を掠めた。
あちらも俺に気付いたのか手を振って歩み寄ってくる。
「よう、バエラ!楽しんでるか?」
「程よく楽しませて貰っているよ。さて何処で話したものか……」
「そうだな、いつも通り会議室に行くか」
「ふむ、そうするとしよう」
こうして来た道を戻ることになった。
無駄ではない。
無駄ではない、が……。
最初から会う場所を決めておくべきだったな。
ЖЖЖ
会議室には昼間と同じようにテーブルに王国旗がかけられていた。
向かい合うように席に座るとバエラは手を組んで此方を向く。
いつになく楽しげなその顔は知性に富んだ老師が未熟な弟子を見るのと同じように見えた。
「まず、前提として魔力について説明しよう」
「頼む」
「魔力とは簡単に言えば生きる上で支払われる対価だ」
「?」
「君には分かりづらいと思うが、存在する上で我々は常に魔力を消費しているのだよ。魔力が尽きる時、我々に死が訪れる。言わば命そのものだ」
感慨深いというように目を閉じて天を仰ぐ。
「まて、それなら全員魔力を持っている事になるぞ?」
「正にその通りだ。飲み込みが早くて助かるよ」
バエラは嬉しそうに目を細め、手をポンポンと叩いた。
つまり、あれか?
俺達が命って言ってた者は実は魔力で、日々それを削って生きてるってのか?
「それが分かったのなら魔術と呪詛の説明に入ろうか」
俺の混乱を余所にバエラは説明を続行する。
教師には向いてないな、こいつ。
「魔術は自分の魔力を体外に放出して具現化させることにより様々な現象を起こすものだ。だが人それぞれ固有の魔力を使うからか、大抵は一種類の魔術しか扱えないのだよ」
楽しそうに目を輝かせて彼は身を乗り出した。
何かレイと似てるな。
「まてよ、それなら俺にも魔術が使えるんじゃないのか?」
素朴な質問をぶつけるとバエラは首を横に振ってそれを否定した。
「残念ながら不可能だ。魔術を使うには魔力を自ら操れなけらばならない。それが可能なのは基本的にフォルスか我々デュレーンだけだ」
「ジャルジュはどうした?リュークとルナは使えてるぞ」
「彼等を始めとする一部の例外は使えるようだね。まあ、彼等は特別なのだよ」
そう言うとバエラは肩をすくめて笑う。
説明しないってことは聞いても無駄か……。
「なら、呪詛は何だ?俺でも使えたぞ」
「呪詛は別名、星術と呼ばれるものだ。星術はその名の通り、星に力を借りて何かしらの現象を起こしているのだよ。大抵の星術は呪詛を唱えれば使える、魔力は基本的に星が負担してくれるので楽に使えるのが利点だね」
「だから俺にも使えたのか」
「そういうことだ。ただ、一般に知られていない上に呪詛を記した書物も殆ど無いのでね、使える人間は一握りだ」
「ルナが使っていたのは?」
「あれは私が連絡魔石を使ってレイに教えて貰ったのをルナに使わせただけだ」
そこまで話すとバエラは伸びをして立ち上がった。
そして少しお酒を頂いてくる、と言って部屋を出ていった。
分かったような分からないような。
まあ、無駄にはならないか。
入れ替わるようにして鶏の丸焼きを持ったザックが満面の笑みで部屋に入ってきた。
「ザック!わざわざ持ってきてくれたのか!」
「それもあるが、部隊の連中が地下の兵舎で待ってたからよ。それを伝えに来た」
「マジか!じゃ、さっさと食って向かうとするか!先に行ってすぐ行くって伝えておいてくれ!」
「おうよ!」
テーブルに丸焼きを置くと、ザックは手を振りながら部屋を出ていく。
さて早く食わないとな。
ЖЖЖ
鶏を食べ終え、今は地下に向かう階段を降りている最中だ。
あの料理はジャルジュの料理係が作った物だな。
以前食べた骨付き肉と同じような味がした。
兵舎の扉を前にすると扉越しにも中の喧騒が伝わってくる。
まったく馬鹿騒ぎしやがって。
溜め息をついて扉を開けるとワァッと歓声が上がった。
「よう、お前ら!楽しんでるか!?」
「「おぉぉぉぉお!!」」
各々右手に持った肉やジョッキを掲げて雄叫びを上げる。
その中に見慣れない顔がちらほら見えた。
ザックに目配せすると彼はガハハハと笑った。
「第二部隊から客が来てんだよ。あとアジャスが嫁を連れてきてたよな?」
「おう!折角だノルノ、大将に挨拶してくれ」
背中をポンポンと叩かれ、ノルノはおどおどしながら一歩前に出る。
「ご、ご紹介に預かりました。ノルノ⚫カースレフ、改めノルノ⚫ウォーリンデです。旦那様がお世話になってます」
「よろしく、ノルノ。頑張れよ?アジャスは頭がおかしいからな?結婚生活は大変だぞ?」
「ひっでぇ!」
周りからゲラゲラと笑いが起きた。
ノルノも口に手を当ててクスクス笑っている。
納得がいかない、と憤慨するアジャスに周りの兵士達がまあまあと宥めながら肉や酒を渡した。
途端に機嫌を直し、笑い出すんだからアジャスも現金な奴だ。
けどまあ、これぞ宴会って感じだな。
静かに独りで過ごすよりも、五月蝿いと悪態をつきながら皆で過ごす方が俺には向いてる。
そのまましばらく飲み食いをすることになり、
解放される頃にはすっかり夜が明けていた。
猫「ニーニー」
ルナ「へぇそうなの」
猫「ニャア」
ルナ「え?それは意外ね。それで?」
猫「ニャオン」
ルナ「そう、ありがとうね。また明日いらっしゃい?魚をご馳走して上げる」
猫「ニャア!」
ルナ「……それにしても、南にも人についたジャルジュがいるとはね」
リューク「(今ので会話できてるのか……。)」




