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ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第一章 種間戦争
24/52

第二十二項 山脈の怪物

どうも。新参猫です。

何となくまだ長くなる気がしてきました。

予定は守りたいですね。

空に戻ると辺りを見回して

誰かいないか確認する。

だが、誰もいない。

さすがに置いていかれたか。

仕方ない一人でのんびり行くぞ。


「そう言えば、これどうするかな」


懐から牙を取り出して眺めてみる。

よく見ると牙の先端は折れており、

牙の中は空洞になっていた。


「……角笛みたいだな」


だが角笛にしては小さい、

手のひらに乗る大きさだ。

普通はこれの3倍くらいはある。

ものは試しと吹いてみると、

とても低い音色が出た。

ノーグは嬉しそうに目を細めてグルルと唸る。ま、ノーグからの信頼の証だと思うことにしよう。


それにしても一人旅は暇だ。

景色を堪能できるが感想を言う相手が居ないのでは意味がない。

仕方なくノーグに対して同意を求める。

が、ノーグは俺の言葉が分かっても俺はノーグの言葉を理解できないので意味がなかった。

もっともノーグは嬉しそうにしていたが。



10時間後―――。



どうにかユラースフィル山脈を飛び越すと、目の前に二つ目の山脈、オールドナ山脈が姿を現す。大陸の北と中央を隔てるのは二つの山脈であり、北側はユラースフィル山脈、南側は今目の前にあるオールドナ山脈だ。

残念ながら行きは海上を飛ぶルートだったので山脈にお目にかかることは無かった。


だが、帰りは時間短縮の為に山脈を通過するルートだ。

何故早く行けるのに、行きに山脈ルートを

選ばなかったか。

それにもきちんとした理由がある。


オールドナには巨人が眠っているという伝説があるからだ。


500年前の戦乱で魔族側の主力として猛威を奮った巨人は魔族が敗北した際にオールドナの山中で眠りについたと言われている。

それだけならばどうという事はない。

だが、最近になって山脈で巨大な影を見たという目撃談が複数あがった。

現に部隊の伝令でも一人、

巨人を見たと報告した者がいる。

つまり、巨人が眠りから覚めたかもしれないということだ。


そんなわけで兵士が無駄に怯えないよう敢えて

山脈を東に迂回したわけだが、今は一人なので

そのまま山脈を突っ切る事にする。


「まあ何とかなるだろ。ノーグ!スピードを上げてくれ!」


グルルルと声を上げ、翼を力強く羽ばたかせると推進力がグンッと上がる。

振り落とされないように掴まるとノーグの

首の横を撫でてやった。

感謝の意を伝えるためだ。


さて、巨人に会えるかどうか、楽しみだ。



ЖЖЖ



オールドナは大陸で最も高く険しい山だ。

地面に尖った岩がたくさん見受けられ、人が立ち入るのを拒むかのように乱立している。

辺りは霧に覆われており、先を見通すことが出来ない。

ここを抜けるのに徒歩だと2ヶ月は掛かる。

レティアはこの山脈を民を連れて越えてきた。

大した姫君だ。

自らは弱音を吐かず、弱い民を励ましながら

旅したというのだから。


俺達が山脈を無事に出られるかどうかは

ノーグ次第だ。


「頼むぞ!相棒!」


ポンポンと背中を叩くとグゥと小さく声を上げた。

何だ元気がないな。

何か居るのかと思って周りを見回すが

何もいないし、気配もしない。

気のせいだな。



4時間後―――。



明らかに迷ってる。

距離だけを考えるとオールドナを抜けるのに

50分くらいで済む筈だ。

相変わらず霧が深く辺りを見通すことは出来ない。


「大丈夫かよ……」


と、その時だった。巨大な岩が前方から飛んできた。


「降下しろ!」


翼を畳み急降下する。

そして地面スレスレで翼を広げて低空飛行に移行した。


今の岩、目の前から飛んできたな。

だとすると地上からの攻撃じゃない。

空中か、とても高い櫓か、二つに一つだ。


「櫓であんな馬鹿デカイ岩を投げられるわけないよな……」


答えは頭の中で出ているが認めたくはない。

すると今度は辺りが急に暗くなった。


「加速しろ!」


間髪入れずに命令して上を見上げると巨大な足が俺達を踏みつけようと迫っていた。


間違いない。巨人に遭遇したな。

足の大きさからして300mはある。

前言撤回、全然楽しくない。

500年前の連中はどうやってこんなのと戦ったんだ?


ギリギリ足を避けるとノーグは息を吸いこむ。

慌てて俺が耳を塞ぐのとノーグが絶叫するのが殆ど同じだった。


「キュラァァァァア!!」


聞いたことのない高い声で鳴くとノーグは急上昇して速度を上げた。


数秒後、青い光が辺りを照らし、辺りを幻想的な風景に仕立てあげる。


ノーグは更に加速し、必死に掴まっていないと振り落とされそうだった。

一体何事だ?こんなに急ぐなんてただ事じゃないぞ。


5秒後その意味を理解した。

ビキビキと何かが割れるような音と共に光がより一層強く辺りを照らす。

途端に何かが爆発したのかドーンッという音ともに突風が吹き荒れた。


ノーグは必死に風に耐え、極力体を揺らさないようにしている。

感謝したいがそれどころじゃない。

落ちたら死ぬからな?

目を瞑り無我夢中でノーグに掴まっていると急にノーグが速度を落とした。


目を開けると霧が晴れ、

目の前に大草原が広がっていた。


本来なら暗くなっている筈の時間帯だが、青い光に照らされているため昼間と同じくらい明るい。そうでなければ飛ぶのは危険だ。


遥か先にだが王都が見える。

どうやら予定よりかなり東に出たようだ。

これなら王都で一泊した方が良いな。


「仕方ない、王城に寄るぞ。ノーグ、城の近くに降りて待っていt―――。いや、やっぱり王宮前に降りてくれ」


面白い事を思いついた。

腐った宰相の間抜けな面を拝むとしよう。


俺がニヤリと笑った瞬間、一際強い光が辺りを照らし上げた。

背後を振り返ると山脈の上空で白銀に輝く巨大なドラゴンが大地にいる何かを睨み付けている。

怒りに震える手には青く輝く槍を持ち、目は青い光が迸っていた。

一瞬ドラゴンの目がギョロリと此方を向く。

すると頭の中に聞いたことのある声が響いた。


『貸しにしとく。いつか返せ』


どうやら助けられたらしい。

ドラゴンの王、ルドラ・シャルキンス。

その勇姿を目に焼き付け王都に向かうのだった。



ЖЖЖ



王城の庭は基本的に王宮庭師によって綺麗に整備されている。

今の時期は丁度ナフィルが咲く頃なので、花壇には赤いナフィルの花が競い合うように咲き誇っていた。

綺麗なので花壇を踏まないように着陸すると、

衛兵を連れて宰相が王宮から出てくる。


相変わらずブクブクに太った体、

酒を飲み過ぎているせいで赤くなった大きな鼻。

その他にも様々な欠点があるが、一番の欠点は

汚く卑しい心だろうな。


「よう、ギンちゃん。元気にしてたか?」


ギンちゃんというあだ名は俺がつけた。

王の腰巾着。何となくギンちゃんと巾着の発音が似ていたので、そのままあだ名に決定した

覚えがある。

本人には説明していないが。


「アクリエス卿!これは一体……」


「ノーグ。やってやれ」


耳を塞いで指示を出すとノーグは息を吸った。

宰相の口は相変わらず忙しそうに動いている。

黙ってくれねえかな?


「グラァァァァア!!」


俺の心を代弁するようにノーグが雄叫びを上げる。

衛兵は口を開けたままポカンと放心状態に陥り、宰相は首を縦に細かく振り続けてよく分からないことになっていた。

だが、これを利用しない手はない。


「よし、ギンちゃん。これからノーグと共に謁見するが問題ないな?」


宰相は相変わらず首を縦に振っている。

壊れた玩具か?お前は。


「そうか、感謝する。行くぞ!ノーグ」


放心している一同を放置して王宮に入った。

バーカ!



ЖЖЖ



王宮に入ると衛兵が槍を構えた。

甘いな、此方には最強の武器がある。


「宰相の許可を頂いている!武器を向けるとは

何事だ!」


この一言で衛兵は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。いやーあのデブ役に立つな。

戦場じゃステーキになる以外役に立たないくせに。


王宮は豪華絢爛というに相応しい内装になっていた。

壁は金箔で覆われ、床は磨き上げられた白い大理石で出来ている。

極めつけは最高級のドレガントの木材で作られたドアとそれについている宝石で出来たドアノブだ。


その一つ一つにノーグは翼や爪で

傷を付けていく。

気分爽快だな。


謁見の間につくと国王は豪華な椅子に座っていた。

彼の名はナイリー三世。

賢王として各地に名を轟かせる名君主だ。

だがそんな彼でもドラゴンを見ると目を見開き、口をパクパク動かして驚いた。

普段は落ち着いて威厳のある王が取り乱すのを見るのは初めてだ。


「お久しぶりです、陛下。此度は戦況の報告に

参りました」


「そそそそ、そうか。な、なら話すがよい」


怯えて声がうまく出せない国王に様々な事を伝えていく。


フォルスから投降者が出た事。

ジャルジュという新しい種族の事。

北を取り戻した事。


全て話終えると国王はふーむ、と溜め息をついて考え事を始めた。

やがて此方を向くと重い口を開いた。


「アクリエス卿よ、多大なる戦果は評価する。

だが、その荒唐無稽な行いには感心できんな」


「は!重々承知しております」


「ならばよい。ジャルジュの事は他に話すでないぞ?民を混乱させたくはない」


「確かに承りました!」


「ふむ。そしてドラゴンよ、その働きに

深く感謝いたそう」


グルルルと唸りノーグは答える。

王は頷いて立ち上がった。


「下がってよいぞ。アクリエス卿には部屋を用意させよう。ドラゴンには申し訳ないが、馬小屋を使ってもらうことになる」


ノーグは思いのほか嬉しそうにグゥと鳴いた。

意外な趣味だな。


その後宰相に詰め寄られ、散々文句を聞かされた。

もっともノーグが欠伸をしようと口を開けると

何処かへ走り去っていったが。


部屋に着くとすぐに豪華な夕飯が運ばれてきた。

主菜が三品、副菜が五品、スープとパンは

おかわりし放題。

しばらく何も食べていなかったのでありがたい。

ちなみにノーグは牛を一頭貰ったらしい。


食べ終わるとすぐの浴場に案内され、

湯を浴びた。

サッパリして部屋に戻るとベッドに飛び込んだ。


明日は早く出発しないとな。


ザック「おい!何だ、この光!」

テヨン「分からない。でも山脈の方から来てる」

ザック「大将は死ぬし。空は変だし、何なんだ!」

テヨン「カリカリするな。明日は形だけでも葬式やるんだろ?」

ザック「そうだった。笑って送り出してやらないとな」

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