第十九項 魔術と魔術、武術と武術
どうも。新参猫です。
たくさんのRTありがとうございます。
少しずつですが読み進めていきます。
気長にお待ちいただければ幸いです。
1時間後―――。
ドーン、ドーンと辺りに音が響き渡る。
王宮の門を破ろうとする音だ。
レティアが自慢していた通りならこの門もモルネア合金でできている筈。
それなら破られないだろう。
だが、考えが甘かったようだ。
音がしなくなった途端、扉が切り取られた。
無惨に斬られたそれは倒れると共に凄まじい
金属音が鳴り響かせる。
それと、同時にエントランスに突風が
吹き荒れた。
「これも魔術か?って聞く相手がいないか」
倒れた扉を踏み越えて敵はゆっくりと入ってきた。
真っ先に入ってきたのは白いベールで顔を隠したフォルスの女だ。
その後、続々とジャルジュの兵士が踏み込んでくる。
どうやら先頭に立っている敵を除いて全員ジャルジュで構成された隊らしい。
「あんた、名前は?」
「答える義理はありませんわ」
無表情で手をヒラリと振ると柱が簡単に
斬られた。
驚いて後ろに下がると自分が立っていた位置に
溝が作られる。
そのままそこに居たら真っ二つになってたな。
「あら、避けられるのは何年ぶりでしょうね?」
慈愛の笑みを浮かべながらフォルスの女は再び手を振るう。
今度は右に避け、皆に下がるよう指示を出した。
その時、見覚えのある黒猫が視界の端を掠めた。ルナが帰ってきたか。
緊急の用件らしくルナは猫の姿のまま直接頭の中に語りかけてくる。
『そのまま聞いて頂戴。今目の前にいるのはフィルメア・ルディストーナ、風を操るのを得意とする腹黒駄肉女よ』
私怨が8割を占めそうなあだ名だな。
しかしあだ名のわりにスタイルが良いような。
とくにむn―――。
・・・やめよう、こんな事を考えても誰も幸せになれない。
風を操るということは鎌鼬を起こしてドアを切ったのか。だとすると剣で攻撃を受けるのは
愚策だな。
『撃破数はフォルスの中で一番よ。アジャスと同じね』
ルナは嬉しそうに話すが俺は何も嬉しくない。
正直な話、次何処に攻撃が来るのか分からないので殆ど勘で攻撃を避けている。
少なくとも手を振った時に攻撃が来るらしい。
またもや手を振ったので前方に飛び込んで何とか攻撃をかわした。
フィルメアは道化師を見て楽しむ御令嬢のような顔で此方を見ている。バカにしやがって。
『援軍を呼んだからじきに来るわよ。
それまで耐えて。いいわね?』
「いいわけ無いだろ!手伝え!」
仕方ないわね、と呟くとルナは人に姿を変え、
魔腕を2本出して構えた。
一瞬フィルメアの視線がルナに向かった隙に
アジャスに合図して全員を2階に逃がす。
ワンテンポ遅れてフィルメアが階段を切り落とすが全員登りきっており残念ながら逃げられた。
「仕方ありませんわね。不粋ですがこれを
使いましょう」
そう言って取り出したのは青白い色の鐘だ。
ルナだけでなく周りのジャルジュに動揺が走る。
だが、彼女は躊躇うことなく鐘を鳴らした。
綺麗な音色がしたと思うとジャルジュは
全員その場に崩れ落ちる。
慌ててルナを受け止めると彼女は弱々しく
口を動かした。
「忌まわ、しいわね・・・」
これがマタロフの鐘か。
改めてフィルメアに向けて武器を構える。
が、勝てる気がしない。
そんな緊迫した状況下だと言うのに、
突然煙と共に老紳士が現れる。
しかも現れた場所が悪い、俺とフィルメアの
間だ。
「バエラ!?何しに来た!」
「助けに来たのだよ。どれ、フォルスのご婦人。僭越ながら私が相手を勤めよう」
そう言ってコキリと首を鳴らした。
途端にバエラの左目に青い光が宿り、両腕に青く光る線が浮き出た。
フィルメアは目を丸くして手を振って攻撃を
放った。
対するバエラは腕を高らかに上げ、縦に真っ直ぐ降り下ろす。
するとフィルメアと此方を隔てるように青い光の壁が現れ、フィルメアの魔術を防いだ。
「その程度かね?」
「っ!?」
フィルメアの表情から焦りが見てとれる。
躍起になって連続攻撃を繰り出すがバエラは
涼しい顔で全て受けきった。
残念だというように首を振ると彼はフィルメアを真っ直ぐ見つめた。
「済まないね。お別れだ」
突如バエラの左目が輝きを増す。そして目から青く光る糸が大量に現れ、フィルメアを包んだ。
糸で包まれた塊は段々小さくなり、
やがて消えた。
壁を消して此方を振り向くとバエラは
手招きする。
「来たまえ」
恐る恐る近付くとバエラは安心しなさい、と言って笑った。
「で、何だ?」
いまだに警戒を解けない俺を見ると、バエラは
苦笑いして倒れているジャルジュ達を指差す。
「いや、彼等をどうするのか聞いていなかったからね。隊長殿に意見を聞いておきたかったのだよ」
「取り敢えず話し合う。お前らもそれで良いか?」
敵を見るとぐったりして動かない。
もう少し待つか。
ЖЖЖ
暫くするとジャルジュは全員動けるようになった。
隊長に話し合うつもりがあると伝えると彼は大人しくその場に座ってうな垂れた。
「どうせ、お前さんもマタロフの鐘を使うんだろ?逆らえんよ」
そう言って床に落ちている鐘を指差して自虐的な笑みを浮かべる。
「なら、こうしよう。ルナ!」
「いいのかしら?」
「ああ、盛大に頼む」
ルナは頷くと魔腕でマタロフの鐘を叩き潰した。隊長は驚いて此方を見ると立ち上がった。
「何のつもりだ」
「決まってるだろ?あんた達とは平等な条件で話し合いたいんだよ」
「酔狂な・・・」
すると、部隊の後方から翼の生えた若いジャルジュが飛んできた。
「モルザン!何のようだ!」
隊長は目を剥いて怒鳴り散らす。うわ、雷親父だ。こういう奴は怒らせると面倒なんだよな。
「借りがある奴の面を見に来ただけだ!バーカッ!」
「んだと!クソガキ!」
今にも取っ組み合いが始まりそうな雰囲気がする。面白いな、放置して様子を見るか。
残念ながらルナが魔腕を使って仲裁に入った為すぐに喧嘩は中断された。
モルザンは悔しそうに最後の最後まで悪口を
言い続けて後方に戻っていった。
放っておけば面白いのにな。
「済まねえ、取り乱しちまった」
「別にいいさ、それより名前を教えてくれ」
「俺か?俺はワガリスってんだ!」
「そうか、ワガリスか。単刀直入に聞く、俺らの仲間にならないか?」
苦々しい顔をして此方を見る。
だが覚悟を決めるようにワガリスはハーッと息を吐いた。
「無理な話だ。・・・って言ってやりてぇが命を助けてくれた恩と、マタロフを潰してくれた借りがある。
だが俺達は力の無い奴等に付くつもりは無い!」
そう言ってワガリスは武器を捨て、
指をパキパキと鳴らした。
「上等だ!」
武器をバエラに預け、拳を構えた。
その瞬間ワガリスは頭を狙って蹴りを放つ。
屈んでそれを避け足払いをかけるとワガリスは
盛大に転んだ。
ルナがケラケラ笑うと起き上がりながらそちらに対して怒りの眼差しを向ける。
余所見してる場合かよ?
起き上がった直後にもう一回足払いをかけると
再び盛大に転んだ。
今度は味方からも爆笑する声が聞こえる。
起き上がって此方を見る目はさながら親の仇を見るようだ。
次の瞬間、俺の脇腹に蹴りが入っていた。
思いっきり吹っ飛ばされ、何とか受け身をとるとワガリスが不敵な笑みを浮かべているのが見える。
どうやら本気を出したらしい。
「やるな!」
嬉々としてワガリスに飛び掛かるが、軽くいなされた。
続けざまに腹に一撃を入れたが、まったく効いていないらしい。
逆に頭を殴られて吹っ飛んだ。
急いで体勢を立て直すが、気付いたときには
ワガリスの追撃が体に撃ち込まれた後だった。
それと同時にさっきの戦いでできた金属の欠片が刺さったらしい、腕から血がドロリと流れる。
ああ、またアレになるのか。
ЖЖЖ
「何だ、そんなもんか?」
止めを刺す為にワガリスは拳を打ち込んできた。拳を軽々と避けるとその腕を掴みワガリスを振り回して地面に叩き付ける。
周囲からどよめきが起き、ワガリスもまた驚いていた。
目を見開いて倒れている彼を蹴り飛ばすとジャルジュを10人程巻き込んで吹っ飛び
地面に激突した。
「そんなもんか」
ポツリと呟くとワガリスが飛び掛かってくる。
目は血走り、雄叫びを上げながら突進する姿は圧巻の一言だ。
タイミング良く、横に蹴り飛ばすと今度はバエラを巻き込んで吹っ飛んだ。
バエラから無理矢理俺の大剣を奪うと
それを振り回しながら近付いてきた。
三回ほど斬撃を避け、懐に潜り込むと剣を持つ腕を内側から殴り付ける。
「グアッ!」
呻き声と共にワガリスが大剣を取り落とした。
怯んだ隙に側頭部に蹴りをお見舞いしてやると彼は吹っ飛んでそのまま動かなくなった。
歓声を上げたり野次を飛ばしてりしていたジャルジュ達だが、これには騒然となった。
モルザンが慌てて飛んでくるとワガリスの胸に耳を当て、口に手を当てたり忙しそうにしている。
やがて溜め息をついてその場に座り込んだ。
「生きてるぞ!」
ジャルジュ達は安堵したように笑うと、勝者に
拍手を送った。
当の勝者は自分を抑えるので精一杯だが。
「グッ、ガッ。・・・っはあ」
ゼーゼー言いながら何とか衝動を押さえ込みその場に座り込む。
お疲れ様、と言ってルナが魔腕を使って立たせてくれた。
そしてジャルジュ達に向き合うと彼等は片膝を
ついて最大の敬意を表した。
「やめてくれ、俺は対等な立場で仲間になりたいんだからよ」
そう言うと戸惑いながらジャルジュ達は立ち上がった。
同時に意識を取り戻したワガリスが飛び起きて
此方に歩いてきた。
「あんたの強さ見せて貰ったぜ、これからはあんたと共に戦おう。よろしく頼むぜ?兄弟!」
「兄弟か・・・。まあ悪くない、
よろしくなワガリス!」
握手をするとジャルジュ達から歓声が上がった。
仲間は増えたが眠っている奴等をどうにかしねえとな。
ふとルナを見るとなにやらバエラとコソコソ
話している。何やってんだ?
「おい、ルナにバエラ!何してる!」
ビクッと体を震わせると恐る恐る此方を向いた。バエラはやれやれというように苦笑いを浮かべて此方に歩いてくる。
「眠り続けている者達を起こす段取りを話していたのだよ」
「本当か!?どうやったら起こせる?」
「簡単なことだ。今この街は巨大な結界が張られている、それを壊してやればいい」
「なら、今すぐやってくれ!」
「結界は内側から壊す事は出来ないのだよ。本来閉じ込めるために使うのだからね。そういうわけでリュークが来るまで待つとしようじゃないか」
「・・・そうするか」
仕方ない、暫く待つか。
笑い声に気付いてアジャス達が階下に降りてくるとその場は宴会のように盛り上がった。
妙にアジャスは機嫌が良く、
常に笑っている。・・・怪しいな。
「おい、アジャス!ちょっと来い」
「おう、何だよ大将!」
ニコニコしながら此方に来る。
何なんだ、一体?
「やけに機嫌が良いが、何があった?」
「よくぞ聞いてくれたな!大将!」
アジャスは嬉しそうに近くにいたジャルジュの娘を抱き寄せると高らかに声を上げた。
「私、アジャス・ウォーリンデはノルノ・カースレフと結婚することになりました!
お前ら、ノルノに手を出したら殺すからな!」
一瞬その場を静寂が支配した。
「「はぁぁぁぁあ!?」」
「「おめでとう!!」」
「「死ねぇぇぇぇえ!!!」」
ひとしきり叫び終わるとワンテンポ遅れて歓声や拍手が上がった。
ノルノをよく見ると、この間アジャスが口説いていた相手だ。
唖然としてアジャスを見ると、何を聞きたいのか察したようで、胸を張って笑う。
「大将が怒鳴った後な、ジャルジュの女を惚れさせたいなら勝負に3回勝てって言われたんだよ。で、さっき大将が戦ってる間に3回目の勝負に
勝ったわけよ」
「そうかい」
短く返事をしてルナを見るとフルフルと首を振って否定してきた。三回勝負はジャルジュ全般に
言える事じゃないらしい。
「何はともあれ良かったな。大切にしろよ?」
「当たり前だ!」
嬉しそうに笑うアジャスの顔は幸せに満ち溢れていた。
殺人鬼にだって心はある。
少し感傷的になっていると、外でバリーンッというガラスが割れるような音がした。
バエラに目配せすると彼は頷いて答える。
どうやらリュークが結界を破ったみたいだな。
さて、マイソーカに戻らないとな。
いかがでしたか?
次回から登場人物によるQ&Aが
後書きになります。なのでキャラに対する質問をtwitterで募集します。
気になることがあったら書いてみて下さい。
全てに回答します。
それではごきげんよう。




