第十七項 拭い去れない違和感
どうも。新参猫です。
何とか土日も投稿できました。
最近様々な人にTwitterで拡散して頂いております。本当にありがとうございます。
出発してから1日と11時間が経過した。
総勢百人の兵士達は皆、空の旅を満喫している。綺麗な夕焼けが見えるし、とても心が癒されている実感があるな。
ドラゴンは頭が良い。人間の限界を知っているのか凍えるような高度を飛ぶことはない。
気が利くなドラゴンは。
飛行速度はかなり速く、本来なら3ヶ月はかかる筈の行程を驚く程の短時間で移動している。
何だかんだ呑気に旅をしていた一行は前方に尖った山々を見つけた。
懐かしい風景を前にレティアは嬉しそうに笑う。
「リーデント高山地帯です!
あれが見えたということは首都は目の前です!」
笑っているレティアに反して他の兵士達は表情を硬くした。当たり前だ。敵陣に着くんだからな。むしろレティアは喜びすぎだ。
「レティア!嬉しいのは分かるが気を引き締めろ!」
「わ、分かっています!」
「ならいい。第一部隊!ここで分かれるぞ!
リューク、アンセル!頼んだからな!」
「了解」
「はいはい。君の武運を祈るよ」
リュークとアンセルが隊から離れると半分の兵士もそちらに着いていった。
テヨンが別れ際に雄叫びを上げるとドラゴンも
一緒に鳴いた。
完全に二つに分離したのを確認して挨拶代わりに腕輪を掲げる。リュークもそれに答えて腕輪を掲げ、ドラゴンに何かを伝えた。
するとドラゴンはグガァァァアと鳴いて
飛ぶ速度を上げる。後続の兵士達もそれに続くようにして速度を上げた。
あっという間にリューク達は遠くに行ってしまい、見えなくなった。
それから10分程すると視界に城らしき影が映った。ソルネアスまでは、まだかなり距離があるはずだ。ここから見えるという事は相当大きいな。
「お前ら、覚悟を決めろ!じきに敵陣だ!」
「「おうっ!」」
ЖЖЖ
「あれが城塞都市ソルネアスか」
近付いて見るとその存在感に圧倒される。
高く分厚い城壁。幾つもあるバリスタ。更に二重の城壁で囲まれている金属でできた王宮。荘厳に構えるそれに畏敬の念を禁じ得ない。
恐らく大将格は王宮にいるだろ。まあ勘だが。作戦を伝えるために俺は兵士達を振り返った。
「よし、王宮に直接殴り込むぞ!
レティア、中の構造は分かるな?」
レティアは当然の事を聞くなというように軽く睨んだ。睨まなくても良いだろ?興奮しているのは分かるけどよ。
「当たり前です。長い間住んでいた所ですよ!」
「よし!なら案内はレティアに任せる。合図したら急降下するぞ!」
下を見ると敵の兵士がバリスタを此方に向けて狙いを定めている。チッ、面倒な事をしてくれる。
「ノーグ!思いっきり叫んでやれ!」
グルルと返事をするとノーグは息を吸った。
急いで他の奴らに耳を塞ぐように伝えるのと
ノーグが口を開けるのが同時だった。
「グラァァァァア!!」
ノーグは嬉々として星を落とす程の雄叫びを上げた。耳を塞いでいた筈だよな?キーンッて音がするんだが。
後方を確認すると皆同様に耳を押さえて苦笑いを浮かべている。やっぱりそうなったか。
あらためて下を見ると敵の兵士達は動きを止めている。上手く怯んだな。今がチャンスだ!
「降りるぞ!ノーグ!」
グルルルと答え、ノーグは流星のように急降下する。他のドラゴンもそれに続いた。
バリスタからは何も飛んで来ない。無事侵入成功だ。
ЖЖЖ
ドラゴンから降りるとすぐに敵に囲まれた。
どうやら敵の真っ只中に降りたらしい。
回りには二重に張り巡らされた城壁があり、俺達は丁度その間にいる。
まずいな地上の奴等は相手するとして城壁にいるバリスタ兵をどうにかしねえと。
色々と思案していると予想外なことにアジャスが叫んだ。
「ルージャ!他のドラゴンを連れて飛べ!この腕輪を着けてねぇ奴は殺すか喰うかしてやれ!」
ルージャはグルルルと他のドラゴンに向かって唸った。そして次の瞬間全てのドラゴンが息を吸った。
おい馬鹿、これってまさか・・・。
「全員耳塞げっ!!」
「「グラァァァァア!!」」
またもやドラゴンの雄叫びが辺りに響いた。
そして敵兵が怯んだ瞬間、ドラゴン達は空に飛び立っていった。
アジャスはチャンスとばかりに剣を抜くと次々と敵兵を切り裂いていく。そして振り向いて一言。
「何やってんだ大将!折角の祭りだ!楽しめよ?」
アジャスはニヤッと笑った。生意気なこと言いやがって。だが、嫌いじゃない!
「違いない!お前ら!一人でも多く殺してやれ!」
「「おぉぉぉお!!」」
出遅れた分を取り戻すように他の兵士達も威勢良く敵に向かっていった。
ざっと見た感じ敵は100くらいしかいないな。
とするとこの戦闘自体はすぐに片がつく。
問題はその後、王宮の探索だ。
どうしたものかね。
ふとアジャスを見るといつになく楽しそうに剣を振っている。敵兵が彼に向かって剣を振り上げると1秒経たない内に首が落ちて真っ赤な噴水に成り果てた。既に数十人の返り血を浴びてアジャスの鎧は既に真っ赤に染まっている。
あーあ、血濡れの人斬りと呼ばれた時代に逆戻りしてるな、あれは。
「て、撤退しろー!」
60人程殺されたところで敵兵が背を向けて走り出した。何だよ逃げるのか。
なら利用させて貰うぞ?
「追うぞ!ただし殺すなよ!レティア、敵は何処に向かうと思う?」
「あちらの方向だと、第二の門があります。王宮に逃げ込むつもりですよ!」
なら親玉もそこにいるだろ。そう思って自軍の兵士と共に走り出した。
5分程おいかけっこを続けると門の前に辿り着いた。そこで何故か敵が此方に再度突撃してくる。
「諦めて死にに来たか?」
足を止め大剣を構えると視界の端で何かが光を反射させた。嫌な予感がして辺りを見回すと両側の城壁の上に弓兵が大量にいた。
しかも全員矢をつがえて此方を狙っている。
これは合図があればすぐに射掛けるやつだな。
クソッ、嵌められた。
半分諦めたその時だった。
「グラァァァァア!!」
空で旋回していたドラゴン達が一斉に弓兵に襲いかかった。ある者は爪で引き裂かれ。ある者は噛み殺される。またある者は空高く連れ去られそのまま上空から落とされた。
目の前に仲間の兵士が落ちてくると敵は顔を引き吊らせる。
そのまま斬り殺す為に駆け出そうとするアジャスを抑え、一歩前に出た。利用しないで殺すには惜しいからな。
「メルフィは何処にいる?」
「い、言ったら助けてくれるのか?」
「さあな、あいつら次第だ」
そう言って空を指差す。上空ではドラゴンの群れが旋回し続けている。さあどうする?と聞くと敵は次々と武器を捨て、その場に座り込んだ。
「メルフィ隊長は謁見の間で待機されています・・・」
「そうか、情報感謝する。・・・部屋の中に入ってろ。そうすればドラゴンも食いに来ないからな」
「っ!・・・ありがとうございます」
敵兵は武器をその場に置いて悔しそうに唇を噛んで門の中に駆け込んでいった。
「レティア、謁見の間に案内してくれ」
「分かりました」
そう言うとレティアは門の中に進んでいった。
ЖЖЖ
王宮に入ると全てが黒く輝いていた。
唖然としてレティアを見ると自慢げに胸を反らした。
「王宮は全てモルネア合金で造られています!だからとても固いですし、劣化も遅いんですよ?」
その後も嬉しそうに語り続けているが背後を気にしてほしい。チャンスだと言わんばかりに柱の影から敵が躍り出た。
物音でようやく気が付いたのかレティアは背後を振り返ると敵を本気で睨み付けた。
「そこ!人が話しているのに無視するとは何事ですか!」
剣を構えたまま敵は動けなくなった。
相変わらず怖いな。俺も一回喰らったけど本当に動けなくなるんだよ、あれは。しかし、あのときは本当に焦ったなあ。まさか同じタイミングで沐浴するなんてな。
馬鹿なことを考えていると、いつの間にか囲まれていたようだ。レティアは大剣を抜いて睨み付けた敵を切り裂いた後、指示をまっている。
アジャスは口元に笑みを浮かべ、今か今かと合図を待った。
ざっと見た感じ20人くらいしかいないか。
あまり焦ずに武器を構え直す。
「ルナ!鉱山の方から連絡は?」
「あっちはフォルスが多くてマタロフの鐘に苦戦しているみたいね」
連絡魔石を片手にのんびりと答える。
そういやルナが戦ってるところ見たことねえな。
まあもう少し様子を見るか。
しかし敵は待ってくれなかった。敵将の合図と共に一斉に斬り込んでくる。
魔石を見つめるルナにもまた剣が振るわれた。
するとルナの背中から何か黒いモノが生えて剣を受け止めた。
それは真っ黒な腕のようだが掌のサイズが普通のものに比べて5倍も大きい。その上、手の甲には不気味な青い目があり、ギョロギョロと動いて辺りを見回している。
「野暮な男ね。レディには優しくするものよ?」
一瞬ドキッとするような笑顔で敵を見つめると、魔石をポケットにしまう。そしてもう一本腕を出すと敵の頭を握り潰した。
「やるな!ルナ!」
「お褒めに預かり光栄よ。後ろに気を付けなさいな?」
振り向き様に剣を振り抜くと敵が崩れ落ちた。何とか血に触れないように剣を拭う。
アジャスは高笑いしながら敵を切り捨てると、此方を向いた。
「ルナさん!今のは何だ!?」
「魔術で作った腕よ。魔腕と呼んでいるわ。
ほら上に注意して頂戴」
アジャスが上を向くと彼に短剣を突き立てる為、天井から敵が降下してきたところだった。慌てて横にステップして回避すると、アジャスは無防備な脇腹に蹴りをいれる。
グエッと情けない呻き声を上げながら敵兵は俺の足下に吹っ飛んできた。
彼が切り札だったようで、他の兵士達は我先にと逃げ去る。薄情な奴等だな。
残された敵兵は此方を睨み付けている。
「クソッ殺せ!」
何か言ってるけど、どうする?という目でアジャスは此方を見てくる。どうしようか?
敗残兵って扱いに困るんだよな。
「一つ聞こう」
身体を屈めて話し掛けると敵兵は身を固くして警戒する。何だよ回答次第で助かるってのに。
「最近ようやくデレてくれるようになった姫君と最近知り合った妖艶な猫耳ロリ淑女。
どっちがいい?」
レティアとルナがピシリッと固まった。
誰もお前らの事とは言ってないぞ?
敵兵は暫く考えていたが、やがて俺の目を
まっすぐな目で見てくる。
「乳はどちらの方が大きい?」
次の瞬間彼はルナの魔腕によって頭を叩き潰された。まるで蚊を叩くように一切の迷いがない一撃だ。
恐る恐るルナを見ると胸に手を当てて俯いている。対するレティアは安心したように
胸を撫で下ろした。
アジャスが堪えきれずに笑うとルナは魔腕のデコピンで彼を吹っ飛ばす。
「悪かった、ルナさん!」
「黙ってなさい。・・・否定するのが礼儀よ」
うなだれてルナは先に歩き出した。
「ルナ!そっちじゃないです!此方の大きい階段を使いますよ!」
ルナは完全に打ちのめされたようで猫に姿を変えてトボトボとレティアに付いていった。
本当に哀れな奴だ。
原因は俺だし後でフォローしないとな。
ЖЖЖ
二階に上がると部屋がズラリと並んでいた。
「ここは何だ?牢獄みたいに部屋が多いが」
「国の重役達の部屋があるところです」
そう言ってレティアは一つ一つの部屋を懐かしむように説明して歩いた。
「ここは騎士団長の部屋です。彼は最後までこの城に残って奮戦しました」
「こちらは宰相の部屋です。彼は野望を秘めていましたが国をより良くするための野望でした。事実彼のお陰で傾いていた財政が立て直されましたよ」
微笑を浮かべているがどこか淋しそうな声でレティアは説明を続ける。元公国軍の兵士は涙を堪えて聞くものもいた。皆それぞれ思い出があるのだろう。30分程歩くと上の階に上がる階段に辿り着いた。
「ここを昇れば謁見の間です」
レティアは表情を改める
無事に辿り着けたのはいいんだが。何故誰も邪魔しに来ないんだ?ガセネタを掴まされたか?
と、その時。
『いらっしゃ~い。どうぞあがってね~』
間の抜けた声が頭の中に鳴り響いた。
他の奴等にも聞こえたらしく、全員目をパチクリさせている。
ルナを見ると人の姿に戻り、真面目な顔でコクリと頷いた。
「メルフィよ。何かあると見て間違いないわね」
「なら警戒するとしよう。お前ら準備はいいかっ!?」
「「おうっ!!」」
俺を先頭に一斉に駆け出した。
ここまでろくに戦わなかったが何故だ?
順風満帆なのはいいが、不安になるな。
いかがでしたか?ようやく終りが見えてきました。
あと五項ほどで一章が終わると思います。
それではごきげんよう。




