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ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第一章 種間戦争
12/52

第十項 隠し事は災いのもと

どうも新参猫です。

一気にアクセス数が落ちました。それでも読んでくれている読者様に感謝です。


「ほらお茶だよ」


「お菓子はある?」


目を輝かせるユルナス。だがアンセルは申し訳なさそうにエヒネの入ったカップだけを配った。

ただの紅茶じゃないあたり気が利くな。アンセルはきっと出世するとみた。


「ごめんね。今回は無いんだ」


「そっか・・・。ん、これ甘くて美味しい」


「エヒネっていうんだ。しかもレティア特製レシピだから凄く美味しく出来るんだよ」


それは意外だ。

お姫様だし、剣ばっか振ってる

イメージしかなかったから料理はできないと

思っていたが。案外出来るんだな。


「へぇ~。レティアさん料理も出来るんだ~」


「今日の朝食で使ってたジャムもレティアが作ったんだ」


「マジか。てっきりアンセルが作ったんだと思ってた。今度礼を言わないとな」


「そうしてあげて。それじゃお二人さん。ごゆっくりどうぞ」


アンセルはスタスタと会議室を出ていき、静かにドアを閉めた。

細やかな気遣いが出来る割には

盗み聞きしたがるんだよな。何でだ?


「色々聞きたいことがあるが。その前に、これは俺からのお願いであって強制はではない事を前提に聞いてくれ。いいか?」


「分かった、話して」


「できれば知ってることを全て話してほしい。仲間内での腹の探り合いは第一部隊じゃご法度だ。それに人を疑うのもあまり好きじゃない」


「・・・分かったよ。知ってることは全部話す」


「ありがとう。まず、アルロートでユルナスは何をしてたんだ?」


エヒネに夢中になっていたがこちらに

向き合った。

普段のような柔らかい表情ではなく、

ひどく硬い表情でカップを静かに置く。


「アルロートで?作られたばかりのジャルジュのお世話をしてた」


「作られた?生まれたじゃなくてか?」


「うん。ジャルジュが作られ始めたのはここ数年のことなの。始祖様がいなくなる直前に始まって、エッカがリーダーになってから本格的に作られた」


「あんな凄まじい奴、どうやって作るんだ」


無神経に聞いたことを俺は悔やんだ。

ユルナスは悲しそうな目をして俯いた。

そして苦しそうな声で一つ一つ吐き出すようにして語る。


「魔術でサピエと動物を無理矢理合わせるの。だからジャルジュの殆どが最初は言うことを聞かない。ならどうやって従えてるのかって思うよね?」


「ああ、あんなに強い奴らだ。そう簡単に人に使われる訳がない」


コクリと頷いてユルナスは続ける。


「その通りだよ。だから私達はある道具を作ったの。その道具がマタロフの鐘。何でか分からないけど、鳴らすだけでジャルジュは皆動けなくなるの」


鐘か・・・。

鐘と言えば金属。

金属と言えば鉱石。

鉱石と言えば鉱山。

これだ。


「マタロフの鐘・・・。それを作るのに北の鉱山は関係あるか?」


「うん、北のある山から採れるシュリビス鉱石を錬成して作ってる。よく分かったね?」


そういうことか。マタロフの鐘があるかぎり

あいつらはフォルスに逆らえない。

だから鉱山を潰しておきたかったのか。

だが北を潰したあとどうする気だ?


「分からねえな。ま、直接聞くしかないか」


「リュークになにか聞きたいの?」


「ああ、どうせその内来るだろうから気長に待つさ」


「え?でも、一週間後にまた来るって言ってたよ?」


早っ!ユルナスの事が心配なのは分かるが、そんなに早く来る必要あるか!?

あいつもよく分からない奴だな。

まあこっちとしては有りがたい。

聞きたいことが山積みだしな。


二人して暫く黙っていると、ユルナスが

ここからは独り言だけど、と話を切り出した。


「あの子達二人はね。最初に作られたジャルジュなんだ。始祖様が作ってそのまま私に預けていったの。

最初は凄くやんちゃで、よくアルロートを出て森で過ごしてたの。その度に迎えに行くと、自由になりたいって二人とも口を揃えて言ってた」


自由になりたい、か。

あいつらも誰かに従うのは嫌って訳か。

おおよその目的はこれで判明したな。


「・・・大体状況は分かった。だがまだ分からないんだが、何でユルナスは逃げてきたんだ?」


「言ってなかったけ?それは―――。」


「もし、フォルスから逃げるならわざわざ敵に投降する必要は無いだろ?何で俺達のところに逃げてきた?」


目を丸くしてユルナスは驚いている。

これでも隊長だそれぐらい気付く。

確かにゴロツキ部隊の隊長だが。

頭のよさはレティアといい勝負だかな?


ばつが悪そうにユルナスは落ち着きなく手を組んだり戻したりしている。


「逃げたんじゃなくて、見にきたんだよ」


「何をだ?」


「サピエの間で獣の旅団って呼ばれてる部隊があるって聞いたから。もしかしてサピエに協力してるジャルジュが既にいるんじゃないかと思ったの」


何だよそういうことか。てか、誰だ?

そんなあだ名つけた奴。

本国の連中だったら殺させるぞ。

うちの部隊にはファミリーのドンだっているからな


「なら、あては外れたろ?」


「いい意味でね。ジャルジュに偏見なしで接せられるサピエがこんなにいるとは思わなかったよ。だからシュドムさんにリュークと会って貰ったんだ」


「ちょっと待て。ユルナスがリュークを呼んだのか!?で、わざわざルナがそれを伝えにきたのか?」


「ルナちゃんはテヨンが心配だったから伝えて欲しかったんだと思うよ?私は頼んだ覚えは無いしね」


「まったく、知らないうちに色々事が進みすぎてる。で?どうやってリュークに連絡したんだ?

ユルナスが町を出たのはレティアと一緒に助けに来たときだけの筈だ」


「それはね、これを使ったの」


ユルナスはスカートのポケットから手のひらサイズの石板を取り出した。

見た目は正方形の至って普通な石板だ。

からかっているのか、

それとも何か特殊な使い方があるのか?


「どうやってこれで連絡するんだ?」


「これにこうやって魔力を込めるとね」


ユルナスが少し魔力を込める(俺にはわからないが)と石板に文字が浮かび上がった。


「これに向かって話すと話している相手の石板と私の石板に喋った内容が文字になって出てくるの」


「へぇ、便利だな。これを持ってるのはユルナスとリュークだけか?」


「あとルナちゃんも持ってる」


「三人だけか・・・。俺にも使えるか?」


「サピエが使うには魔昌石が必要かな。魔力で動くみたいだから」


「残念だ。ちなみに、これユルナスが作ったのか?」


「違うよ?リュークが森で貰ったの」


「一体誰から?」


「えっと、誰だっけ?ちょっと聞いてみるね」


そう言うと石板に向かって話始めた。

石板を見ると文字が次々と出ては消えてを繰り返している。


ユルナス [この石板誰に貰ったんだっけ?]

リューク [森で会った老人。名前はバエラ]

ユルナス [そっか、ありがとね。また明日]

リューク [また明日]


「名前が出たあとに喋った内容が出るのか。本当に便利だな」


「そうなの!これで離れててもお話し

出来るんだ♪」


嬉しそうに石板を胸に抱いてニッコリと笑う。

ああ俺が絵を描けたなら今すぐ模写を始めるのに。

ってそんな馬鹿なこと言ってる場合じゃない!

また出たぞバエラって名前。

アンセルに協力して、更にリューク達にも道具を与えてる。一体何者だ?


「バエラ・・・か」


「ん?何?」


「いや、何でもない。リュークが来た時にまたここに来てくれ。貴重な情報をありがとう。今度はお菓子つきの話し合いにするつもりだから楽しみにしとけよ?」


「本当に!?嬉しい!」


太陽のような笑顔とはまさに目の前のユルナスを表すためにある言葉だろう。

リュークにみせてやれないのが残念だ。


話は終わりだ、と伝えるとユルナスはスキップしながら会議室を出ていった。

さて問題はいま棚の裏で話を聞いていた奴だ。


「もとから聞かせるつもりだったんだが。いい加減、人に聞かせてくれって頼んだらどうだ?」


案の定棚が横にずれてアンセルが出てきた。

恐らく外から隠れ場所に侵入できるようになってんだろうな。


「あれ。またバレてたんだ」


「まぁ、聞くなとは言ってないからな。ほら、そこに座れ。お前にも少し聞きたいことがある」


「はーい」


少し不服そうな顔をしている。

が、真面目そうな話題だと感ずいたのかすぐに

表情を改めた。


「お前。バエラと連絡はとれるか?」


アンセルはのんびりと構えていたが、いきなり

核心を突かれて驚いたのか飛び上がった。

面白いな。もう一回やらせたい。


「そ、その質問に答える前に聞きたいんだけど。いいかい?」


「言ってみろ」


「か、仮にだよ?僕がユルナスと同じ石板を持っていたとして、バエラと連絡を取っているとしたら怒る?」


目を合わせようとすると、アンセルの目がせわしなく動き回ってそれを阻止する。

お前そんなことしてたのか。

なら俺より情報を持ってんだろ。

クソッもっと早くこいつに情報吐かせりゃ

良かった。


「これからの行動次第で怒るか決める」


リュークを参考に表情を無くし、言葉を単調にしてみる。

すると効果があったようで、おずおずとこちらを見て一言。


「・・・どうすればいいのか教えてくれるかい?」


はい、珍しく俺の勝ち。

後はずっと俺のターンだ。

最近詰めが甘くてアンセルに逃げられっぱなしだったからな。いい気分だ。


「バエラに今すぐここに来るように連絡しろ。まさか、いまだに北に居ないだろ?」


「分かった。けどすぐに来れないかもよ?」


否定しないところをみると、やはり近くに滞在してるな。

リュークに石板を渡したことも考慮すると、あちこちに拠点があるとみた。


「いや、それは無い」


「何で分かるのさ?」


「勘だ」


「結構当たるから侮れないんだよね。シュドムの勘って」


そう言うと懐から見覚えのある石板と手のひらサイズの丸い石を取り出した。


「そっちの石が魔昌石か」


「そう、バエラから貰った」


「じゃあその石板もか」


「いや?これは先祖代々伝わる家宝だよ?」


「嘘つけ」


「いや、本当に」


「マジかよ・・・」


アンセルに連絡をさせると、バエラとやらは数日以内にお邪魔すると返事をした。

北にいたらここまで来るのに三ヶ月はかかる。

ほらみろやっぱり近場にいた

如何でしたか?これからも細々と続けていきます。どうかお付き合い願います。

それではごきげんよう。zzz

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