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ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第一章 種間戦争
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第十一項 祭りの準備 (前編)

どうも新参猫です。今のところ何とか毎日投稿できています。これからも頑張ります。


五日後――。


見張りの兵士から怪しい奴後来ていると連絡が

あった。

すぐにアンセルを呼びつけて町の門まで行くと、黒いコートに身を包んだ上品な老人が兵士に

取り囲まれている。


アンセルが来たことに気付くと、にこやかに笑いながら此方に向かって手を振った。


「久しぶりじゃないか。アンセルよ」


「ご無沙汰してます。老師」


「そちらがシュドム殿か。成る程、よい目をしているようだね。私はバエラ。バエラ・ムンドルトだ。お招き頂いたこと感謝する」


「感謝されるいわれはないがな。バエラ、あんたは敵か?味方か?」


剣の柄に手をかけて威嚇する。

が、バエラはまったく意に介さず涼しい表情で

答えた。


「どちらでもない、では答えにならないかね?」


・・・喰えない爺さんだ。こういう奥が見えない奴の相手は嫌いだ。

本来なら切り殺しているが、ジャルジュ相手に

一歩も引かないことを考えると

戦うべきじゃない。


「聞き方を変えよう。あんたはアンセルの味方か?敵か?」


「味方だが、関係があるのかね?」


あ、それなら問題ないな。

アンセルが敵に回ることは無いと思うし。

なんだよ心配して損した。

剣から手を離して笑ってやるとバエラは拍子抜けしたようでポカーンとしていた。


「ある、味方の味方は俺の味方だ。そんな訳でようこそマイソーカへ。立ち話も野暮だ、中に入ってくれ。案内しよう。

おいアンセル!おt―――。」


「お茶の用意ならしてあるよ。会議室に持っていけばいいかい?」


「おう、さすがだな!」


やれやれと溜め息をつくアンセル。

いや誉めたつもりなんだが、何で溜め息をつく。

まあ、今はバエラを案内しないとな。


ЖЖЖ


会議室にバエラを案内すると丁度良いタイミングでアンセルがお茶を持ってきた。

お茶を置いて出ていこうとするのを引き留め、適当な座席に無理矢理つかせる。

盗み聞きされるのはごめんだ。


バエラはお茶を一口飲むと少し顔をしかめて、

アンセルを見る。

アンセルはしまったという顔をして肩をすくめた。


「暫く会わないうちにお茶の入れ方が下手になったようじゃないか」


「老師のように味の違いが分かる者がおりませんので、ずさんになっておりました。申し訳ありません」


「うちの部隊でまともに紅茶を飲むのはレティアとユルナスくらいだろ。他の奴らは皆酒を呑むからな」


カラカラと笑いながら言ってやるとバエラは苦笑いを浮かべてアンセルを見る。

対するアンセルは頷いて何かに答えた。

おい、そこで何のやり取りがあったんだ?


表情を戻してバエラは再びこちらを向くとカップを置いた。


「さて、私をここに呼んだ理由を聞かせていただけるか?」


「まだ詳しくは話せないが。あんたに頼みたいことがある」


「ほう、言ってみなさい」


「空を使ってなおかつ、大人数で移動できる手段に宛はあるか?」


アンセルは可哀想に、と言って額に手を当てている。失礼な奴め、正気だぞ俺は。

対照的にバエラは興味深いというように身を乗り出した。


「これはまた突拍子の無いことを言う。だが答えはイエスだ。一体何処に行くというんだね?」


あるのか!本当に訳が分からない奴。

まあ、質問した俺もいい勝負だが。


「悪いがそれはまだ言えないな。暫く待って貰いたい」


「具体的にはいつ頃になるのか教えて頂けるか?」


目を輝かせて続けざまに聞いてくる。

楽しみなのは分かったから待っててくれ。


「分からない、恐らく二日後だと思うが、リューク達が次に来るまで待って貰うしかない」


リュークの名前を聞くとバエラは嬉しそうに微笑んだ。

やっぱり知り合いか。

まぁそうだと思っていたけどな。

リュークからも聞きたいことが山ほどできた。

面倒臭いな。忘れよう。


「ほぉ、リュークが来るのか。ならば待たせて貰おう。彼とも久しぶりに会っておきたいのでね」


会っておきたい、か。

こいつ一体どこまで関わってるんだ?

本当に分からない奴だ。


「そうしてくれ。アンセル空き部屋に案内してやってくれ」


アンセルが立ち上がると手でそれを制止する。

アンセルは失礼しました、と言って一歩下がり、一礼した。

おい、アンセルが俺よりも言うこと聞いてるぞ。まぁ老師とか呼んでるくらいだ。

きっと何かあるんだろう。


「お気遣い感謝するが、その必要は無い。移動式の家を使ってここまで来たのでね。そこで寝泊まりしよう」


「そうか、なら食料を運ばせよう。何か食べたいものはあるか?」


その問いに対してもバエラは首を横に振った。

意図的に関わることを避けているのか?


「いや、結構だ。大抵のものは内地の市場で買ってあるのでね」


「そうか、ならリュークが来たら連絡しよう。アンセル頼んだぞ」


「了解。老師、家の位置を教えて頂けますか?」


「町の東側の森に停めてある。そこまで遠くはないのでね。すぐに分かると思うが、見付からなかったら連絡魔石を使いなさい。それではまた後日会おう」


バエラは立ち上がって指をパチンッと鳴らした。するとバエラの姿は煙となって消えた。

アンセルの方を向くとそう言うものだ、と言わんばかりに頷いてきた。

さて、リュークが来るまでに色々用意しないとな。


ЖЖЖ


まず向かった先は第一部隊の兵舎だ。

どうせ昼間から飲んでいるだろうと思っていたが意外なことに真面目に模擬戦をして訓練していた。


「珍しいな!お前らが真面目に訓練なんて」


階段近くで休んでいるアジャスに声をかけると、彼はゲラゲラ笑った。


「部隊全員テヨンに腕相撲に負けたからな。揃いも揃って実力を磨いてんのさ」


「そう言うお前も負けてんだからな!」


テヨン相手に殴りあっているザックが声を張り上げた。

数人の兵士が笑い声をあげるとアジャスは機嫌を損ねたようで、不機嫌そうに叫ぶ。


「今笑った奴等全員俺と戦えよ?満身創痍にしてやる!」


野太い悲鳴が上がり、謝罪する声もしたが

アジャスは知らん顔をしている。


「程々にしてやれよ?」


「大将は甘いな。ああいう奴は一回ぶん殴ってやらないと分かんねえんだよ。で、わざわざここに来るってことは何かあんだろ?」


「そうだった、忘れるところだった」


そこらに落ちている酒樽を立て、その上に立って叫んだ。


「お前らよく聞け!」


ピタッと模擬戦が全て中断された。

そして全員がこちらを真面目な顔で見ている。

それでこそ訓練した甲斐があるというものだ。

ニヤリと笑って話を続ける。


「今俺達は数で負けそうだ!分かるな?」


「「おう!」」


何故こんなに弱気な事を言うのか不思議がっている兵士が数多く見受けられる。

が、気にせずに叫ぶ。


「なら、その数を補えば勝てる!だが、王国の力を借りるのは癪だ!」


「「そうさ!あんな奴等に力を借りるなんて死んでも御免だ!」」


「なら、別のところから力を借りるしかない!お前らの中に仲間が数多くいる奴等がいるな?」


「「おう!」」


半数程が声をあげた。

大体50人くらいか。十分だ。


「そいつらは今すぐに全員をここに呼べ!手紙でも何でも使え!馬はいくらでも貸してやる!」


「「分かったぜ大将!」」


「以上だ!作業にかかれ!」


ソロゾロと兵士が自室に戻っていく。

樽から降りると、ザックが此方に歩み寄ってきた。


「おい、良いのかよ?大将」


「何がだ?」


「何がだ?じゃないぜ、王国から禁止されてるだろ。勝手に兵士の増強なんてしてみろ、即行であいつら潰しに来るぞ?」


「大丈夫だ。腑抜けた王国軍に俺達が負けるわけがない。それにな国が気づく頃には恐らく俺達はここに居ない」


「・・・何を考えてんだ?大将」


「まあ、見てろ。最高の祭りが始まるからな」


そう言ってザックの肩を叩いて笑う。

やれやれと言うように首を振り、ザックも部屋に戻っていった。

さて、次は町長の所だ。


ЖЖЖ


町長の家につくと、いつも外で仕事しているはずのメイドが外に出ていないので扉をノックした。


「町長、今平気か?」


ドドドドという音を立てて走り、町長は扉を慌てて開けた。

相変わらず太っているがこれでも元傭兵らしい。今では商人兼町長としてマイソーカで暮らしている。


「これはこれはシュドム殿。一体どうなさいました?」


「明後日までに王国市場まで行って仕入れて欲しいものがある。買うものはこれに書いてある。支払いは王国からさせるから安心しろ」


そう言って紙を渡すと町長はサッと目を通す。

そして目を丸くして一言。


「こんなに大量の食糧を買い込んでどうなさるの

です?」


「悪いが機密事項だ」


「そうですか。ま、私も商人の端くれです。確かに承りました」


そう言うと町長は一礼して家のなかに駆け込んだ。これでよし。

後は新しい倉庫を作りながらあいつらが来るまで待つだけだ。


ЖЖЖ


作業はその日の内に終わった。

当初は人が抜けた第一部隊だけで何とかしようと思っていた。

が、レティアが手伝いを申し出てくれたおかげで第二部隊が全員作業の手伝いをしてくれたのだ。レティア様様だ。


ちなみにレティアは酔った時の事を気にしているらしく俺に極力寄り付こうとしない。

あれだけ泥酔してたのに記憶が残っているとは

難儀な奴。


「第二部隊に敬礼!」


感謝を込めて第一部隊全員に敬礼させる。

一糸乱れぬ敬礼に第二部隊からおぉ、と歓声が上がった。

俺達をなんだと思ってるんだ?

ゴロツキの寄せ集めだとしても俺が鍛え上げた

部隊だぞ?

これぐらいは出来る。


「第二部隊、これで作業は終了です。各自明日に備えて休養しなさい」


レティアがそう言うと第二部隊の兵士達は兵舎に戻っていった。

ちなみに第二部隊の兵舎は第一部隊とは別の場所にある。


「よし、お前らよくやった!兵舎に戻って好きなだけ呑んでろ!」


「「よっしゃぁぁぁぁあ!!」」


上品な第二部隊に対し第一部隊は本能の赴くままに地下の兵舎に走っていく。

残されたのはレティアと俺の二人だけだ。


レティアを見ると顔を赤くしてフーッフーッと呼吸が荒くなっている。

俺相手に緊張しているのか。


「無理すんな。決闘でもいいぞ?」


「い、いえ。大丈夫です」


何とか呼吸を落ち着けるとこちらに向き直って目を閉じて深呼吸をした。

プロポーズでもするのか?それは無いな。


深呼吸を終え目を開くと、レティアはゆっくりと話し出した。


「この間はご迷惑をお掛けしました。緊張を紛らせようとしてお酒を呑んでいた筈なのですが、いつの間にか泥酔していて。止めて頂いてありがとうございます」


「気にするな、そういう時もある。あと撫でて欲しいならそう言え」


「いや、あれは!その、えっと。・・・はい」


言い訳を必死に考えていたが、どうやらうまい

具合に思い付かなかったらしい。

素直に撫でて欲しい事を認めた。

こんなに可愛いこと言うなんて意外だな。


「嘘をつかないのはお前の良いところだな。

よしよし」


早速頭を撫でてやると、ビクッとした。が、すぐに力を抜いて撫でられている。

安心してくれるのは嬉しいが、何故警戒しないのだろうか?

後ろでニヤニヤしながら見ている奴が居るというのに。


「覗き見を止めて堂々見るとは見上げた根性だな?アンセル!」


「へっ?な、何故見ているのですかっ!?」


アンセルは頭の後ろで手を組ながらケラケラ笑う。

楽しそうで何よりだ。・・・覚悟しとけよ?


「いや、珍しく馬鹿夫婦が仲良くしてるからさ。目に焼き付けようと思ってね」


レティアは撫でている手を振り払うと、大剣を抜こうと背に手を伸ばす。

が、作業が終わった直後なので大剣を背負っていなかった。

その為、手は寂しく空を掴む。

すると何を思ったのか悔しそうな表情で振り向いて言った。


「シュドム。工具箱から釘抜きとハンマーを取ってきてください。あとノコギリもあるとありがたいです。」


「おう、任せとけ」


何をするのか分からないラインナップだが深く聞かないことにした。

聞いたら夜寝られない気がする。


「待って!レティア!話し合いで解決しない!?」


「そうですね。話し合いにしましょうか」


そう言った後にアンセルはしまったという顔をした。

レティアはニッコリ笑って大剣を取りに行く。

アンセルから助けてくれという目で見られたが黙殺した。

馬鹿め、これで少しは懲りろ。


その後アンセルは満身創痍になるまで話し合いを続け、一週間分のデザートを献上することで話がついたらしい。

いかがでしたか?キャラクター紹介を第一章の終わりに投稿する予定です。もっと早くに欲しい場合は感想で送って頂ければ、すぐに投稿します。

それではごきげんよう。

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