第十二項 祭りの準備 (後編)
どうも新参猫です。自分でエヒネを作ってみました。ジャムは林檎、果汁はレモンにしました。
意外と美味しかったです。
二日後―――。
王都に仲間をかき集めに行っていた連中と仕入れを終えた町長が同時に戻ってきた。
連れてきた仲間と共にザックは倉庫に町長が仕入れた荷物(殆ど食べ物)を搬入している。
こちらに気付くと仲間達に挨拶をさせた。
「済まねえな大将。まだ礼儀作法がなってねえんだ。だが、国に対する反骨精神は一級品だ。
うまく使ってやってくれ。おら自己紹介しろ」
ザックにどつかれた少年はこちらを睨むと
問答無用で殴りかかってきた。
それをあえて避けないで、
その拳に向かって殴り返す。
「グッ!」
ミシッという嫌な音を立てた手を押さえながら少年は改まってこちらを向いた。
「無礼な行為をお許しください。ザック・ザンドラが息子。ラクドスと申します」
息子の頭を一発殴り飛ばした後にザックはガハハハと笑って氷嚢を渡す。
「だから言ったろ?大将は滅茶苦茶強いってな。んで?大将。これで数は足りるか?」
「恐らくな。しかしこんなに集まるとは思わなかったぞ?お前だけで1000人連れてきたんだって?」
新しく集まった兵士は総勢3000人強。
元々マイソーカにいた兵士のおよそ10倍にあたる数字だ。
その内1000人はザック率いる大陸最大級の
裏組織パルバールの人間だ。
よくぞまぁ集めてきたもんだ。
「久々に戻ったらよ、丁度幹部が全員王国本部に来てたんでね。全員に腕に自信がある奴を連れてこいって伝えてら、これだ」
「よくやってくれた。けど、さすがパルバール。皆面構えが違うな」
「どうだかな。ま、そんなわけだまた後で話そうぜ!ほらお前も挨拶しろ」
「し、失礼します!」
「おう、また後でな」
これで後は搬入も勝手にやってくれるだろう。
そうだ町長のところに行って労ってやらないとな。
ЖЖЖ
コンコンと扉をノックすると町長が青い顔をして扉を開けた。
そしてこちらの顔を見るなり胸ぐらを掴んで前後左右に揺する。
「どういう事ですかシュドム殿!何故こんなにもゴロツキを集めたのです!?え!?何か正当な理由は有るんですか!?」
「落ち着け、町長。理由ならある」
そう言うと町長は手を離してこちらを見る。
何だよせっかく労いに来たのに、これじゃまともに話もできやしない。
「お聞かせ願いますかな?その理由を!」
一言いう毎に一歩ずつ近付いて来る。何でこんなに怖いんだ。
「悪いな。機密事項だ」
言い終わらない内に駆け出した。
後ろから町長の叫び声がきこえたが幻聴だと思うことにした。
ЖЖЖ
兵舎に逃げ込むとアジャスが連れてきた仲間を諌めていた。
何で連れてきて早々に不満が上がるんだ?
不満を言っている面々はこちらに気付くと各々の武器を構える。
あぁそういう事か。
まぁ予測はしてたが、こうも露骨だと笑えてくるな。
ワンテンポ遅れてアジャスはこちらに気付くと
小さな声で鞘有りで頼む、と言った。
仕方がないので鞘をつけたまま剣を構える。
そして一気に地上に向かって走り出した。
「逃がすか!」
「追うぞ!」
背後から叫び声と共に足音が響く。
よし、ちゃんと着いてきてるな。
ЖЖЖ
地上に出た後、直ぐに囲まれた。
どうやら待ち伏せされていたらしい。
まさか読まれていたとは、こいつら中々やるな。
追いかけてきた面々が追い付くとニヤニヤしながら言った。
「今なら詫びを一つ入れるだけで済ましてやるよ?アジャスの兄貴を顎で使いやがって、
このクズが」
久々にカチンときた。近くにテヨンが居たので彼に向かって叫ぶ。
「おい!テヨン。こいつらが殺されそうになったら俺を止めてくれ!」
「おう!分かったぞ青いの。そいつら俺の事を獣呼ばわりしたんだ。ボコボコにしてやれ!」
テヨンに頷いて答えると剣を抜いて自分の手の甲を浅く切った。
すぐに剣を鞘に戻した瞬間、何かが体の中でドクンと音を立てた。
途端に全身の血が沸騰したかのような感覚に陥る。
目が何時もより冴え渡り、
口元に自然と笑みがこぼれる。
頭の中で喰い殺せ喰い殺せと誰かが呟き続けた。
遅れて地上に出てきたアジャスが目を見開いて叫んだ。
「馬鹿野郎!大将を本気にさせる奴があるか!
今すぐ詫び入れて素直に働きやがれ」
「兄貴は下がっててくだせえ。こんな奴俺達で一捻りn―――。」
そいつはその後の言葉を言うことはできなかった。
気付いた時には壁に叩きつけられ、全身に激しい痛みが走っている。
「これでも優しく殴ってんだがなぁ?」
ユラリと他の奴等を見やり、大剣を肩に担いで右手の剣だけを構えた。
今度は三方向から同時に攻めてくる。
が、遅すぎだ。
左手で大剣を一振りして全員を吹き飛ばす。
さすがに怯えたのか少し尻込みし始めた。
そちらが来ないならこちらから行くぞ?
振り返りざまに背後にいる奴に一気に距離を詰め、剣で足を打った。
車輪に貼り付けられたように横に空中で回転してグエッと蛙が潰れたような声をあげて地面に落ちる。
次に目についたのは目の前の奴だ。
あぁこいつ最初に喧嘩売ってきた奴だ。
冷淡に四肢を剣で打ち据えてから大剣の腹で吹っ飛ばした。
飛びながら5人程仲間を巻き込んで地面に激突する。
すると他の全員が武器を捨てて土下座をし始めた。
「「す、済みませんでした!」」
謝る奴等を冷たい目で見ながらゆっくりと近付いて、一人一人丁寧に蹴り飛ばしてから武器を戻した。
「口ほどにもない。アジャスは俺と5秒は
斬りあったぞ?」
そう言って足早にその場を立ち去った。
辺りはシーンと静まり返り、誰も動けなくなった。
テヨンを除いて。彼は一人で拍手と歓声を上げている。
面白い奴だ。ああ無性に酒が呑みたい気分だ。
ЖЖЖ
一人で部屋に戻りさっさとノルト酒のボトルを開けて、グラスに入れた。
そして暫く放置してから一口飲んだ。
「っ!はぁ、やっと落ち着いた」
あのモードに入るのは戦場を除いて2回目だ。
1回目は部隊創設の時に兵士が徒党を組んで
襲ってきた時になった覚えがある。
そういえばあの頃はあいつらもろくに言うことを聞かなかったな。
コンコンと部屋の扉がノックされた。
「入ってくれ」
「失礼します」
扉を開けて入ってきたのは箱を抱えたレティアだった。
心配そうな顔をしてこちらに歩み寄るとベッドに俺を座らせる。
「何だレティアか。どうした?」
「どうした、ではないですよ。手を出しなさい」
あぁそう言えば自分で切ったんだった。
レティアは箱から包帯と薬を取り出して机に置く。
そして、隣に座ると布に薬を染み込ませて傷口を拭いてくれた。
「痛ててて。さすがに染みるな」
「文句言わないでください。第二部隊の兵士が皆怯えてしまいました。これでは訓練できませんよ」
「悪いな。躾をしてたんだが、まあこれからは無いだろうさ」
布を置いて今度は包帯を丁寧に巻いていく。
しかも剣を振るときにほどけないように巻き方を工夫しているようだ。
気が利くよなレティアは。
ふと手を止めて、顔をあげるとレティアはこちらを見る。
そして小さな声で撫でて下さい、と言った。
頭を空いた手で撫でてやるとフゥと息を吐いて
作業を再開した。
「あんなに冷たい目をしていたのに、手はこんなに暖かいのですね。とても同じ人には思えません」
「・・・見てたのか」
「はい。戦場でも見ていましたが、しっかりと見たのは今回が初めてです」
撫でる手を止めて天井を見上げた。
隣では残念そうにえっ!?と声が上がる。
「そうか。なら怖かったろ?」
「・・・はい。少しですが」
「俺も時々自分が怖くなる。まぁ親父の血を引いた以上覚悟はしていたがな」
「お父上のですか?」
ノルト酒をもう一杯注ぎ一気に飲み干す。
だが、酔えそうもない。
仕方がないのでシラフのまま話し始めた
「親父はな優秀な暗殺者だったんだよ。だが人を殺す内にだんだん血を求めるようになったんだ。知らないか?血抜きの殺人鬼って」
「聞いたことがあります。夜道に現れてすれ違った人の首を落として、体を逆さ釣りにする。そして血が吹き出しているのを見て高笑いをしているという恐ろしい者がいると。公国でも度々出没しました」
レティアは包帯を巻きながら淡々と答える。
「そう、そんな殺人鬼も最後は家で寝ているところを息子に寝首を掻かれて死んだのさ」
「・・・そうでしたか」
包帯を巻き終えるとレティアは手を握ってこちらを見据える。
「もし、自分で自分を止められなくなったら私のところに来てください。絶対止めて見せます
から」
「・・・覚えておく」
と、その時部屋にノックの音が響いた。
レティアは急いで手を離して立ち上がる。
「誰だ?」
「俺だ大将!アジャスだ」
「何のようだ?」
「森の方から真っ黒い化物が飛んできて門の前に立ってんだ!今第一部隊で取り囲んでるがピクリとも動かねえ」
「すぐに行く!絶対に手だしはするな!あとアンセルに老害を呼ぶように伝えろ」
「分かったぜ!」
バタバタと走る音が遠ざかるとレティアはフゥと息を吐いた。
「さて、客人が来たぞ。これから大忙しだ。レティア、大陸図を持って会議室に向かってくれ」
「え?はい!分かりました」
レティアはパタパタと走って部屋を出ていった。さて、後はあいつらを説得すれば準備は終わりだ。
立ち上がって伸びをすると、
両手で頬を叩いて気合いを入れた。
いかがでしたか?明日も投稿できるように頑張ります。




