第2章 寄付の抜け穴と追放された経営顧問
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朝日が昇るのが応接室の窓から見えた。
光が部屋全体を照らし、爽やかな朝を演出していたが、対照的にその場の空気は重々しかった。
「御社の寄付額は2,000ザゼン。間違いないな?」
アルフレッドは上目遣いでマルクスに確認した。
「はい」
「寄付をした企業は税を控除される。控除率は?」
「制度上、寄付額の9割です」
「1,800ザゼンだな。その分、商会が納める税が減る。つまり王国の税収が減る」
「それは制度の趣旨に沿ったもの……」
「第7条」
相手の言を遮って、アルフレッドは頁を指でつついた。
「『受託者への業務委託料は、寄付金の9割を上限とする』。
別紙の見積書は、この上限ぴったりの1,800ザゼンで計上されている。税が減る額と、同額だ」
控除される額と同額。
つまりは、王国に納めるべき税を差し引かれた分が、そのまま商会に戻ってはいないか?
「御社は2,000ザゼンを寄付し、こちらが支払う委託料1,800ザゼンを受け取る。そちらが負担するのは、実質200ザゼンだけだ。相違ないな?」
それだけで不正の証明にはならないが、暗に示したアルフレッドの問いにマルクスは笑みを崩さなかった。
「企画、設計、調整、広報。実務にはそれ相応の費用がかかります」
「では、利益のほうはどうだ」
アルフレッドは別の書類を引き寄せた。
「森林の採掘権が20年。この森の年間の産出見込みは?」
答えたのはローデンだった。
「別紙にあります。年に1,200ザゼンほどと」
アルフレッドはその資料を最初の資料の隣に並べた。
「20年で2万4000ザゼンか。それだけの価値が見込まれる採掘権を、商会はたったの200ザゼンの負担で手に入れるわけだ」
では、渡すほうのヴェルン領には、何が残るのか?
商会の寄付2,000ザゼンからヴェルンの委託料1,800ザゼンを引いた、たったの200ザゼンだけだ。
コホック王国は土地の所有権を領主に認めている。だから土地の権利はヴェルン領のものだった。
それを20年間、ほとんど無償に近い条件で商会へ渡すことになる。
森林再生プロジェクト。
書類の上では、もっともらしい事業だった。
だからこそ、アルフレッドには腑に落ちないことがあった。
「森林再生にしては、ずいぶん採掘権の範囲が大きいな」
マルクスが笑った。
「荒廃した森林を再生するには、伐採と植林が必要です。そのためには、当然……」
「いや」
アルフレッドは冷たく遮った。
「植林に20年分の、しかも領地全域に及ぶ採掘権は必要ない。それに、年間1,200ザゼンの産出見込み? 木材だけでそんな価値が出るわけがない」
アルフレッドは書類を手で叩いた。
「これは木材の話じゃない」
マルクスの笑顔が、ほんの少しだけ固まった。
「この森には別の価値がある」
アルフレッドは書類を閉じた。
「……何をおっしゃっているのか」
マルクスのとぼける声。
「先日、地質調査局にとある届け出があったことを聞いた」
マルクスの眉が動いた。
「この森の土に、魔石の成分があると」
ローデンの肩が跳ねた。
「あなたたちが欲しいのは木材でも景観でもない。森の地下に眠るそれだろう!」




