第2章 寄付の抜け穴と追放された経営顧問
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応接室の扉は少し開いていた。
「……ですからローデン殿。誰も損をしないのです」
扉の隙間から、柔らかくよく通る声が漏れ出していた。
「企業版寄付型魔導投資制度は、そのために作られました。
我が商会がヴェルン領の再建事業に寄付をする。
王国は寄付額の大部分を税から控除する。
領地は返済不要の資金を得る。
制度の善意が、そのまま三方を満たしているというわけです」
「前例は?」
ローデンの声は、疑うというより確認するようだった。
「23件。うち19件ですでに寄付金が交付されています。
企画と調整は、その全てを私どもが担いました」
「なるほど」
「ヴェルン領の場合はこうです。
寄付額は2,000ザゼン。
事業名は『魔力再生、森林資源活用プロジェクト』。
領内の森林の採掘権を、寄付元の我が商会に20年間開放していただく。
商会は森林資源の適正な管理をもって、領地に貢献します」
資料をめくる音。
「……補足いたしますと、採掘権の対価は名目上ゼロです。
寄付を受ける側が、寄付をする側に対価を求めるのは、制度の趣旨に反しますので」
「……無償ですか」
「寄付……ですので」
そこでアルフレッドは扉に手をかけた。
ちょうどその時、羽根ペンが紙の上を走る乾いた音がした。ローデンが署名を始めたのだ。
アルフレッドは扉を開けた。
「待て!」
応接室に響いたアルフレッドの声が、場の空気を硬直させた。




