第2章 寄付の抜け穴と追放された経営顧問
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代官が戻ったのは、アルフレッドの帰郷から6日目のまだ薄暗い早朝だった。
馬車は2台あった。
1台目から降りたのは痩せた中年の男で、黒い外套の襟を立てたまま屋敷の門を見上げた。
ハインツ・ローデン。
王都から派遣されて1年になる代官だ。
代官とは、コホック王国から3年交代で派遣される出向官僚で、王国法の執行、財政や契約事務の管理、中央との連絡、領地行政の監督を担う。
単なる監視役ではなく、領主と共に行政を共同運営する国家側代表という位置付けにある。
2台目の男を、アルフレッドは2階の窓から注意深く見た。
上等な金色の外套に、後ろへ撫でつけた髪。鞄がひとつ。
旅の疲れを感じさせない足取りだった。
マルクス魔導コンサルティング商会代表。フリードリヒ・マルクス。
「マルクス卿です」
背後でリリアが言った。
「代官様が王都で会って、そのまま連れてきたようで。応接室に通すとのことです」
「連れがいることは書いてあったか?」
「ありません。ただ、この領地では、約束のない客ほど丁重に迎えることが習わしになっています」
アルフレッドは机の2枚の書類を内ポケットに入れた。
財政補佐官の任命状と、契約に関する領主権限の代行委任状。
どちらも昨夜、父の署名をもらってある。
「同席する」
「代官様は若様をお呼びではありませんが……」
少し戸惑いながらリリアが引き止める。
「知っている」
アルフレッドは階下に降りていった。




