第1章 借金漬けの領地と無駄金食いの塔
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屋敷も記憶より小さく見えた。
母を病で亡くしたのは、アルフレッドが8歳の時だった。
それより前の父を侍女たちは、よく笑う、領民思いの旦那様だったと語ったが、アルフレッドの覚えている父は、その死からあとの父だけだった。
書斎に籠もる時間が増え、領地を見回ることも少なくなっていた。
アルフレッドが3年後、成人の儀を受けた直後に王都に移り住んだのもそんな頃だった。
父を支えるつもりだった。
10年間、王都で学び、いつか戻って、父の代わりに帳簿を読めるようになるため、領民を導ける知見や素養を身につけるためだった。
書斎の扉を開けると、父が机に向かっていた。
広いが質素な作りの書斎。
そこに小さく収まる老人。
オットー・ヴェルン。子爵。ヴェルン領現領主。
髪はすっかり白くなり、肩は落ちている。
だが帳簿から上げた、その穏やかな目だけは、昔のままのようだった。
「帰ったか」
「帰りました」
「王都の仕事は?」
「辞めました。休職の扱いですが、戻る気はありません」
オットーは口を開きかけ、閉じた。
言うことを決めかねている様子だった。
「父上。早速ですが帳簿を見せてください。全部」
「全部……か?」
「過疎債の起債書、返済表、塔の請負契約、維持費の明細。それと、過去3年分の代官府の署名した書類の写しを」
「帰ったばかりでそれか。一旦休んでからでも良かろうに」
「このために帰ってきたのです。さあ」
かぶりを振ってからオットーは奥の棚から綴じ紐の束を出し、机に積んだ。
アルフレッドは上着を脱ぎ、袖をまくった。




