第2章 寄付の抜け穴と追放された経営顧問
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この日は再びの来客があった。
その人物は昼過ぎに、勝手知ったる我が家のごとく屋敷に立ち入ってきた。
「アーデルハイド・ケストナーと申します。谷の子供たちに、読み書きを教えております」
案内もなしに応接室へ入ってこられたのは、彼女が村では珍しい王都言葉を話す人間だったからだろう。
年齢は50いくつか。
眼鏡の奥の目が、知的な、観察するような光り方をしていた。
「土壌の届け出に対するマルクス魔導コンサルティング商会の対応のことは、聞き及んでいます。
私が、この森の木を一本でも切らせるために調べ物をしていたわけではないことを申し上げにまいりました」
全く。田舎というところはどうしてこうも噂が広まるのが速いんだ。
嘆きながらアルフレッドは客人を観察した。
この気まずい空気の中で、凛とした態度。
なるほど。こりゃ変人だ。
「森林資源活用プロジェクト、という名の契約でしたよ」
「存じております。ですがあの森は、切って、掘って、売って良いような場所ではありません」
彼女の声には、教師らしい平静さの下に、譲らない硬さがあった。
「届け出は義務だったので出しました。それだけです。知られてしまえば、こうなることもある程度は覚悟していました」
「届けを出す前に一旦我々に相談を持ちかけてくれても良かったのに。こんなことになって後悔は?」
「していません。ただ、次にもっと巧妙な誰かが来たときのために、この谷の人間には、もう少し数字が読めるようになってほしいとは思っています」
耳が痛かった。
アルフレッドは客人を侮っていたことを恥じた。
「同感です」
そして改めて学舎についての労をねぎらい、その日の夕食に招待をした。
アーデルハイドはそれを丁重に断ると、颯爽と屋敷を後にした。




