【第四話】赤煉瓦倉庫・前編
赤レンガ倉庫って、風情があってデートスポットだなと思います。
横浜赤煉瓦倉庫。
車を降りた瞬間、海から吹き抜ける風が三柱を包んだ。
「うおおおおおお!!」
「わぁ……」
真っ先に声を上げたのは、当然のように須佐男。
続いて、夜姫。
「いいじゃん!!
夜姫ちゃん見ろ!!
煉瓦!! 海!! 船!!
どうだ!!俺様を褒めろ!!最高だろ?!」
「うん。ほんと、素敵……」
夜姫は返事をしながら、視線だけを別の方へ向けていた。
車の反対側。
天照の大きな手が、そっとサングラスを外す瞬間を、夜姫は確かに見た。
――あ……。
その神々しい瞬間。
天照の仕草一つ一つがスローモーションとなり、夜姫の視界をゆっくりと流れていく。
長い指。
節が作る、美しい影。
首を回した後、海から流れるそよ風を受け、心地良さそうに深く息を吸って吐いていた。
陽を受ける黄金の短い髪は煌めき、
風に煽られた襟元から、首筋が僅かに覗く。
そして。
流れた視線が、夜姫を静かに捉えた。
すると。
締まった口元がほんの少しだけ、上がった気がした。
「……………あ……」
天照はもう、背を向けて前に歩き出している。
黄金の髪が、海風に揺られていた。
「夜姫ちゃん、ん? 顔……あちいのか?
アイス食べるか!!
ほら、突っ立ってないで行こうぜ〜♪」
「………うん!!」
夜姫は小走りする。
「へへ♪ たのしいな?
気に入ってくれたか?
頬っぺた赤くして、可愛いーな!!」
須佐男は隣でにぃっと笑った。
夜姫も、思わずつられる。
二柱で笑った。
少し前で天照が振り返っていた。
二柱を見て、首を傾げる。
「はやく歩け」のサインだ。
口に手を添えて須佐男が夜姫に言う。
「口があるなら、喋ろよな〜?」
天照には聞こえていないようだが、勘がいいのか明らかに不機嫌な顔をしている。
じとりと目が合った。
夜姫は思わず吹き出した。
「歩くの早えぞ。
少しはゲストに合わせろや〜!!」
「……クスクス」
「ほら、見ろ。またムスッとするぜ??」
――二柱の期待に応えるように。
天照が少し、目を細め……
――笑った。
須佐男の口笛。
「まじか」
「で、何が見たいんだ?」
夜姫の耳が赤い。
「アマちゃん、機嫌良いな!
そうこなくっちゃな……」
――その時だった。
「ねぇ……やだ。見て、何あの人」
「え、どれ?」
「ほら、あの背の高い……」
少し離れたところから、若い女性たちの声が聞こえた。
「え、うそ……ヤバくない?かっこいい!!」
「私も見たい!………何あれ」
「ねぇ、見て!!
金髪の人、めちゃくちゃカッコよくない?」
――続く。
人間界に出歩くと、結局こうなるこの二人組。
余談ですが、須佐男は「夜姫」初期では、当初女の子大好きキャラでした。
…………今もかな??




