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Ch.016② 美人な羽冬悠月は、プレゼントを使ってもらえて嬉しそうだった。

21

 長かった表彰式が終わり、僕らは球場を出た。

 場外はすでに、家族や友人、生徒、それに野球部員たちでいっぱいになっていた。あちこちから先輩たちの名前を呼ぶ声や、優勝を祝う歓声が絶え間なく聞こえてくる。


 長谷川?誰?ああ、サードか。やっと思い出した。


「高木くん!望月さん!羽冬(はねふゆ)くん!」

 

小山の声だ。

 姿を探すと、その隣には、いかにも嬉しそうな顔をした紫(ゆかり)木(き)もいた。


「Yo~」

「小山さん!紫木さん!」

「甲子園行けるんだね! すごいよ!」

 小山が飛び跳ねそうな勢いで祝ってくる。


「おーい、高木!こっちこっち!」

「Yo~俺、友達のとこ行ってくる~」


高木が歩き出した途端、望月が続けて口を開いた。


「うん!本当に感動した。試合終わってからずっと、はは、油断するとまだ涙が出てきちゃうんですよね。」


「羽冬くん見て!理香ちゃん、9回裏でずっと私の手首ぎゅーって掴んでたの。めちゃくちゃ緊張してたんだよ~」

「真衣、また適当なこと言って!そんな強く掴んでないから!」


 小山は証拠みたいに手首を見せてくる。

いや、別に何も跡ついてないけど。


 すると次の瞬間、小山はまだユニフォーム姿の望月をじっと見た。


「ん~?望月さん、その格好めちゃくちゃ可愛いね!」


「え?」


 突然褒められた望月が、少し困ったように固まった。

 ちょっと、なんで僕が褒めた時には、そんな照れた反応しないの?


「では、じっくり確認させてもらいます!」

「えっ?ちょ、ちょっと待ってください!羽冬!紫木さん!助けて……」


 望月の助けを求める声はどんどん遠ざかり、そのまま小山に引っ張られて、人混みの中へ消えていった。


 小山が漫画のキャラなら、間違いなく女子相手にずっとセクハラしてるタイプだ。たとえば『To LOVEる』の籾岡里紗とか。

 なんでそんな漫画知ってるんだって?夢で見た。


 ん?紫木の目……


「な、何よ。ずっとこっち見て。」

「今回は、ちゃんと勝ったな。」


 少し考えてから、紫木はようやく僕の言いたいことに気づいたらしい。


「もう、今回は前と違うってば!みんなが勝ったのを見たら、なんでか分かんないけど、涙出てきちゃったの。」

「楽しんで見てくれたならよかった。」

「そ、そう?」


 紫木は少しだけ顔を逸らして、なんとなく照れているように見えた。


「羽冬は?嬉しいの?」

「僕?」

「うん、毎回、羽冬の顔って何考えてるのか分かんないから。」


 僕の表情って、そんなに変なのか?

 少し考えてから、自分なりに思いきり嬉しそうな顔を作って、紫木を見た。


「こう?」

「うわ、おかしい、やっぱり普通の顔でいて。」


「ヨル!」


 後ろから聞こえてきた夢ちゃんの声が、僕らの会話を遮った。

 振り返ると、姉さんとツネ、ヒロも一緒にいた。


「じゃあ、僕あっち行くな。」

「羽冬。」


 もう歩き出そうとしていたところを、紫木に呼び止められた。


「なに?」

「これからも忙しいんでしょ?」

「そうだな。チームと一緒に甲子園に行くことになったから。」

「そっか。」


 少しだけ沈黙が続いて、紫木がもう一度口を開いた。


「じゃあ、次会うのは新学期だね。テレビ中継、ちゃんと見て応援するから!」

「ああ、ありがとう。また新学期な!」


 紫木と別れて、夢ちゃんたちのほうへ向かった。


「名残惜しそうだな。」


 近づいた瞬間、ヒロがさっそく撃ってきた。


「優勝か~羨ましいな。」

「そっちは何回も行ってるだろ。たまには僕らに譲れよ。」


 幸い、ツネがすぐ話題を変えてくれた。


 そう。黎明大附属は、これまで五年連続で神奈川代表として夏の甲子園に出場している。


「お前が入学して、疫病神まで連れてきたんじゃね?」

「好きに思えよ、俺は構わん。」


 久しぶりだな、この二人のこのやり取り。


「いい試合だったね。どう?ちょっとは本気で野球やりたくなった?」

 姉さんがそう聞いた直後、何か思い出したように、急に目を輝かせてスマホを取り出した。


「そうだ。みんな、ヨルが野球してるところ見たことないでしょ?姉さん今日見たよ。しかも動画も撮った。」


 おい。少しプライバシーを尊重しろ!


「本当!?見たい!」

 夢ちゃんが異常なくらい食いついて、姉さんの隣へ寄っていった。ツネとヒロも、その後ろからゆっくり覗き込んだ。


「ははっ。ヨル、捕り方ぎこちないね。」

 うっ、夢ちゃん。僕だって傷つくんだぞ。


「今日グラウンドにいた連中と比べると、見事なくらいパンドラのガリ勉らしい動きだな。それになんで下手投げなんだよ。お前、ボール投げることすらできないの?」

 ヒロ、今日は口に機関銃でも積んできたのか?


「誰とキャッチボールしてたんだ?」

 うっ、ツネ……


「チームのユニフォーム着てた、あのお嬢ちゃんよ~」

 姉さん!お願いだからもうやめて!


「へえ~?」

 三人が一斉に、好奇心と悪意の混じった視線を向けてくる。


「はい?え、集合ですか?分かりました。……キャプテンが集合だって。じゃ、僕先行くから!」

 僕は急にスマホを耳に当て、その場から少しずつ離れ始めた。


「馬鹿にするな!試合終わったのに何の集合だ!」

「ヨルのスマホ、今鳴ってなかったよね?」

「いいなヨル~周り女ばっかじゃん。誰か紹介してよ!」


 ツネ、君は太りすぎだ。もし本当に誰か女子が「男の子紹介して」って言ってきても、君だけは紹介しない。

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