Ch.016② 美人な羽冬悠月は、プレゼントを使ってもらえて嬉しそうだった。
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長かった表彰式が終わり、僕らは球場を出た。
場外はすでに、家族や友人、生徒、それに野球部員たちでいっぱいになっていた。あちこちから先輩たちの名前を呼ぶ声や、優勝を祝う歓声が絶え間なく聞こえてくる。
長谷川?誰?ああ、サードか。やっと思い出した。
「高木くん!望月さん!羽冬くん!」
小山の声だ。
姿を探すと、その隣には、いかにも嬉しそうな顔をした紫木もいた。
「Yo~」
「小山さん!紫木さん!」
「甲子園行けるんだね! すごいよ!」
小山が飛び跳ねそうな勢いで祝ってくる。
「おーい、高木!こっちこっち!」
「Yo~俺、友達のとこ行ってくる~」
高木が歩き出した途端、望月が続けて口を開いた。
「うん!本当に感動した。試合終わってからずっと、はは、油断するとまだ涙が出てきちゃうんですよね。」
「羽冬くん見て!理香ちゃん、9回裏でずっと私の手首ぎゅーって掴んでたの。めちゃくちゃ緊張してたんだよ~」
「真衣、また適当なこと言って!そんな強く掴んでないから!」
小山は証拠みたいに手首を見せてくる。
いや、別に何も跡ついてないけど。
すると次の瞬間、小山はまだユニフォーム姿の望月をじっと見た。
「ん~?望月さん、その格好めちゃくちゃ可愛いね!」
「え?」
突然褒められた望月が、少し困ったように固まった。
ちょっと、なんで僕が褒めた時には、そんな照れた反応しないの?
「では、じっくり確認させてもらいます!」
「えっ?ちょ、ちょっと待ってください!羽冬!紫木さん!助けて……」
望月の助けを求める声はどんどん遠ざかり、そのまま小山に引っ張られて、人混みの中へ消えていった。
小山が漫画のキャラなら、間違いなく女子相手にずっとセクハラしてるタイプだ。たとえば『To LOVEる』の籾岡里紗とか。
なんでそんな漫画知ってるんだって?夢で見た。
ん?紫木の目……
「な、何よ。ずっとこっち見て。」
「今回は、ちゃんと勝ったな。」
少し考えてから、紫木はようやく僕の言いたいことに気づいたらしい。
「もう、今回は前と違うってば!みんなが勝ったのを見たら、なんでか分かんないけど、涙出てきちゃったの。」
「楽しんで見てくれたならよかった。」
「そ、そう?」
紫木は少しだけ顔を逸らして、なんとなく照れているように見えた。
「羽冬は?嬉しいの?」
「僕?」
「うん、毎回、羽冬の顔って何考えてるのか分かんないから。」
僕の表情って、そんなに変なのか?
少し考えてから、自分なりに思いきり嬉しそうな顔を作って、紫木を見た。
「こう?」
「うわ、おかしい、やっぱり普通の顔でいて。」
「ヨル!」
後ろから聞こえてきた夢ちゃんの声が、僕らの会話を遮った。
振り返ると、姉さんとツネ、ヒロも一緒にいた。
「じゃあ、僕あっち行くな。」
「羽冬。」
もう歩き出そうとしていたところを、紫木に呼び止められた。
「なに?」
「これからも忙しいんでしょ?」
「そうだな。チームと一緒に甲子園に行くことになったから。」
「そっか。」
少しだけ沈黙が続いて、紫木がもう一度口を開いた。
「じゃあ、次会うのは新学期だね。テレビ中継、ちゃんと見て応援するから!」
「ああ、ありがとう。また新学期な!」
紫木と別れて、夢ちゃんたちのほうへ向かった。
「名残惜しそうだな。」
近づいた瞬間、ヒロがさっそく撃ってきた。
「優勝か~羨ましいな。」
「そっちは何回も行ってるだろ。たまには僕らに譲れよ。」
幸い、ツネがすぐ話題を変えてくれた。
そう。黎明大附属は、これまで五年連続で神奈川代表として夏の甲子園に出場している。
「お前が入学して、疫病神まで連れてきたんじゃね?」
「好きに思えよ、俺は構わん。」
久しぶりだな、この二人のこのやり取り。
「いい試合だったね。どう?ちょっとは本気で野球やりたくなった?」
姉さんがそう聞いた直後、何か思い出したように、急に目を輝かせてスマホを取り出した。
「そうだ。みんな、ヨルが野球してるところ見たことないでしょ?姉さん今日見たよ。しかも動画も撮った。」
おい。少しプライバシーを尊重しろ!
「本当!?見たい!」
夢ちゃんが異常なくらい食いついて、姉さんの隣へ寄っていった。ツネとヒロも、その後ろからゆっくり覗き込んだ。
「ははっ。ヨル、捕り方ぎこちないね。」
うっ、夢ちゃん。僕だって傷つくんだぞ。
「今日グラウンドにいた連中と比べると、見事なくらいパンドラのガリ勉らしい動きだな。それになんで下手投げなんだよ。お前、ボール投げることすらできないの?」
ヒロ、今日は口に機関銃でも積んできたのか?
「誰とキャッチボールしてたんだ?」
うっ、ツネ……
「チームのユニフォーム着てた、あのお嬢ちゃんよ~」
姉さん!お願いだからもうやめて!
「へえ~?」
三人が一斉に、好奇心と悪意の混じった視線を向けてくる。
「はい?え、集合ですか?分かりました。……キャプテンが集合だって。じゃ、僕先行くから!」
僕は急にスマホを耳に当て、その場から少しずつ離れ始めた。
「馬鹿にするな!試合終わったのに何の集合だ!」
「ヨルのスマホ、今鳴ってなかったよね?」
「いいなヨル~周り女ばっかじゃん。誰か紹介してよ!」
ツネ、君は太りすぎだ。もし本当に誰か女子が「男の子紹介して」って言ってきても、君だけは紹介しない。




