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Ch.012③ 中間試験の結果

6

「ああ……全部終わった……」

 5月20日、金曜日。

 

 試験を終えた僕は、絶望しながら机に突っ伏していた。

 中間試験は、普段の小テストとはまるで別次元だった。

 いくらここの生徒がみんな頭いいからって、あんなひねくれた問題ばかり出さなくてもいいだろ。

 せめて何問かサービス問題をくれよおい!

 80点どころじゃない。自信のある問題の点数だけ合計してみたら、教科によっては60点すら怪しかった。


「その様子だと、大人しく参考書代を払うことになりそうね?」


 背後から聞こえた声は、これでもかというほど楽しそうだった。

 完全に馬鹿にしているから無視した。


「答え合わせする?」

「いやだ。」


 紫《ゆかり》木《き》の自信満々な様子を見る限り、彼女の答えと照らし合わせれば大体の点数は分かるのだろう。

 でも、そんなに早く現実と向き合いたくない。


 くそ。昔はみんなが僕の答えを見たがってたのに。

 高校に入っただけで、なんでこんなことになってるんだ。


―「ヨル~今回のテスト難しかった……答え見せてもらっていい?」


 試験が終わるたび、夢ちゃんが僕のところへ来ていた頃が懐かしい。


「ねえ、羽冬《はねふゆ》。」

「なに?」

「今日で試験終わったし、一日くらい休むことにしたの。ご飯でも奢ってくれたら、参考書――」


「理香ちゃ~~~ん!」


 危険人物が現れた。

 小《お》山《やま》真衣《まい》。

 クラス最大のトラブルメーカーにして、僕と紫木の関係が妙なことになった元凶の一人。

 止まらない口で、紫木の心理状態を片っ端から暴露してくる。

 最近はクラスのほかの連中とも仲良くなってきたらしく、どうやら誰に対しても同じらしい。

 なので、何か広めたい話があるなら小山印の拡声器に任せればいい。「絶対あの人には言わないで」と付け加えれば、その本人へ即座に届けてくれる親切サービスまでついてくる。


「もう試験終わったんだから、理香ちゃん今日は私と遊べるよね~!」

「真衣、私――」

「はいはい、早く鞄片づけて!一緒に買い物行こ!」

「あ、ちょっと、待って真衣!服引っ張らないで、はだけちゃう!」

「じゃあ早く~!」

「分かった分かった、もう片づけたから!ごめん羽冬、また今度!」

「羽冬くんごめんね~理香ちゃん、ずっと借りっぱなしだったでしょ。今日は私の時間だから!」


「お、おう……分かった。」


 小柄な小山が、まるで子供が母親を引っ張るみたいに紫木を連れていく。

 何とも言えない光景だ。


 小山は、僕らがゴールデンウィーク中ずっと一緒に勉強してたことを知ってるのか。

 それなのに、このところ僕へ絡んでこなかったのは意外だな。

 紫木が何か言ったのか?


 スマホを開き、野球部のLINEグループを確認する。

 そういえば、今日から練習再開だな。


 厳しいな。試験が終わったその日からかよ。

 まあ、僕はマネージャーだからまだいいけど。


 ていうか、グローブだけプレゼントするって、姉さんは野球するならスパイクも必要だって知らなかったのか?


 野球部へ入る前、高木に誘われて、一度球場で野球の魅力とやらを体験したことがあった。

 だが革靴だったせいで、土の上ではまともに動けなかった。

 そのうえ望月の兄には、「お前何しに来たんだ?」みたいな目で見られた。


 まあ僕も、ちゃんと野球に触れるようになってから、スパイクが必要だと知ったんだけど。


「Yo~飯飯~久しぶりの練習だ~」

 高木の聞き慣れた妙なイントネーション。

「ああ、ごめん。もうちょっと。」

「試験どうだった?」

……誰がそれを聞いていいと言った。


「災厄。」

「Oh~no~大丈夫だよ~俺も似たようなもんだ~」


 そのあと僕と高木は一緒に教室を出て、望月と加藤に合流した。

 練習が始まるまで、四人で久しぶりにのんびりとした時間を過ごした。


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