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今日もキミはガラスの靴を落とす  作者: 次野/うずらの


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6/9



 1つのたましい浄化じょうか転生てんせいかえす。

 成熟せいじゅくしたたましい現世げんせからはなし、常世とこよたましい浄化じょうかできない場合ばあいには、永久とわねむりを。



 それがつかさどかみ役割やくわり



 ゆえに、歯車はぐるまくるったいま死者ししゃはすべてすのが、冥府めいふことわり――――のはずが、それを許容しとしない白徒はくと下級かきゅう悪魔あくまとが結託けったくして、かれらを狭間はざまんだ…………なんて、烏滸おこがましかったかもしれない。



 白徒はくと事情じじょうなど、ったことか。

 おまえらの面倒めんどうごとなどまかされたくない。


 もしかしたら、みずか幽閉ゆうへいされにったふしも――――なくはなかった。



 なぜならば、色欲しきよくかれときとはちがって、幽閉ゆうへいされた牢獄ろうごくにすんなりとたどりければ、おりにはだれも、くさり一本いっぽんすらない、もぬけのからだったからだ。



 ジオラマ調ちょう冥府めいふがそうせているのではなく、雑居ざっきょビルの一室いっしつに、なにもかれていない、灰色はいいろ空間くうかんが ただあっただけ。


 まんいちりかかられてもいいように、エルサと――――「半裸はんらさむくない?」とトウリのジャケットを肩掛かたがけした色欲しきよくかれとが先行せんこうした意味いみもなくなって。



 出端でばなくじかれた一行いっこうに、さらなるちが。



本当ほんとうにこ――」



 つづかないトウリのいかけにけば、グレーのスーツをた、またまたべつ推薦すいせんぐみかれ拘束こうそくして、またたさらっていってしまった。

 気配けはいも、物音ものおとひとつもてずに、見事みごと犯行はんこうだった。

 トウリのいかけがなければ、いつのにかいなくなってた、になるところだった。



 2人(ふたり)きりとなった色欲しきよくかれは、あえてをくちにする。



「……『あのまもれ』は、協力きょうりょく条件じょうけんふくまれていたかな?」



 一瞬いっしゅんのこととはえ、色欲しきよくかれたすけることはできた。が、エルサは「決定打けっていだのいないいま推薦すいせんぐみ対峙たいじしても意味いみがない」と、淡泊たんぱく返答へんとうをした。


わたし解放かいほうした瞬間しゅんかん、あのはもうようなし、か。さすが白徒はくと様々(さまさま)だ」

「……白状はくじょうしよう。もぬけの牢獄ろうごくられていた、と」

「ほう?」

ぼくはてっきり『推薦すいせんぐみあばれているから、なんとかしてほしい。冥府めいふ白徒はくと共々(ともども)』――そうおもっていたけど、どうやらちがうらしい」



 ――――このまま死神しにがみ野放のばなしにしていれば、せっかくの欠片かけらが。



「どこまでも白徒やつら保身ほしんはしるとうのなら――――トウリはさらわれてしまったほうがいいんじゃないか、っておもってしまったのだよ」




      *




 オフィスがいはなれれば、地平線ちへいせん彼方かなたまで平地へいちひろがる。



 さらさらの白砂はくさに、ぽつりぽつり。4、5にんあつまる推薦すいせんぐみと、かれらの大鎌おおかま首筋くびすじにあてがわれ、地面じめんすアヤセとスノウの姿すがたもあった。

 2人(ふたり)のそばにりたくても、トウリはうし拘束こうそくされたまま。トウリをれてきた推薦すいせんぐみは「――あのかたに、らくにしてもらいましょう」と、べつ方向ほうこう手首てくびひねった。


 一際ひときわくろかたまりを、みな凝視ぎょうしする。


「あぁ……ようやくすくわれる」


 白金はっきんかがやく、推薦すいせんぐみ大鎌おおかまなんてじゃない。ボロボロのローブからのぞ赤黒あかぐろ刃文はもん禍々(まがまが)しさたるや。それをもちいて、自分じぶんおそいかかってくる推薦すいせんぐみ一刀いっとう両断りょうだん――――死神しにがみ無理むりやり刺激しげきして、わりにしてもらっていた。



 わずかなちりう。


 それすらもすなまぎれて、なにも。

 なんのおだやかさもあたたかさものこらない。



 そんな“完全かんぜんなる”――――を、トウリはのぞんでいなかった。



「アヤセとスノウはっ……、あの2人(ふたり)関係かんけいないんだっ……!!」


 推薦すいせんぐみのひとりが、ゆっくりとトウリのほうをいた。


「でも、2人(ふたり)のために貴方あなたがシんだ」


 そして、またひとり。


くるしい現世げんせいられて、白徒かれらもとめるだれかをんで、シににく」

「それが――」


 推薦すいせんぐみみなこえそろえて、「わたしたちの宿命しゅくめい」だと。




 何度なんどかの人生じんせいであっても、いつも苦行くぎょうだ。

 前世ぜんせ知識ちしきなど、なんのやくにもたない。

 回避かいひしたさきは、それ以上いじょう困難こんなんけて。

 まただれかと――――のかえし。



 推薦すいせんぐみは、そういうところ。




転生てんせいしたって、またシぬんだよ」

「そんな一生いっしょういやでしょ?」

わたしたちみたいにこわれるまえに、トウリ(あなた)すくいたい」

「そして、あのふたりも」

天国てんごく一部いちぶになるくらいなら、ここで――」


 推薦すいせんぐみ口々(くちぐち)に、死神しにがみられることが最良さいりょうだとうたがわない。


 手始てはじめに、トウリを。



「やめろ!!」

「トウリ!!」



 くびもうがさけぶ2ふたりにして、強引ごういん死神しにがみのテリトリーへんだ。

 トウリの拘束こうそくかれていない。

 をよじらせながらきあがれば、ウザったそうな死神しにがみまえに。あたま身体からだかたんと大鎌おおかまげた。



 ……いたみは、なかった。



 それもそのはず――――トウリをまもるようにあいだはいった推薦すいせんぐみのひとりによって、救済きゅうさいまぬがれた。


 現世げんせの、えきのホーム。


『おまえ、ふざけているのかっ!!』


 そうトウリにぶちギレた、あのボブのだった。

 急所きゅうしょはずれても、背中せなかられた彼女かのじょはゆっくりとわりに。最期さいご最後さいごまでトウリをまもるように、ゆるくめた。



「あなたは……推薦すいせんぐみじゃない……」



 推薦すいせんぐみ生前せいぜん、なにをしたってかがやかない。

 ぎわかがやくから、みなばすだけ。

 でも、トウリはちがう。



 ――としましたよっ。



 おなじホームで、

 いつもクマを作って、

 フラフラになりながらも、

 としたパスケースをひろってくれた。



 見向みむきもされないはずなのに、

 かれだけが。

 わたしには太陽たいようみたいな存在そんざいだった。

 あさの、ほんのわずかな、わたしたのしみになる。

 こいなんて、あまいものじゃない。

 言葉ことばどおりの、いやし――――



「……だから」



 わたしんでしまったんだ、と。



転生てんせいして、あかるい世界せかいを……あなたは――」



 彼女かのじょおもみもおもいも刹那せつなっていく。

 トウリのかたに、ほんのすこしだけのこったちりて、ほか推薦すいせんぐみくるったように救済きゅうさいもとめた。



 はやく。

 はやくはやく。


 もう、にたい。



 タガがはずれたかれらのおもいが、どんどんふくがっていく。



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