表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日もキミはガラスの靴を落とす  作者: 次野/うずらの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/10



『べる、さいゆ』がなんたるかをかたりながら、現世ぜんせしたビルぐんすすんだ。



 ときには連絡れんらく通路つうろを。

 ときには非常ひじょう階段かいだんがったり、がったりして。

 社長しゃちょうしつなる最上さいじょうかい部屋へやはいった――――かとおもえば、燦々(さんさん)かがやくパネルがむかえる、ホテルのロビーにたどりく。


 無人むじん……なのはたりまえだが、うん。



「あの、本当ほんとうにここ……?」

本当ほんとうにここ」


 エルサは唯一ゆいいつひかってない部屋へやのパネルをした。


 なぜか、カードキーがてくる。

 それをとびら機械きかいませて、部屋へやはいると――――またとびら

 みとりの機械きかいにエルサのをかざして、またまたとびら

 厳重げんじゅうに、近代きんだいてきかんじで幽閉ゆうへいされていた。


 しかし、3かいとびらはごく普通ふつう

 機械きかいも、鍵穴かぎあなもなくて。


 ドアノブにをかけるが…………静電気せいでんきにしてはつよすぎる電流でんりゅうが、エルサにはしった。


大丈夫だいじょうぶですかっ!?」


 とっさにはなしたからはけむりが。にくげたにおいこそないが、トウリは心配しんぱいでエルサのれる。



【ごめん、よろしく。

 そこをけて】


【バチン!! ってなりませんっ!?】


大丈夫だいじょうぶ

 ぼく心配しんぱいしてくれるトウリならけられる】



 れてしまったことをすこし後悔こうかいすれば、エルサはわらった。



 トウリは、おそおそる……。


 のひら――全体ぜんたいで……。


 ドアノブにれ――……したに、す。



 なか薄暗うすぐらく、内装ないそう



 ド派手はでなベッドと、大人おとなあそ――――に、はりつけにされた、半裸はんらおとこがひとり。

 鬱陶うっとうしそうな黒髪くろかみかすませるほどの端正たんせい顔立かおだちで、細身ほそみでありながら、しっかりれている腹筋ふっきんは1あこがれたもの。

 とびらからのかりをまぶしそうに、こちらをてくる。そんな所作しょさすら色気いろけかんじるのは、かれひとならざるものゆえか。



【なにをわれても、どうじないこと】



 ちょこんとトウリにれて、エルサはおとこまえった。



「――せっかくの保養ほようが、おまえで台無だいなしだ」


 こえまでいとた。


「キミのためにれてきたわけじゃないからね」

「おまえはそうかもしれんが――――」


 おとこ姿すがたかたちえ、「たすけて」と。ちいさな、お人形にんぎょうさんのような可愛かわいらしいおんなになって、トウリをもとめた。

 かせおんなりょう手首てくびむ。


「い、たいっ……」


 涙目なみだめになりながら、「おにいちゃん」とばれれば、たすけないわけにもいかなくて。


「エルサさんっ」

「ダメだって」

「せめて、身体からだげるくらいっ。あんなちいさなおんな――」

「なるほど。キミには()()えているんだ?」


 エルサには、黒髪くろかみ男性かたちのまま。


幼気トウリ魅了みりょうするのはかまわないけど、こと少々(しょうしょう)いていてね」

「……わたしには関係かんけいのないはなしだ」


 ね、おにいちゃん? と、おとこはしっかりトウリのく。


「わたしができるのは一緒いっしょにいることだけだもん。おにいちゃんと、ずーっと」

「エルサさん!」


 拘束こうそく同意どういもとめてくるあたり、まだ自我じがはあるようだが。


低音ていおんかされているぼくにもなって」


 おとこ2人(ふたり)でちちくりあっているだけ。を、トウリに説明せつめいしても、きっとつたわらない。

 だから、エルサは――――おんなのこす、ふりをする。


「トウリ、『たすける』には、いろんな種類しゅるいがあるとはおもわないかい? か……この万物ばんぶつ魅了みりょうすることができる、色欲しきよく悪魔あくま――――よくたしてあげるのも、たすける、じゃない?」


 エルサも白徒はくとはしくれなので、ささやきは得意とくいだ。


よくを、たす……?」

「そう。きっと普通ふつうじゃあ、もう満足まんぞくできないだろうから。拘束こうそくかないで――、ぼく一緒いっしょに。キミごとた「ことわる」


 気味ぎみったのは、色欲しきよく悪魔あくまだった。


 心底しんそこいやそうに「貴様きさまになどあいされてたまるか」と。トウリの魅了みりょうも、自身じしん拘束こうそくをもいて、十字架じゅうじかにもたれかった。


「なんのようだ」

「キミが適任てきにんって推薦すいせんがあってね、閻魔えんまくんの代行だいこう

「……はっ」とはなわらえば、「貴様きさまへのいやがらせなだけだろう。わたしかれ代行だいこうつとまらんよ」

「でも、もうけちゃった」

ないはわたし自由じゆうだ」


 きらいな上司じょうしの、その部下エルサはなしなど、だれくものか――――そんな執念しゅうねんかんじて、エルサはおもむろにトウリにれた。

 かれの、ぐな言葉ことばなら。とくちにする。


「【ここをられるならOKーみたいなひとかとおもってた。絶対ぜったい仕事しごとできるよね、このひと軍服ぐんぷくとか似合にあいそうだもん。なんだっけ、すぱだ……】」

でもくるったか?」

「この本心ほんしん

「ちょっとエルサさんっ」


 しーっ! と、2人(ふたり)のやりとりの合間あいまに、ひとりで妄想もうそうふけっていたことをトウリは暴露ばくろされてしまう。


「キミの言葉ことばのほうがひびくから」

「いやいや……た、ただの感想かんそうだしっ……」

「【腹筋ふっきんれてていいなー】は、ぼくにはないかんがえだよ」

「マジでやめてくださいって……。エルサさんの本心ほんしんっちゃいますよっ」

「それはやめたほうがいい。かれがぶちギレる」

「えぇ……」


 れるか、れないか。

 ちちくりっているのは、そっちではないか、と悪魔あくまわらう。が、先程さきほどのような嫌悪感けんおかんはなく、トウリのやわらかな雰囲気ふんいきめんじて、代替だいたいあんなげけた。


適任てきにんしゃならいるだろう。いま軟弱なんじゃく上層部(もの)ども相容あいいれなかった、本物ほんもの死神しにがみさまが」



 そのものもまた、どこかに幽閉ゆうへいされている。



 シしゃ統率とうそつはかるためのシニガリ機関きかん――――もとい下界げかいした『カイシャ』は、実質じっしつ白徒はくと尻拭しりぬぐい。そのことに反対はんたいしたのが、八百万やおよろず死神しにがみたちであり、言葉ことばたくみに狭間はざまいやれて。

 けれど、上層じょうそう思惑おもわくどおりにはいかず、かないかみに、シニガリにまでられることになろうとは。


面倒めんどうごとはすべてつぶしてしまうキミが推薦すいせんするくらいだから、こちらに協力きょうりょくするよう魅了はたらきかけてくれるよね?」


 冥府めいふがわ要望ようぼうが、いやがらせだけでないことが少々(しょうしょう)えてくる。



 ――――本物ほんもの死神しにがみさまに、白徒はくとこまをどうにかしてほしい。



 しかし、いま冥府めいふでは協力きょうりょくどころか、ものにされかねないとおもっての、『色欲しきよく悪魔あくま』の召喚しょうかんなのだろう。

 じつに、むしはなしだ。


たしかに】と、トウリのむねうちこえてくる。


「このひと閻魔えんまさまにして、本物ほんもの死神しにがみさんコントロールして、自分じぶんたちのしたことはゆるしてね☆ってことですよね」


 トウリの解釈かいしゃくに「……くくっ」と、色欲しきよく悪魔あくま屈託くったくなくわらった。


わった。協力きょうりょくしたほうが存外ぞんがい面白おもしろそうだ……が、それがなにを意味いみしているのか、貴様きさま重々(じゅうじゅう)承知しょうちなのだな?」


 死神しにがみられれば、本当ほんとうっている。

 白徒はくともとめる『欠片かけら』ごと、ちからけた推薦すいせんぐみすことになるのだ。

 白徒はくとにとって、なんの利点りてんもないはずなのに。

 エルサは「もちろん」と、ここでも気持きもちよく了承りょうしょうする。



 その真意しんいは――――



 肝心かんじんなところでれるのを躊躇ためらうトウリに微笑ほほえむエルサも、そのときだけは仮面かめんはずして「ありがとう」と――――ほんのすこしだけ、かれがトウリのあつかいにこまはじめていることに、だれづいてはいなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ