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今日もキミはガラスの靴を落とす  作者: 次野/うずらの


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4/10



「エルサだ。べつ支社ししゃから応援おうえんものとでもおもっておくれ」

「よ、よろしくおねがいします。トウリです」と、挨拶あいさつわす背後はいごから、不満ふまんそうな空気くうきただよってくる。



 ――トウリになにかあったら、ただじゃまないぞ。と、上層じょうそうやンププになか羽交はがめにされるアヤセとスノウを尻目しりめに、エントランスから『そと』にた。



 色味いろみも、ひとひとりいないオフィスがいは、巨大きょだいなジオラマみたいだった。

 外観がいかん完璧かんぺきなのに、中身なかみはスカスカ。

 立派りっぱ車道しゃどうにはくるまの1だいとおっていなくて、信号機しんごうき横断おうだん歩道ほどうもない。

 堂々(どうどう)車道しゃどうのどなかを、2人(ふたり)あるいていく。



「……」

「……」



 かたちちがえど、すべてがはいかぶりなせいで、たような景色けしきつづいた。

 次第しだいに、おなじところをぐるぐるしているような感覚かんかくに――――しずかすぎる環境かんきょうともあいまって、異様いよう圧迫あっぱくかんがトウリをおそう。


大丈夫だいじょうぶかい?」


 エルサは平気へいきだった。


気持きもわるそうだね」

「す……すみま、せん……」

「もうすこしの辛抱しんぼうだ……けど、キミの友人ゆうじんらにどやされるのもいやだな」



 ――あまりれたくはないのだけれど……。



 エルサは小声こごえでそうって、トウリのろうとする。が、こえてしまったからには、あまえるわけにはいかなかった。


「その、ままで……」と、トウリは身動みじろいで。


「エルサさんの……こえいて……たら、たぶんく……んで」


 静寂せいじゃくなかでの休憩きゅうけいも、きっと苦痛くつうでしかない。

 れずにできる、最低限さいていげんのおねがい――――を、エルサはこばんだ。


「キミを毛嫌けぎらいしている、とうことではなくてね」


 トウリのをやんわりとにぎれば、エルサの思考しこう直接ちょくせつながんでくる。



白徒はくと冥府めいふかん問題もんだいなのに

 無理矢理むりやりぼくれられて

 れない状況じょうきょうくるしんでいる。

 なのに、

 どうして文句もんくのひとつもわないの?

 キミはもっと、

 わがままにって――――】



 けっしてくちにはしないことが、れることによってダダれてしまい、トウリのおもっていくことも、もれなく。



つね余裕よゆうそうで、

 飄々(ひょうひょう)と、

 目的もくてきのためなら手段しゅだんえらばなさそうな

 エルサさんの意外いがい一面いちめんー……。

 あったかいひと

 マジでベルサイユ……】



「……キミは不思議ふしぎだよ」と、はなしたエルサは苦笑くしょうした。



 トウリが最初さいしょいだいていた印象いんしょうのままでいたかったのに、『おもったよりもやさしいひと』となったことで、会話かいわのなかった道中どうちゅう一変いっぺんする。

 体調たいちょうもすこぶるくなって、足取あしどりもかるかった。


つないだままなら、脳内のうない会話かいわできますね」


 もう1かいしません? なんて。


遠慮えんりょしてもいいかな。キミの言葉ことばは、たまにからない」

「たとえば?」

「べる、さいゆ?」

「あぁそれは――――」


 エルサのテレパシーめいた能力のうりょくかったとて、相手あいて許可きょかなしにれようとはしない。

 あかるくて、人懐ひとなつっこくて。そんな配慮はいりょまでできるトウリがかれやすいことを、エルサももっる。



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