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今日もキミはガラスの靴を落とす  作者: 次野/うずらの


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3/9



 ――おまえだけかずがってない。

 ――ひとり頑張がんばらないだけで、連中れんちゅうにどれだけ負担ふたんがかかっていると……。



 凸凹でこぼこしたグラフのした名前なまえがあって、成績せきせきさらされる。よくた、ホワイトボードのまえしかられるまでがセット――――だったけれど、こちらにかんしては生前せいぜんよりマシだった。

 せしめのようにしかられていたときとはちがって、この部署ぶしょをまとめる上司ひと以外いがいみな出払ではらっていて。


「おまえがこのままだと、この部署ぶしょからはだれ転生てんせいできないぞ」


 ここに配属はいぞくされた時期じきもバラバラで、自己紹介じこしょうかいかおわせのミーティングすらなく、どんなひとがいるのかからないなかで、チーム一丸いちがんになれ、と。


いては、このシニガリ機関きかん存続そんぞくが――」


 はなしおおきくなっていく上司じょうし背後はいごから、突然とつぜん白金はっきんかがや大鎌おおかまりかざす同胞どうほうあらわれ、上司じょうしはなった。



連帯れんたい責任せきにんとは、初耳はつみみだ」



 そして、る。

 汚物おぶつるようなをして。

 間髪かんはつれずに、背中せなかから。

 ひざからくずち、ゆかつくば上司じょうし反撃はんげきゆるさないよう、さきでトドメをせば、あっというちりす。


 見事みごと不意ふいちを成功せいこうさせた同胞どうほうの、すらっとした女性じょせいはハジメマシテだ。規定きていなのか、彼女かのじょもグレーのパンツスーツで、下界げかい出逢であったよりも堂々(どうどう)したたたずまいだった。……と、暢気のんきている場合ばあいじゃない。


 そとから野太のぶと悲鳴ひめいこえてくれば、普段ふだんしずかなオフィスが一気いっきさわがしくなって、金属音きんぞくおんがそこかしこ。



 ストライキ?

 まさか。



 つぎ――――だと、トウリも身構みがまえるが、あわててやってきたべつ上司じょうし登場とうじょうで、彼女かのじょ意識いしきはそちらに。



推薦すいせんぐみのおまえたちがなぜ――!!」



 速攻そっこうげていった上司じょうし感謝かんしゃしていいものか。

 ひとりのこされたトウリはことなきをる、ものの。



自分じぶんたちがなにをしているのか分かっ」

「よ、よせ!!」

「こんなことしてなんにな」

たすけてくれ!!」

「やめ」



 普段ふだんふんぞりかえっている、おえらいさんがたなさけないこえなかに、アヤセやスノウがいないか、と。デスクのしたかくしながら、トウリはそれだけを心配しんぱいしていた。




     *




 しばらく――――上層じょうそうの、シニガリに対抗たいこうできる、ごく少数しょうすうひと彼女かのじょらをはらった、あとのこと。



 エントランスにあつまった、トウリのように運良うんよたすかったものなかには、アヤセもスノウもいた。2人(ふたり)奇襲きしゅうされた際、上司じょうしにクソミソにおこられていて、なんのがれたんだとか。



おれらに感謝かんしゃしろよー」とスノウは上司じょうしかたんで、おちゃらける。が、上司じょうしほう満更まんざらでもなさそうだ。


 上層じょうそうわせても20にんもいない集団しゅうだんで、できることなんてあるのだろうか。



被害ひがい状況じょうきょうは――」

推薦すいせんぐみかかわりが――」

上司組こっちは――」

下界げかいにいるシニガリの安否あんぴは――」



 おくれてやってきた真打しんうちは「絶望ぜつぼうてきだねぇ」と、この状況じょうきょうわらった。

 赤髪あかがみの〈麗人ベルサイユ〉に、しろぬのまいけた、古代こだいのローマじんみたいな格好かっこうして、エントランスを闊歩かっぽする。

 上層じょうそうのひとにらみも、なんのその。


冥府めいふいまんでいる。おかえねがいたい」

「それをなおそうと、ぼくた――――ってったら?」


 より殺気さっきとうとも、ベルサイユの麗人れいじん口角こうかくげたまま。

 それが余計よけい上層じょうそうらを苛立いらだたせるが、できるだけ感情かんじょうてきにならないよう質問しつもん質問しつもんかえした。


推薦すいせんぐみあばまわったのは、貴方あなたがた仕業しわざでは?」

こまるのはぼくたちなのに? シニガリがシニガリをっても、かぞれないほどの次元じげんちてしまうだけだからねぇ」と――――かれらにしかからない会話かいわに、のこったシニガリはいてきぼり。



 スノウはかたんだままの上司じょうしに、こえめてう。



「ンププさん、あのひとら、なにはなしてんの? 推薦すいせんぐみって?」


 ひまあます、トウリふくめたシニガリたちも興味きょうみ津々(しんしん)で。

 会議かいぎ参加さんかさせてもらえなかったンププは「えーっと……」と、たよられることにひそかによろこびながら、みなとスクラムをむ。


「キミたちがう『天国てんごく』って、いまどろっどろにけちゃってて。白徒はくと――」


 あの古代こだいひととか、と目配めくばりして。


「いろんな次元せかいらばった自分じぶん回収かいしゅうしたくて、躍起やっきになってるんだけど。やりかたがちょっとね。しまいには『生前せいぜんおこないをしていたから、○○(だれだれ)優先ゆうせんてき転生てんせいさせてくれ』って、口出くちだししてきて」


「だから、推薦すいせんぐみ?」

「そう」

「え、でもさ」

「そう! それがあばれてるから、〈冥府こっち〉としては、なにしてくれてんねんってかんじ。天界てんかい機能きのうしなくなって、たましい洗浄せんじょうってえばいいのかね。うちはそれができないから、悪人あくにん悪人あくにんのまま。『まれたときからわるひとなんていない』が、まかりとおらなくなって。擬似ぎじ転生てんせいかさねにかさねた推薦すいせんぐみは、おれらをれるまでに洗練せんれんされてしまった――――と、あちらさんが宣戦せんせん布告ふこくしてきたとおもうわな」



 推薦すいせんぐみ白徒はくとこまのようなもの。



 そんなかれらに勝手かってされるのも、白徒はくとがわ中心ちゅうしんとなって冥府めいふなおすのも、不快ふかいきわまりないわけで。

 上層じょうそうがわ不満ふまん爆発ばくはつさせる。



もとはといえば、おまえらが馬鹿ばかみたいに死者ししゃやしたせいだろうが」

「こっちが死者ししゃ管理かんりするわりに“欠片かけら”とやらを回収かいしゅうしてやってるってのに」

下界げかい言葉ことばりれば『管轄かんかつちがい』だ。貴様きさま助力じょりょくなど――」



 しかし、ベルサイユの麗人れいじんすずしいかおして、「閻魔えんまくんは過労死かろうし寸前すんぜんだし、八百万やおよろずたたえるキミたちに管轄かんかつなんてあるの?」と、あぶらそそいだ。


 一触いっしょく即発そくはつ


 たったひとりの、うごけるようになっただけの白徒はくとになど、だれしたがおうか。

 それは――本人ほんにんすらおもっていたこと。

 おしゃべ以外いがい役立やくたたず。

 推薦すいせんぐみをどうこうするちからも、はないで解決かいけつするともおもえない状況じょうきょうを、早々(そうそう)さっしていた。



 だから、



ぼくはシニガリ機関きかん継続けいぞくしていくために、閻魔えんまくんの代行だいこうと、推薦すいせんぐみられない強者きょうしゃ確保かくほ提案ていあんしにただけ」



 ベルサイユの麗人れいじん――――エルサは、白徒はくとらしく“おげ”にして、使者ししゃのスタンスをることにした。が、いかんせん終始しゅうしにこやかなかれに、上層じょうそう警戒けいかいしんはMAXで。


閻魔えんまの……わり?」

だれかいない? キミたちがやりやすいひとでいいんだけど」


 その提案ていあんっていいものか、冥府めいふがわはエルサをためした。


「……おまえの上司じょうし幽閉ゆうへいした悪魔あくま、でも?」


 適任てきにんかはさておき、直属ちょくぞく部下ぶかであるエルサが解放かいほうすることに意味いみがあった。

 背徳はいとく

 裏切うらぎり。

 共犯きょうはん

 こちらにちてこい、ときずりむ。が、エルサは一切いっさいしぶらなかった。


「かまわないよ」


 みずからが解放かいほうすることも快諾かいだくして、「だれかひとり、可愛かわいげのあるシニガリをしてくれないかな?」と。


「この状況じょうきょうふくめて、たぶんスムーズにはないができるとおもうから」


 そうして、どこまでも前向まえむきなエルサの一声ひとこえで、蚊帳かやそとだったシニガミをもんだ。


 愛嬌あいきょう皆無かいむ面々(めんめん)


 スノウは――――なくはないが、ふところはいるのが上手うまい≠可愛かわいげ、で相手あいてこのむのかも微妙びみょうなところ。

 となれば、純粋じゅんすい無垢むくまでいかなくても、懸命けんめいきたすえにここにたトウリが適任てきにんと、エルサはかれ指名しめいした。



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