第2夜 第4話 【 クレオパトラの涙と、やっぱり現代文 】 静寂が戻ったアレクサンドリア・富士山を背景に
クレオパトラ:(光命の腕に自らの豊かな胸を押し付け、妖艶な笑みを浮かべながら)
「おお、魔界光命様……あなた様こそ、このエジプト、いや世界の真のファラオですわ。頼朝の脅威から私を救ってくださったお礼に、今夜は私の寝所で、ラクダのミルクで淹れた特製のタピオカミルクティーを飲みながら、朝まで愛欲まみれの暮らしを送りましょう? 私、あなたのためなら、ピラミッドの頂上でベリーダンスを踊ってもよろしくてよ」
魔界光命:「タピオカは40億年先でも流行り廃りを1万回くらい繰り返して誰も飲んでないから勘弁して。あと、ピラミッドの頂上で踊ったら普通に滑落して危ないからやめな」
クレオパトラ:「まぁ、どこまでも冷静でつれないお方……でも、その冷徹さが、私の信仰心をさらに燃え上がらせますの! さあ、私のすべてをあなた様に捧げますわ!」
魔界光命:「いや、嬉しいんだけどさ。君の魂の輝き(愛欲)が強すぎて、また俺の背中の六翼が限界突破してパチパチ放電し始めてるんだよね。ほら、足元見て。例のやつ、来ちゃったから」
【モクモクモク……と、光命のローファーの周りから、あの禍々しい紫色のランプの煙が容赦なく湧き上がる】
クレオパトラ:「ああっ!? なんですかこのバルサンみたいな酷い匂いの煙は! 光命様の身体が、また光の粒子になって透き通っていきますわ! 嫌です、行かないで、私のファラオ!」
魔界光命:「あーあ、やっぱり天下統一の宴会の時と同じか。美少女を助けて、いい雰囲気になった瞬間にこれだ。マジで誰なんだよ、この40億年の時空を超えて定期的に俺の足元でランプ擦ってるストーカーは。ゴホッ、ゴホッ……意識が……スマホの同期が切れる……」
クレオパトラ:「光命様ーっ! せめて浦和の住所を教えてくださいませーっ!」
魔界光命:「さいたま市……浦和区……常盤……あたり……。じゃあねクレオパトラ、歴史のテストで『頼朝がエジプト支度金を発行した』って書かないように気をつけろよ……」
(プツン、と意識が途絶え、光命の肉体はマケドニアの制服ごと空間に溶けて消滅した――)
【40億年未来の高校・化学室】
化学の教師:「おい、魔界! いい加減に起きろ! アルコールランプの火を消した途端に突っ伏して、どんな高度な居眠りをしてるんだお前は!」
魔界光命:(ガバッと丸椅子から飛び起きる)
「……はっ!? クレオパトラ!? 頼朝は!?」
クラスメイトA:「ウケる、魔界のやつ、また世界史の夢見てたよ。今度はエジプトと鎌倉が混ざってんぞ」
魔界光命:「夢じゃねえって……(制服のポケットを探る)。ほらみろ、頼朝が落としていった『鎌倉幕府公式・エジプト支度金』の木札と、クレオパトラちゃんが髪に挿してた黄金のコブラのヘアピンがしっかり入ってんじゃん……」
化学の教師:「何をブツブツ言っている。早く実験レポートを書きなさい」
魔界光命:(窓の外の青空を見上げ、黄金のヘアピンを弄びながら)
「マジでふざけんなよ、あのランプの持ち主。せっかく世界三大美女といいところだったのに。次ワープさせられたら、その世界の物理法則ごと、そいつのランプを40億年先のリサイクルショップにジャンク品として売り飛ばしてやる」
(魔界光命の、倫理も時空も滅茶苦茶な千一夜物語は、まだ始まったばかり。次の不条理な夜は、今これを読んでいるあなたのすぐ後ろで、煙を上げ始めるかもしれない。第三夜へ続く)
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