2話
「卒塔婆小町」
「このお話が、若返りの話ですか」
目の前のお姉さんに話します。
お姉さんは明るい声で話ます。
『この舞台、作者さんが言いたかったのはね』
『小町は色が深くて、なの』
「悪霊が言ってましたね」
『そうなの。普通、おばあさんは恋愛の題材にならないの』
「そうでしょうね。悲しいですが」
『でも、作者は普通に負けなかったの』
『私が綺麗な小町を思い出させる』
『舞台に引き出すんだ』
『そう思ってこの物語は作られたの』
『悪霊はそのための工夫なの』
『あなたは今も美人だ』
『恋人達は知っている。ってね』
『恋することで』
『若さを取りもどせる』
『そう考えたのね』
「ふむう」
『納得しにくい?』
「いえ、分かる気がします」
「だって、ほかの女性だって主役にできたでしょう」
「はなやかな恋物語はほかにもできたでしょう」
「そんな中で、歳を取った小町を主役にしている」
「ねらいがあったと思います」
『お兄さんするどい! それに考えが優しい』
「え? そ、そうですかぁ」
『お兄さんも色男ねぇ』
「え? いろおとこ?」
『優しい心がある素敵な男性ってこと』
「ちょっとー、やめてくださいよー」
「お姉さんには負けますよ」
「あららららら!」
お姉さんほっぺたが桜色。
自分の力で綺麗になってます。
「でも、あれですね」
「いまの考えはお話したからできたことですよ」
「お姉さんの優しさが私にうつったのかもしれませんよ」
『わたしの? やさしさが?』
「私も話しやすかったですし」
『うれしいけど、どうなのかな?』
「ほかにもありますよ」
「物語への共感です」
「物語って、相手の気持ちを知ることに楽しみがあると思うんです」
「歳を取る悲しみを知るのは、そのひとつです」
「いろんな人や物語の気持ちが分かるのって、優しさと思うんです」
「卒塔婆小町の作者も、ねらいを見てもらえてうれしかったと思いますよ」
『うふふふふふ』
お姉さんがニッコリしてます。
笑うと顔が良くなりますね。
悲しみもアレもきえています。
『あら、話すぎたかしら?』
『そろそろおいとまするわ』
「楽しい時間をありがとうございます」
『じゃあね、優しいお兄さん!』
「お姉さんもお元気で」
お姉さんはうきうきで歩いていきました。
「若々しい人だったなぁ」
「もしかして、小野小町もあんな感じだったのかな?」
年金はもらってそうですが、それ以上は分かりません。
さて、私も移動しましょうか。
帰り道。
受付カウンターでお姉さんを見ました。
司書さんとお話してる?
『この本、面白かったのお』
「そうなのですね」
『昔を思い出したのー』
「はは、そうなのですか」
『もう大変よぉ。90歳も生きたらねぇ?』
うん?
90歳?




