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ずれた四男の異世界暮らし ~僕の当たり前は、魔力社会の盲点でした~  作者: ただのゆきや
幕間

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第1章のおさらい

 ※第2章を読む前のおさらいとして、第1章の内容を簡単に振り返る回です。

 すでに覚えている方は、読み飛ばしていただいて問題ありません。


          ◇


 僕、ユキア・ヴァンハルトは、ヴァンハルト家の四男として生まれた。


 前世の記憶がある。

 魔力のない世界で大人になるまで生きていた記憶だ。


 だから、この世界で目を覚ました時、貴族の家に生まれたことにはかなり驚いた。

 裕福な屋敷。整えられた食事。優しい母。厳しい父。兄や姉、そして僕を慕ってくれる弟のシリウス。


 目立たず、静かに暮らすには悪くない環境だと思っていた。


 ただし、ひとつだけ大きな問題があった。


 この世界では、魔力があることが当たり前だった。

 歩くこと、物を持つこと、身体を支えること。

 そうした日常の動きにも、本人が意識しないまま魔力が関わっているらしい。


 けれど僕は、その魔力をうまく扱えなかった。

 屋敷の中では、いつの間にか「魔力なしの四男」と見られるようになっていた。


 父の期待は薄く、兄たちの中には僕を軽く見る者もいる。

 それでも、母は変わらず優しく、シリウスはなぜか僕のことを全力で信じてくれる。


 そんなある日、エルヴィンという偏屈な老人に出会った。

 父の知人で、引退した元冒険者。魔力や魔物、ダンジョンに詳しい人物だ。


 エルヴィンは、僕を見て言った。

 僕は魔力がないわけではない。

 けれど、普通なら自然に身体へ巡るはずの魔力が、巡っていないのだと。


 そして、こう問われた。


「お前は、どうやって身体を動かしておる?」


 その問いは、僕の中に残った。


 僕にとって身体を動かすことは、筋肉を使って、重心を取り、手足を動かすことだった。

 けれどこの世界では、その当たり前が少し違う。


 僕は、エルヴィンの小宅へ通うようになった。

 本を読み、身体を観察し、兄たちの訓練を見て、魔力とは何かを考えた。


 それでも、簡単には変わらなかった。

 魔石を握っても、何も起きない。

 魔力を動かす感覚は、少しもつかめない。


 できないことばかりだった。


 その後、ラウガという獣人の冒険者とも出会った。

 大きく、強く、人族とは身体の作りも立ち方もまるで違う人だった。


 ラウガは理屈ではなく、腹の奥から力を出すように身体を動かしていた。

 その言葉を聞いた時、僕は前世で読んだ「気」や「丹田」という曖昧な知識を思い出した。


 もちろん、それがこの世界の魔力と同じものかは分からない。

 けれど、手がかりにはなるかもしれない。


 僕はもう一度、魔石を握った。

 呼吸を整え、身体の内側を探る。


 そして、ほんの一瞬だけ、魔石が反応した。


 成功と呼ぶには、あまりにも頼りない反応だった。


 僕はまだ、魔力を使いこなせるわけではない。

 魔法も使えないし、強くもない。

 父の評価が変わったわけでもない。


 ただ、分からないことが、少しだけ形を持ち始めた。


 そして、あれから四年。

 十歳になった僕は、この世界の当たり前を、もう少し近くで見ることになる。

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