第1章のおさらい
※第2章を読む前のおさらいとして、第1章の内容を簡単に振り返る回です。
すでに覚えている方は、読み飛ばしていただいて問題ありません。
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僕、ユキア・ヴァンハルトは、ヴァンハルト家の四男として生まれた。
前世の記憶がある。
魔力のない世界で大人になるまで生きていた記憶だ。
だから、この世界で目を覚ました時、貴族の家に生まれたことにはかなり驚いた。
裕福な屋敷。整えられた食事。優しい母。厳しい父。兄や姉、そして僕を慕ってくれる弟のシリウス。
目立たず、静かに暮らすには悪くない環境だと思っていた。
ただし、ひとつだけ大きな問題があった。
この世界では、魔力があることが当たり前だった。
歩くこと、物を持つこと、身体を支えること。
そうした日常の動きにも、本人が意識しないまま魔力が関わっているらしい。
けれど僕は、その魔力をうまく扱えなかった。
屋敷の中では、いつの間にか「魔力なしの四男」と見られるようになっていた。
父の期待は薄く、兄たちの中には僕を軽く見る者もいる。
それでも、母は変わらず優しく、シリウスはなぜか僕のことを全力で信じてくれる。
そんなある日、エルヴィンという偏屈な老人に出会った。
父の知人で、引退した元冒険者。魔力や魔物、ダンジョンに詳しい人物だ。
エルヴィンは、僕を見て言った。
僕は魔力がないわけではない。
けれど、普通なら自然に身体へ巡るはずの魔力が、巡っていないのだと。
そして、こう問われた。
「お前は、どうやって身体を動かしておる?」
その問いは、僕の中に残った。
僕にとって身体を動かすことは、筋肉を使って、重心を取り、手足を動かすことだった。
けれどこの世界では、その当たり前が少し違う。
僕は、エルヴィンの小宅へ通うようになった。
本を読み、身体を観察し、兄たちの訓練を見て、魔力とは何かを考えた。
それでも、簡単には変わらなかった。
魔石を握っても、何も起きない。
魔力を動かす感覚は、少しもつかめない。
できないことばかりだった。
その後、ラウガという獣人の冒険者とも出会った。
大きく、強く、人族とは身体の作りも立ち方もまるで違う人だった。
ラウガは理屈ではなく、腹の奥から力を出すように身体を動かしていた。
その言葉を聞いた時、僕は前世で読んだ「気」や「丹田」という曖昧な知識を思い出した。
もちろん、それがこの世界の魔力と同じものかは分からない。
けれど、手がかりにはなるかもしれない。
僕はもう一度、魔石を握った。
呼吸を整え、身体の内側を探る。
そして、ほんの一瞬だけ、魔石が反応した。
成功と呼ぶには、あまりにも頼りない反応だった。
僕はまだ、魔力を使いこなせるわけではない。
魔法も使えないし、強くもない。
父の評価が変わったわけでもない。
ただ、分からないことが、少しだけ形を持ち始めた。
そして、あれから四年。
十歳になった僕は、この世界の当たり前を、もう少し近くで見ることになる。




