間章 すすり声
最初は、
音だった。
遠くて、
近い。
どこからともなく、
空間そのものが震えているような。
「……」
エリカが、最初に気づいた。
「……泣いてる」
四人は、
言葉を失った。
すすり泣き。
息が詰まる音。
声にならない声。
――苦しい。
――長すぎる。
そんな感情だけが、
直接、胸に流れ込んでくる。
レオナは、
無意識に腕を抱いた。
「……これは……」
「人、なの……?」
答えは、ない。
ただ、
悲しみだけがある。
レイは、
言葉を持たないまま、
その場に立ち尽くしている。
怒りは、ない。
拒絶も、ない。
ただ、
耐え続けてきた何かが、
そこにある。
ユリは、
一歩、前に出た。
形のない空間。
姿のない相手。
それでも、
確かに“いる”。
「……苦しいんだよね」
声は、
優しかった。
怒りも、
命令も、
含まれていない。
「……僕にできることなら」
「なんでも、するよ」
宥めるように。
子どもに語りかけるみたいに。
「だから……」
「教えて」
しばらく、
すすり声だけが続いた。
長い、沈黙。
やがて。
ぴたりと、泣き声が止んだ。
空間が、
静まる。
そして――
言葉が、落ちてくる。
「……おわらせて……」
短く。
しかし、はっきりと。
それは、
願いだった。
命令じゃない。
強制でもない。
解放を求める声だった。
エリカの胸が、
強く締めつけられる。
「……同じ……」
自分が聞いた声と。
レオナは、
目を閉じる。
「……選ばせる気、ね」
誰を責めるでもなく。
ユリは、
その場で、深く息を吸った。
「……分かった」
小さな声。
でも、
揺れていない。
四人の間で、
同じ感覚が共有される。
――この先に、
――答えがある。
その瞬間。
世界が、
ゆっくりと反転した。
重さが、
戻ってくる。
冷たさが、
触れる。




