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第十八章 同じ場所

最初に、音が戻った。


遠くで、

水が揺れるような感覚。


次に、

気配が重なった。


触れられないのに、

離れていないと分かる距離。


「……ここ」


誰かが、そう思った。


声じゃない。

でも、確かに共有された認識。


エリカは、

ゆっくりと“目を開いた”。


視界は、形を持たない。

上も下も、曖昧だ。


それでも――

いる。


「……ユリ」


名を呼ぶ。


音にならないはずなのに、

届いた。


「……ここだよ」


返ってきたのは、

ユリの気配。


その近くに、

もう一つ。


「……エリカ」


懐かしい温度。

少し、不器用な感触。


レオナだ。


三つの意識が、

自然に、円を描く。


「……体、ないわね」


レオナが、

淡々と“感じたまま”を伝える。


「……でも」


一拍。


「離れてない」


それは、

確認だった。


そして――

もう一つ。


少し、遅れて。


強くも、弱くもない。

だが、

はっきりと分かる存在。


「……来た」


エリカが、

胸の奥でそう思った瞬間。


四つ目の気配が、

ぴたりと重なった。


――怒りでもない。

――焦りでもない。


ただ、

そこにいるという確信。


レオナは、

自然と、その存在を“見た”。


言葉は、ない。


でも、

間違えようがない。


「……レイ」


名を呼ぶと、

空間が、わずかに揺れた。


肯定。


それだけで、

十分だった。


エリカは、

気づいた。


自分が、

泣いていないことに。


さっきまで、

確かに泣いていたのに。


「……不思議」


その感覚が、

三人に伝わる。


ユリが、

少しだけ戸惑った。


「……痛く、ない」


「……怖くも、ない」


レオナが、

静かにまとめる。


「たぶん……

 これが“精神体”」


説明というより、

納得だった。


エリカは、

もう一度、感じる。


四人が、

同じ場所にいる。


誰も欠けていない。


「……ねえ」


エリカの“声”が、

やわらかく広がる。


「これで……

 よかったのかな」


答えは、

すぐには返らない。


代わりに、

重なった感情があった。


後悔。

安堵。

怒り。

そして――

確かな意志。


レイの気配が、

少しだけ、強くなる。


言葉は、ない。


でも。


――まだ、終わっていない。

――行く場所がある。


その方向が、

四人に共有された。


ユリは、

ゆっくりと“頷いた”。


「……行こう」


「一緒に」


レオナも、

迷いなく応じる。


「今度は、

 誰も置いていかない」


エリカは、

その中心で、静かに思った。


――次は、

――終わらせるために。


四つの意識が、

一つの流れになる。


体は、ない。


それでも。


四人は、確かに生きていた。


そして、

次の場所へ向かって、

歩き出した。


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