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第十七章 花火を見つけたならば

最初の銃声は、

考える前に鳴った。


免疫施設の白が、

一瞬で砕ける。


床に火花。

壁に穴。

警報が、遅れて響く。


「伏せて!」


ユリの声。


エリカとレオナが、

同時に身を低くする。


だが、

逃げ場は、もうなかった。


「撃つな、壊すな!」


ブラッドフォードの怒声が、

施設に反響する。


「抗体は回収しろ!

 実験体は――確保だ!」


“確保”。


その言葉が、

エリカの胸を刺す。


部品。

材料。

兵器。


また、同じだ。


レオナが、

兵士に飛びかかる。


武器を弾き、

床に叩き伏せる。


だが、数が多い。


「ユリ!」


振り返った瞬間、

衝撃。


ユリの身体が、

大きく揺れた。


「……っ!」


脇腹。


赤が、

床に落ちる。


「ユリ!!」


エリカの声が、

はっきりと震えた。


ユリは、

倒れなかった。


壁に手をつき、

必死に立っている。


呼吸が、乱れている。


「……大丈夫」


その声は、

もう、弱かった。


ブラッドフォードが、

ゆっくりと近づく。


「いい反応だ」


「やはり、

 君たちは“違う”」


銃口が、

再び上がる。


その瞬間、

ユリは、自分の指を噛んだ。


血が、溢れる。


エリカは、

それを見た瞬間、

理解してしまった。


――やる気だ。

――終わらせる気だ。


「……やだ」


声が、

喉から零れ落ちる。


足が、勝手に動いた。


「やだ!!」


エリカは、

走った。


初めてだった。


泣きながら、

声を上げて、

誰かのもとへ走るのは。


「離れたくない!!」


ユリの前に、

飛び込む。


震える腕で、

強く、抱きしめる。


「……行かないで」


「一人で、

 終わらせないで……!」


涙が、

止まらない。


頬を伝い、

ユリの服を濡らす。


「私、

 泣かないって……

 決めてたのに……」


声が、崩れる。


「……それでも……

 嫌だよ……!」


ユリの目が、

大きく見開かれる。


「……エリカ」


その名前を呼ぶ声が、

震えた。


次の瞬間、

レオナも、

迷わず駆け出した。


「……置いていく気?」


ユリを、

後ろから抱きしめる。


「そんなの、

 許さない」


三人の体温が、

重なる。


心拍が、

重なる。


ユリは、

ゆっくりと目を閉じた。


「……ごめん」


「止めようとしてくれて……

 ありがとう」


血が、

光を帯び始める。


エリカは、

必死にしがみつく。


「……止まって……!」


「お願い……!!」


だが、

もう、戻れない。


臨界。


ユリの身体から、

光が溢れる。


そして――


爆発。


それは、

破壊ではなかった。


夜空に打ち上がる

巨大な花火。


赤、白、

そして見たことのない色。


光は、

免疫施設の天井を突き破り、

木星上空の闇を照らす。


遠くの街並みまで、

一瞬、昼のように浮かび上がった。


衝撃波。


施設は、

崩壊する。


研究装置は、

二度と使えない形に砕ける。


ブラッドフォードの叫びは、

光の中に消えた。


そして。


光が、

静かに、消える。

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